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狼さんと女神様

 神聖な魔力が辺りに立ち込める。

 妖精族(エルフ)の兄妹は抱き合ったまま目を丸くして固まっていた。


「久しぶりじゃの、ディエリス。」


 驚きで固まっている俺たちを尻目に、気安くフラムが声をかける。


 女性はフラムを見た瞬間嫌そうな顔をして、睨めつけながら言った。


「ええ、フラニアル。あなたが蒼の竜帝と喧嘩して街一つ滅ぼした時以来ですね。」


 何やっているんだこいつ。


 ジーっと見つめると友人は目をそらした。


『というか、フラニアルって誰だよ。』


「儂の事じゃぞ?」


『え?』


「む?」


 一千年ちょっとの付き合いの友人の名前は厨二くさかった。というかフラムってあだ名だったのか?あれ?


 友人の半目の視線が痛くて目を逸らす。すると女性と目が合った。


 薄い金髪の髪をたなびかせ、空中に女性――ディエリスは浮かんでいる。

 吸い込まれそうなほど澄んだ青い瞳は俺を見ていた。


「今まであの邪神を封じるには多大な犠牲がありましたが、あなたのおかげで多くの命が救われました。この世界を代表してお礼を申し上げます。」


 深々と頭を下げられ混乱する。少女は助けたが世界を救った覚えはないぞ?


『あー、何か勘違いをしているようだが俺はそんなことをした覚えがないが?』


「えっ……?」


 ディエリスは目をパチクリしている。


「人違い……?確かに私気絶してたしよく見えていませんでしたが……明らかに狼でしたよね……?」


 ぶつぶつと小声で何か言っている。いつのまにか神々しい空気は無くなり代わりに何とも言えない空気が漂っている。

 沈黙に耐えられず隣で未だにジト目なフラムに話しかけた。


『フラム、お前の知り合いであってるんだよな?』


「……そうじゃ、いつもあんな感じじゃから気にしなくて良い。

 あと終わったら少し話があるぞ。」


『悪かったって……。』


 意外に気にしているみたいだ。名前とか無頓着そうなのに。


 俺とフラムが話しているうちもディエリスはまだ頭をひねっていた。


 仕方ないので、フラムをなだめるのは諦めて話しかけてみる。


『すまない、俺が言ったのは世界を救った云々の話に覚えがないだけで、確かにあなたが捕まっていたあの老人を殺したのは俺だ。』


 俺の言葉にディエリスはパッと顔を輝かせる。


「ですよね!やっぱりそうですよね!

 あぁよかった……あ、ゴホン。」


 途中で俺たちの視線に気づき咳払いをした。キリッと顔を作っているがなんだろう、とても残念な感じがする。


「であればあなたは世界を救ったのですよ。

 あなたが倒したあの老人は復活した邪神だったのです。」


 ……?

 何を言っているんだろうか、あいつは偽物だったはずだが。


『なぁ、フラム。この人は妄想癖がある感じの人か?』


「そんなわけないじゃろう、というかさらっと失礼なことを言うの。」


 フラムは小声でそう言い、笑いを噛み殺している。

 何がおかしいのだろうか。


「あの、なんでそんな反応なんですか⁈もっと喜ぶなりあると思うんですけども!」


『だってなぁ……あれ偽物だろ?』


「はい?」


 俺とディエリスの間に沈黙が訪れる。


「……フラニアル、ちょっとこっちに来なさい。」


 ディエリスに呼ばれてフラムが彼女のもとに近寄る。

 そして小声で話し始めた。


 何を話しているのだろうか、しかも小声で。

 おい今、阿保とか聞こえたぞ。ディエリスが変なものを見る目でこっちをみてくるんだが、本当に何を話しているんだ。


 話を終えた二人がこちらを向く。


「えっと、あなたは信じていないようですが本当にあれは邪神だったのです。」


 ディエリスは困ったように眉を寄せている。

 俺も困惑して眉をひそめた。


『それにしては魔力も大したことなかったが……。』


「あの魔力を見て大したことないなんて普通言いませんよ?

 それに不死身なんてそこら辺の魔物が持っているわけないじゃないですか。」


 うーむ、ディエリスは本気で言っているようだ。

 しかし本当にあれが邪神だとしたらなんで俺は勝てたんだ?自分で言うのもなんだが長生きしているだけの魔物なのに。


「その顔は信じていませんね……。いいでしょう、私の正体を知ればさすがに納得するでしょう。」


 そう言ってディエリスは手のひらを上にして胸の前に差し出した。

 すると、光る板のようなものが彼女の手の上に現れた。これは知っている、ステータスというやつだ。


 ステータスはその個体の能力などをまとめたもので、ゲームに出てくるようなやつのまんまの物だ。


 もちろん俺にもあるのだが何故だか文字の部分が黒くなっていて読めなかった。いつか読めるようになるさと思って放っておいたが未だに読まないままである。


 ディエリスは彼女のステータスを俺に差し出してくる、見ろということなのだろう。


 他人のステータスを見るのは久しぶり、というかだいぶ前にフラムが見せてくれたぐらいだ。少しワクワクしながら身を乗り出した。


【名前】ディエリス

【種族】女神 (デューモルダ)

【年齢】■■■■

【称号】世界を見守る者

【状態】正常


【力】C -

【防御】C

【速さ】B+

【耐久】C-

【魔力量】A+

【器用】A

【幸運】A-


【スキル】火魔法:8 水魔法:7 土魔法:6 風魔法:9 無魔法:6 光魔法:10 祝福:10 加護付与:8 etc

【特殊】世界の管理


 ……女神?女神⁈


 ステータスと得意げな顔のディエリスを何度も見比べる。


「驚いたようですね。そう、この私がこの世界の最高神、ディエリスその人です。」


 ドヤァと胸を張るディエリス。

 見えない、まだあの老人が邪神と言う方が信じられる。


『ステータス偽装するスキルなんてあったか?』


 ディエリスがドヤ顔のまま固まった。


「我が友よ、気持ちはわかるがこいつが女神だと言うのは本当じゃ。

 というか何故そこまで信じないのじゃ?嘘をつく理由が無かろう。」


 フラムが呆れた目をしながら言ってきた。


『なんというか……俺、神様殺せるほど強くなった覚えはないし。』


 ただ長生きするだけで神様が殺せるわけがない。それに長生きといってもせいぜい数万年だ、地球の年齢とかに比べたらまだまだだろう。


「確か数万歳じゃったか?確かに少し変な気がしないでもないが……お主じゃし。」


『なんだよそれ。』


「そうじゃ、お主のステータスを見ればいいじゃろう。邪神を殺したなら何かしらの称号なりが増えているはずじゃ。」


 一理あるかもしれない。神殺しみたいな称号はゲームでもメジャーだし、現実で神様を殺したなら何かしら変化はあるだろう。


 問題は、俺のステータスが読めないことだ。

 それについて聞くと、


「そこはあの女神がどうにかするじゃろう。」


 といって座り込んで妖精族(エルフ)の兄妹に慰められているディエリスを顎で示した。





「失礼しました……。」


 少女に頭を撫でられていたディエリスが顔を赤くしながら謝罪する。


 ちょっと悪いことしたかな……。


『すまない、つい本音が出てしまったんだ。』


「もっと酷いと思うのじゃが。」


「あぁ……どうしましょう、こんなところ他の神に見られたらなんて言われるか……。」


 顔を覆って悶えるディエリス。

 小声でフラムが「今更じゃないかの。」と言ったのは聞こえなかったことにしよう。


『それで相談なんだが、俺のステータスを直すことは出来るか?』


 頭の中でステータスオープンと念じて、ステータスを出す。

 俺のステータスは古いテレビのようにボヤけている上に、時折砂嵐のようにブレる。なんとなく輝きも弱いし、書かれている事も全て黒くなっていて分からない。


 ディエリスは俺のステータスを手にとって唸った。


「これは……難しいですね、どうしてこんな事に?」


『さぁ、初めからこんなだった。』


「おかしいですね……しかもこのステータスいつの物?こんな古いタイプのもの見たことない……。」


 ディエリスはぶつぶつ言いながら顎に手を当てて考えている。


 原因か……思い当たることと言えば俺が転生者ということぐらいか?あとは長生きだから経年劣化したとか……ステータスって明らかに非物質だよな、劣化なんてするのか?


「お主ら考えるのは良いがとりあえずそのステータスをどうにかしたらどうじゃ?」


 フラムの声で我に帰る。ディエリスも思考の中から戻ってきたようだ。


「そうですね、全て直すのは難しいですが部分的になら出来るでしょう。ちょっと待っていてくださいね。」


 そう言ってディエリスは目を瞑り、俺のステータスを持ったまま集中し始めた。


 すると、だんだんと俺のステータスが輝き砂嵐のような揺らぎが無くなっていく。二十秒ほどで輝きは収まり、ディエリスの手の中には綺麗に輝く板があった。


「出来るだけ修復しました、いくつかの項目は読めるはずです。」


 輝きの増したステータスを受け取って見てみる。確かにいくつか読めるようになっていた。


【名前】

【種族】■■■

【年齢】8564342198歳

【称号】神殺し ■■■ ■■■ etc

【状態】自己封印 (80%)


【力】A

【防御】■■

【速さ】■■

【耐久】■■

【魔力量】■■■

【器用】D-

【幸運】EX


【スキル】

【特殊】


「『……。』」


 幸運がEXというのは納得だ。ただの男子高校生だった俺がここまで生き残れたのは幸運以外の何でもない。

 いや、問題はそれよりも……。


「なぁ、我が友よ。お主前に聞いたときは数万歳とか言っておったよな。」


『そうだな……。』


「サバ読みすぎではないかの?文字通り桁が違うのじゃが。」


『そうだな…………。』


 俺ってこんなに歳とってたのか……。というか八十五億って地球より長生きって事になるのだが……。

 どうやったら数万歳と数え間違えたのか。


「うむ?もしや本当に数万歳と信じておったのか?」


『信じるも何も俺の体感ではそうだったし……。』


「それ以前にこの世界が出来てからまだ数億年ですよ⁈あなたどこから来たんですか!」


『ずっとこの世界にいたはずなんだけどなぁ。』


「ありもしないところにどうやって住むんですか……。」


 信じないディエリスに俺が転生者だということ、魔物になってから必死に生きて来たこと、そして何度か見た○の七日間擬きについて話した。


 ディエリスは転生者の話のところで何か言いたげだったが、だんだんと反応が薄くなり話の最後には無表情になっていた。死んだ魚のような目だ。


「あなたのステータスが色々とおかしい理由が分かりましたよ……。」


『本当か、ぜひ教えてくれ。』


「本気で言ってるんですかこの人……。」


 ディエリスが疲れたため息をこぼす。

 分からないものは仕方ないじゃないか。


「我が友は色々規格外というかおかしいからの、気にすることはないぞ。」


「そうですね……はぁ、なんて報告すれば……。

 ……あ、そうです、まだ肝心な事を聞き忘れていました。」


『肝心な事?』


「我が友のステータスにある自己封印ってやつについてかの?」


「それも気になるのですが、後にします。」


 ディエリスは俺に向き直ってコホンと咳払いをした。


「あなた、どうやって邪神を倒したんですか?」

お読みいただきありがとうございました。

思った以上に展開がぐだぐだになってしまった……。


※1/23 ステータスに【魔力量】を追加しました。


※2/28 段落下げがなかったので修正しました。

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