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02 ロリコンじゃありません

 時が経つのは早いものでして、気付けば入学から一ヶ月が経っていました。


 どうやらわたし、結構深刻な感じで嫌われているようです。

 いえ……児童でなく、主に親御さんのほうから。



 ほとんど会ったことはありませんが、どうやらわたしの父は屑なお方のようでして……。

 前世でアニメの公式絵を漁っていた時に、そういった設定を見かけた事があります。


 ……思い返してみれば、アニメのほうも中々ひどいクオリティでしたけど。

 六話か七話のあたりで、監督とゲームの製作者が何故か喧嘩を始めたんです。 それが原因で作画が死にました。 最終回には生き返りましたが。




「……はぁ」


 車が校門に近付く度に、心がだんだんと曇っていくのを感じました。



 ――朝の三時半に起きて、家に備えられた武道場まで来て、一人きりで弓矢の訓練をして、

 そのまま学校の支度をし、申し訳程度に朝食を食べて学校へ行く。


 ある程度動けるようになってからというもの、わたしはずっとそんな生活を続けてきました。

 もちろんお父様に指示されて。 わたしだって、好きでこんな訓練をしているわけじゃありません。


 中身の話は置いておいて、わたしはまだ六歳なんです。

 そんな娘に、三時半に起きて、一時に寝るような生活をさせているお父様の気が知れませんよ。



 しかもね、魔術の訓練って本当に疲れるんですよ。 全力で三十キロメートル走るほうが、まだ楽かもしれません。

 それで睡眠時間は三時間未満。 ……本当、わたし近いうちに死ぬんじゃないでしょうか。



 ――あ、学校に着いたみたいです……。 降りなきゃ。



 あと、これだけは本当に言いたいんですけれど、魔術という分野……。

 上達速度とか全部、九割は才能に左右されます。


 同級生にもいっぱい居ますよ。 何の訓練もしていない筈なのに、魔術の授業では常に優秀な成績を修めているような輩が。


 それに比べて、わたしはどうですか? 魔術の成績は悪くて、親は面倒ですし、

 親戚の誰かが余計なことを吹き込んでくれたのか、先生にもあからさまに媚びられています。

 そのせいでどんどん好感度が下がっていきます。


 原作通りの茅野奈月なら、ここにあの最悪ファッキューな性格が加わっているわけですから――。

 まあ、それは嫌われますよね。



 ……はぁ、本当になぜわたしはわたしに転生してしまったのでしょう。

 せめて弥勒院なら。 性別的に神奈ちゃんと付き合えましたし、結婚だって出来ましたし、アイツの嫌われる原因はすべて性格のせいですから、改善だって容易でした。




「……あ、奈月ー!」


「かんなちゃ……」


 ――ごめんなさい。 わたしに生まれて良かったです。

 それに、同性ならボディータッチだって自然な感じでできますしね……うひひひひひひひひひ。


 男に生まれて、付き合うまで辿り着くことが出来ても、別れる可能性は九割九分。

 結婚まで漕ぎつけるなんて、並大抵の人じゃ成し遂げられないですから。


 その点友達って最高ですよね。 仲良くさえ出来ればずっと隣でベタベタ触っていられます。




「おはよー」


「おはようございます」

 神奈ちゃんは今日も可愛らしいですね。 周りの人たちがわたしにとってもとっても冷たいので、何も変わらず接してくれるあなたはわたしの太陽ですよ。


「……ん、何かいった?」


「なんでもありません――。 それより、今日は早くないですか?」



 ……確か、今はまだ六時半。

 この時間帯に登校するのなんて、わたしくらいしか居ないはずですけど――。



「うん! 奈月がいっつも早くきてる、ってきいたから」


「なっ……。 い、いいい今なんといいましたか」


「どうせ家だって誰もいないしさ、奈月といっしょに居たらヒマじゃないかなって」


「ぐはっ」


「……奈月?」



 やっぱりそうでしたね……。 二次元ですら悶え死にそうなこのわたしが、現実でこんな事言われて、生きていられる筈が無かったのです。

 青空がとっても眩しいですね。 五月の中盤にもなれば、もうすっかり夏ですからね……。

 今なら天国にも一直線で昇って行けそ――。



「だ、大丈夫です」


 ……あ、わたしはまだ死ねないのを忘れていました。

 本当に死ぬとしたら、それは目的に失敗したとき。 あとは……神奈ちゃんにとって、わたしの存在が不要になった時、でしょうかね。


 わたしはずっとこの空気を胸いっぱい吸い込んでいたいので、居なくなるなんて考えたくもありませんが――。




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