表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢~千夜一夜~  作者: 旅人
1章 ジェイミー
3/11

3.ざまぁ

「ふぅ。私の侍女は少し頭が弱い子なので気になさらないでくださいな。それより私が何をしたというのです?」


「とぼけるのか。取り巻きを使いクロエの悪口を流し、教科書や体操服などを切り刻んだ。それに水をかけたり泥をぶつけたりしたそうだな。昨日ついに階段から突き落としケガをさせたそうだな」


「あらあら、それは大変ねぇ」


 嘲笑うジェイミーに怒りを爆発させようとした第一王子だが、ヒロインであるクロエが一歩前に出る。


 手を組み、祈るような表情で震えるような声をあげる。


「ジェイミー様……私は……私の至らない部分をご指摘いただいたと思っています。あまり多くは語りませんが……謝罪して頂いたらそれでいいのです」


「ふふふ、私、貴方のお名前知らないのですが?」


 正確に言うと名前は知っているが、正式に紹介されたことがないために知らないふりをしているのだ。


 これは高位貴族の知り合いなどと吹聴されない為の自衛手段であり、貴族の中では常識だ。


 だが、第一王子はクロエの名前を知らないという言い訳に対して激高した。


「もういい。ジェイミーを取り押さえろ」


 同じ様に取り巻きの中でジェイミーの態度に腹をたてていた宰相の息子と騎士団長の息子が動いた。

 ジェイミーを取り押さえようとしたその時、護衛騎士が宰相の息子と騎士団長の息子を地面に押し倒し、腕を決めて拘束した。


「なっ。二人ではない。ジェイミーを拘束しろと命じたのだ。何をしているのか」


「ふふふ。はっはっはっ。ディエゴ殿下。王族といってもしょせん大した後押しもない妾の子ね。情報を教えてくれる部下もいないのね」


「だ、だまれ。クロエだけでなく私や母上まで馬鹿にするとは不敬罪だ。その首叩き落としてくれるわ。皆のものこの傲慢な女をたたきつぶせ」


 第一王子の声に動こうとした学生の一部は、別の学生たちにつかまれ地面に引きずり倒される。


 明らかにジェイミーを守るために動く学生や護衛騎士に第一王子とヒロインは動揺を隠せない。


「な、なにが……」


「こんなの嘘、嘘よ」


 第一王子とクロエは、常に一人でいながら学園内で謎の影響力を持つジェイミーを断罪して自分たちの学園における地位を盤石なものにしようとして絡んだのだ。


 彼らの計画に多くの人間が賛同し、こじつけでも第一王子が罪といえばそれで決定させることができるはずだった。


 一部、側近は反対していたのだが……王族を侮辱する発言を引き出した事で自分たちの勝利が確定したはずなのに逆転されたのだ。


「あらまぁ。不敬罪なんてカビの生えた法律を持ちだされるとは……貴方、私の侍女より頭悪いのね」


「ふざけるな。者ども何をしているか」


「まぁ、少し落ち着きなさいませ。それよりディエゴ殿下。貴方の側近に話をききましょう」


「なにを」


「教皇のご子息ドミニク様……でしたわね。このような場で初めてお会いするとは驚きですが……ドミニク様。神のもと平等を掲げている宗教の元締めの子として私は罪人ですか」


「うっ、あ……私は何も知りません。見てません。申し訳ございません」


 話を振られた、教皇の子は真っ青な顔になり跪いて神に許しを乞うように懺悔を続ける。もはやまともに話ができるとも思えずにジェイミーは実の兄に話を振る。


「あらあら、そんな事を聞いたのではないのですが、困りましたわね。お兄様はどう思いますの?」


「嫌だ、嫌だ。俺はジェイミーと敵対する気はない。第一王子の暴走を止められなかった罰なら受ける。だから……だから許してくれ」


 話を振られたジェイミーの兄も教皇の子と同じ様に土下座をして許してくれてつぶやくだけだ。ジェイミーは自分の婚約者に目を向けると彼は立ったまま気絶しているようだ。


「ディエゴ殿下。学園という箱庭に閉じこもり王様をきどっていずに親や従者に話を聞いておけば、私の事を知ることができたのに残念ですわ」


「ふざけるな。たかが侯爵令嬢が王家に向かってえらそうに」


「王など飾りにすぎないのに何を勘違いなさっているのか。この世を動かしているのは民であり、その民を動かしているのは金ですわ」


「だまれ。俺は王子だ。えらいんだ」


「はぁ、もういいですわ。思った以上に雑魚でしたわ。彼らは王宮に連れて行きなさい。後は王が適切に処理するでしょう」


 私に逆らった人たちは全員連れていかれた。有力貴族の子弟は各家で再教育を受けるだろう。


 その他の人間は、私に逆らうとひどい目に合うとわかってもらえただけで十分だ。


「財政は常に赤字。国庫の中は空っぽ。赤字分を商人に負担してもらってなんとか生き延びている国家の主とその家族がえらいですって?笑わせてくださいますね」


「そうっすねぇ。ウチも飢えるのはもういやっす」


 ネリーがしかめっ面をしながら相槌を打つ。


「王が偉いのは、民の生活を守るからです。もう少し言えば、その日生きていけるお金と家族を守る平和があればそれだけで民は満足するの」


「まじっすか。ウチはご飯あればそれでいいす」


「でも、それも逆らうことができない軍事力があればなんでもできる。今の王家は単なる神輿。次の政権の体制が整うまで今を維持するだけの道具よ」


「さすが鬼っす」


「すでに各地で治安維持のための兵の多くは、次代の手のうちにある。金貸しを通じて世の中の流れをコントロールできるようになっているの。」


「マジぱねぇっす」


「第一王子、ジョエル。彼は王族にふさわしくないわ。次の王は彼の弟。わたし達に従順な子にしないとね」


「お嬢様の性根どこまで腐りきってるっす」


「ネリー、うるさい」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ