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ヒロイン、やめます

作者: 和乃 悠

「椿さんがやった、の…?」


目に涙を浮かべ肩を振るわせる。

崩れ落ちるように座り手で顔を覆う。

そしてカメラだけに(・ ・ ・ ・ ・)に映るように意識し口元をにんまりと上げておく。


「椿、お前がそんなやつだとは思ってなかった」


「僕信じてたんですよ?」


「てめぇふざけてんじゃねぇぞ!」


「…あなたの評価は良かったのですが。幻滅しました。」


「君、自分が誰の大切な人に何をしたか分かってる?」


上から俺様生徒会長、あざとかわいい後輩、不良な同級生、敬語眼鏡同級生、腹黒王子様先輩。

いわゆる私の囲い(ハーレム)だ。

別に私から意図してちかずいて囲ってもらってるわけではない。

電波だと思われるかもしれないが実は私は乙女ゲームのヒロインなのだ。

5人のイケメンと愛をはぐくむよくあるベタな王道的な乙ゲーだ。

まあ私が乙ゲー転生ヒロインな話はどうでもいい。現時点でストーリの九割は終ってるといっても過言ではない。


そして今、現在進行形で最後のラストスパートのイベントを起こしている。

悪役の来栖 椿(くるす つばき)の悪事をヒロインが発見しハーレムメンバーが助けてくれる、そんなありきたりなイベント。

普通ならここから5人との楽しい愛され生活がはじまるものだ。

だが、私は違う。

ここから辛く嫌われる不幸な生活をはじめようと思う。

なぜなら、




椿さんisベストヒロインだからだ。




悪役の椿さんはたぶん転生記憶もちの心優しいどじっ子だ。

本人に聞くわけにはいかないから予想だが万が一違ってもベストヒロインなのは間違いない。

たとえば悪役らしいことをしようとするたび失敗。

校舎裏で悲しんでいたのをもうかれこれ数十回ほどは目撃してる。

なにやら呟いてるけどちかずいたらバレちゃうからそこまでは聞けてない。

教室の整備や花壇の世話、弱った動物の世話やたまに見せるふにゃっとした笑顔。

そんな状況を何回も目撃することになるとなんとなくわかってくる。

もしかして私よりヒロインにむいてるのでは、?と。


悪役補正が聞いてるのか椿さんがすること全て悪いことにされて全校からの嫌われ者になっている。

ぶっちゃけ普通にみるとただの天然どじっ子なだけで悪いことなんてなにひとつしてないわけである。

こんなことがあっていいのか、いやいいわけがない。

もとより私はイケメンに囲まれてハッピーよりイケメンと美少女が並んでるのをみてによによしてるほうが性にあっている。



そこで思いついたのだ。

さすがに証拠があれば椿さんが悪役にされることはないのではないだろうか、ということだ。

時間がたってからみせるとヒロイン補正でそんな編集までしてあいつをかばうなんて、、と感動されるが

すぐに証拠をみせれたらさすがに皆認めるを得ないと思う。

てか椿さんがそんな器用な技術もってるわけがない。

この前授業でパソコンを使った時のもたつき具合を私は見ていた。可愛い。


というわけで私は椿さんの天使さただよう映像を集めて集めて集めまくった。

正直椿さん良い事しすぎですぐ集まりましたさすが!

それと同時に私を悪役に仕立てるように自分で教科書やぶいてみたりしてみた。

あんまりやりすぎると椿さんが攻められすぎるからいまいちできなかったけど見てもらえると椿さんを落としいれようとしているようにしか見えない。

さすがにヒロイン補正がついてる私でもコレを見れば眼が覚めると思う。

多少は怖いけど椿さんは1年間弱全校生徒から嫌われるのを耐えてくれたのだ。

椿さんがこんな心優しいことをみんなにしってもらいたい。

そしてなにより私のモットーは女の子には優しくだ。

さらに言えば可愛い女の子にはさらに優しくだ、椿さんかわいい!!


「あ、あら、ばれてしまったらしかたないわね」


くすくすと鈴を鳴らすような声で笑いながら椿さんが言う。

正直椿さんの悪役演技全然怖くないんだよね、むしろ可愛い。

目泳いでるし言葉を必死に思い出してる感しかしないのに皆は気づかない。

そして1歩2歩と足を進めるはずだ。

今日の練習を20回くらいしていた椿さんは20回全部前に進んで私にちかずいてくるはずだ。

そこで私が仕掛けたカメラについている糸にひっかかりカメラがでてきてそこからは私の1人舞台というわけだ。

我ながら完璧な作戦だと思う。


「私、ずっっとあなへぶっ!」


可愛らしい声とともに椿さんが床とこんにちわする。

あ、椿さんの安全面考えるの忘れてた…!!

絶対痛いやつだよね、、ほんとごめん、、。

ダイレクトにはいったもんな、、椿さん、、。


ちなみに椿さんは私の1番の親友とみせかけておいて裏ではひどいことをしまくるみたいなテンプレ的悪役だ。

いままでは嫌われてるのとかを私がかばって攻略キャラたちも椿さんを気にかけてくれていたわけだ。

まあ私がかばってっていうかそもそも椿さんなにも悪くないけどな!!


「く、来栖…?」


俺様生徒会長が戸惑った声で声をかける。

1番椿さんと仲良かったのがこいつだ、私は俺様嫌いなタイプだけど。


「いた、、いたい、、」


大きな瞳を潤ませながら椿さんが呟く

同じ女子のはずなのになんでそんなに睫毛が長い目がでかい色が白い!?

許されるなら是非どんな手入れをしてるのか聞いてみたかった。


「…?これってカメラ…?」


「…っなんで!?」


ようやく敬語眼鏡同級生がカメラを発見したようでぽつり、と呟く。

ここから私は女優になるんだ…!!!

驚きと恐怖をだせるように1週間みっちり練習しただけあって掴みは中々いいと思う。

某先生に聞きまくった、ネットの世界って膨大ね…。

みんなえっ?みたいな顔をしてこっちをみつめている。


「ち、ちがうの、そ、それな、なんでっいやっちがうの…っ!」


「先輩なんでそんなあわててるの…?

このカメラになにかあるの…?」


「…おまえがみられたくねぇものがはいってるつーことか?」


「みられたくない、っていうか…はやくカメラ渡してよっ!!!」


「はい」


「ああ、ありがとうってちがう!!なに普通に渡してるん!??!いい人!!!!」


思わず前世のくせでツッコミを入れてしまう。

元関西人でぼけたらつっこむ、それが普通な家族の中で育ったため他の家庭よりもツッコミ気質が高いのだ。

それに実は転生して幼い頃は関西にいたのだ。

思わず関西弁でつっこんでしまうのはしかたない、と思う。

なんて言い訳をしてみるけどこの場面では完全に場違いで計画は失敗…と血の気が引いていくのがわかる。


なんといっても私は囲いに関西弁をきかせたことがない。


「…いい反応だな」


「…うん、さすが僕の惚れた子だね」


「…先輩ツッコミもできるんだね」


「…方言のあなたもすばらしいです」


「…よかったら今度関西弁教えてくれ」


「「「「抜け駆け禁止」」」」


この時の私はヒロイン補正がきいてたのはほんとに最初だけだったことも椿さんがドMでわざと嫌われてたのもみんなわりとその事実を知っていたことも無意識のうちによくツッコミをみせてたことも気づく由もなかった。



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