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#3 魔力量多すぎ!そして初めての戦場へ

 翌朝、異世界に来たからには使いたいアレを教わっていた。


「――いい? つまり全身の魔力回路に魔力を流して」


「あーもー分かったから! 要はちゃんと呪文を言えばいいんだろ?」


「……まあ習うより慣れろね。私もそのクチだったし」


 そう呟くとリノは俺と少し距離をとった。


「じゃあまず属性を見るわ。魔属鑑定(マギアヴァルター)!」


 エメラルドの球体が俺を覆う。

 あれ、俺には魔法が効かないはずじゃ? まあ攻撃じゃないしいいか。


「……んん? おっかしいわね」


「どうした?」


「あんたの属性が『分からない』のよ。この世界の人間は炎や水とか属性を持って生まれてくるんだけど……」


「まさかの『無属性』とか」


 なにそれかっこいい。


「なにバカなこと言ってんの。調べ直すわよ――」


 結局、何度も鑑定しても結果は出なかった。


「はぁ、はぁ、どうも私じゃ分からないみたいね」


「魔力切れか? どう? 回復する?」


「じゃあお願い……ってするか!」


 パァンと手を弾かれてしまった。それは残念。


「となると属性魔法は使えないわね……」


「例えば?」


「炎、水、風、土の四大元素とかを使う魔法よ」


「マジか、俺でも使えるのはなんか無いのか?」


「普遍魔法っていうどの属性でも使えるのならあるけど、だいたい地味よ」


「使えるに越したことはない」


「じゃあまずこれから。飛翔(フルトゥリーム)!」


 人丈の数倍浮き上がるリノ。ホウキはないがまさに魔女って感じだな。


 おや?

 もう少しでスカートの中が……。黒ニーソ包まれたすらっと伸びた脚を目で伝うと――


「ん? なにをじっと見て……ってどこ見てんのよ!!」


 バレたッ?!

 いやそうじゃない。そもそも不可抗力だし……。


「な、中までは見てねぇから!」


「どうだか? じゃああんたの番よ、変態」


「へ、へんたっ?! まあいいや……。飛翔(フルトゥリーム)――」



 ――成功したのか?

 思わず閉じた目を開くとそこは……


「く、雲の上ぇ!?」


 眼下にはまばらな雲と果てしない草原が広がる。

 ……あれ、これ止まらないんですけど?!


「と、止まれ! 止まれ!」


 ピタリと静止する身体。


「助かっ……たぁッ!?」


 今度はジェットコースターの如く急降下。

 いったい何が起きてんだ!? うお、内臓がふわってくるアレが……。


「あ、もう無理」


空気絨毯(アエロタピーソ)!」


 これはリノの声?

 そう思った瞬間バウンと何かに叩きつけられた。


「……ここは地面? 俺は生きてる?」


「生きてるわ。それよりさっきの何? 急に飛び上がったと思ったら落ちてきて」


「し、知らねぇ。ちゃんと呪文は唱えたし」


 心臓バクバクで答えるとリノは顎に手を当てた。


「いくら制御できなくても並みの魔力量じゃあんな高く飛べるはずない」


「じゃあなんだってんだよ」


「……多分だけど、無駄に魔力が多くて使いこなせないんじゃない?

 属性が関係ない普遍魔法なら使えるし。とにかく、魔法を教えるのはやめとくわ」


「え、なんで」


「あんなこと近くでされたら迷惑だからよ! とりあえず大人しくすることね」


「……それもそうだな、俺もあんな思いゴメンだ」


 少し残念だが仕方がない。

 俺たちはラカシーダへの道を急いだ。


*


 巨大な壁に囲まれた街ラカシーダの、これまた大きな城の一室。

 俺たちは「ラカシーダ戦線」の作戦基地に立ち寄った。


「戦況はどんな感じ?」


「そうだな……。互いに機をうかがい睨み合っている」


 歴戦の戦士、といった風貌の司令官がリノに答える。


「敵のボスはどこか分かってる?」


「我々の陣地からそう遠くないところに陣を構えているが」


 テーブルに広げられた地図の一点を指す司令官。


「そう、ならすぐ行くわ。一人で」


「なにをっ!? いくら名門出身とはいえ小娘一人では無茶だ!」


「それでも行くのよ」


 ……さっきから気になっていたが、この言葉遣いと自信。リノはそんなに凄いやつなのか?


「なあリノ」


「私を誰だと思って……って何よ」


「お前って何者なの?」


「そうえば言って無かったわね。私、王都魔法学院の卒業生なの」


「……それって凄いのか?」


「はぁ? 並みの魔術士ならひれ伏すレベルよ」


「いやだって狼相手に倒されそうだったじゃん」


「あ、あれは急に来られたし魔力もギリギリだったし……、結局倒したし……」


「俺が回復させたんじゃないか。それもあんな声出して」


「なっ……! そんなこと言うならもう置いてくわよ! じゃあね!」


 りんごの如く顔を赤くして部屋を出ていってしまった。

 魔法学院だか何だか知らないが大丈夫なのか? というか置いてかれたら流石に困る。


「……そこの連れ。お前はどうする?」


「えぇと、俺も連れていってくれませんか。戦場に」


 物理攻撃さえ防げれば死ぬことはないだろうし、俺はリノを追うことにした。

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