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魔法は得意ですけど、メイドさんとして頑張ります!  作者: ぺこ菜ほのめ子
第四章 がっこう
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30. 天職はメイドさん?

今回は砂穂ちゃん視点のお話になります。

 それは突然の出来事なのでした。

 寮への帰路、私の背後に、この国を護っていると伝えられている女神様の一人――木の女神・フィオナ様が現れたのです。

 そして私に、「本当の魔法の唱え方」をご教授されると、唐突に姿を消してしまいました。

 夢……なのでしょうか?

 でも両手のひらには、間違いなく私が魔法を唱えて召喚したどんぐりの山があって、それがここでの出来事が夢でない何よりの証拠なのでした。


「精霊の力……」


 女神様のおっしゃる通りにやったら、本当に魔法を唱えることができました。

 しかし……精霊のことなんて、これまで学校で一度たりとも教えてもらったことがありませんでした。

 私は、先日お花屋さんの前で出会った、変な女のことを思い出していました。

 ――学校で行われている授業が全くのデタラメであり、本当の魔法とは、精霊と仲良くして初めて使えるもの。

 あの女――名前は忘れましたが、喫茶店の制服みたいな洋服を身にまとっていました――は、女神様とまったく同じことを言っていました。

 あの女……いったい何者だったんですか?

 あまりにも荒唐無稽なことを言われて、あのときは拒絶をしてしまいましたが、明らかに本当の魔法のことを知っているじゃないですか……。


 そういえば彼女、高校の普通科に通っているって言っていました。

 なんで魔法の神髄を知っている子が、普通科なんかに?

 どうして私に、精霊のことを教えてくれたのですか?

 謎は募るばかりです。

 そうです。決めました。

 明日は水曜日(リア・メルクレイリア)。学校はお休みですから、明後日、普通科の教室をくまなく調べて、あの女を捜し出すんです。そして――本当のことを問い詰めるんです!


    *


 しかし翌日、私は自分自身に襲いかかったとんでもない異変に気がついてしまうのでした。


 学校はお休みで、午後の三時からお花屋さんでお仕事をしていたときのことです。

 店舗奥でエプロンを身につけてから、植木鉢に入ったお花を通りに並べようと奔走していると、突然店長さんがおだやかじゃない表情で私を制止しました。

 普段は優しい彼女なのですが、今日はなにか違う……。

 お話を伺えば、私の運んだ植木鉢の花びらがもれなく一枚落ちているとのことで、私が何かやらかしたのかと問い詰められてしまいました。

 もちろん神様に誓って、私は店の商品を台無しにするようなことはいたしません。

 そう返して、また植木鉢を抱えたとき、今度はピンク色の花を凛と咲かせたコスモスの花びらがひとひら地面に落ちました。

 え、どうして……?

 なんで何もしていないのに、花びらが落ちて……?


 結局その日分かったことは、私が花、もしくは花の入った容器に触れると、花びらが一枚落ちてしまうということでした。

 しかしこれまで、そんな不可思議な現象は、一度たりとも起きたことがありませんでした。

 ですが、フロアに無残に落ちた色とりどりの花びらは、私に襲いかかった異変を残酷なまでに証明していたのでした。


 その日は強制的に帰されて、明後日のシフトを待つことになりました。

 それでも変わらないようなら、覚悟をするように――そう強い口調で言われました。


 帰り道、道ばたに咲いた桔梗や菊の花を触ってみると、やはり例外なく、どの花も、ひとひら花びらを落としました。

 ひらりはらりと、綺麗に一枚だけ散るのです。二回同じ花に触れると二枚目が落ちて、それはまるで、私が花の精気を奪っているようで……。

 怖くなって駆け足で寮へと戻り、ベッドの中に逃げ込んで、布団を被ってしまいました。


 大好きなお花なのに、触っただけで命が散ってしまうなんて……そんなの酷すぎます!

 それにこのまま行けば、いま働いているお花屋さんだって絶対にクビです。

 どうしましょう……。内職だけじゃ生活費なんて稼げませんし、新しいお仕事を探さないと……。


 突如、私を襲った異変のせいで、魔法とあの女のことなんて、綺麗さっぱり忘れてしまっていたのでした。


 翌朝、今後の生活について思い悩みながら登校をして、嫌な気分を忘れたいこともあって、折り紙の内職に没頭することにしました。

 するとこんな会話が私の耳に飛び込んできました。


「ねぇねぇ、聞いた? 普通クラスに、メイドさんのアルバイトを募集している人がいるんだってー」


「あー、聞いた聞いた。なんか、有名な小説家さんなんでしょ? この近くに大きなお屋敷を持っていて、いま学校の子に声を掛けてるとかー」


「あんた、応募してみたら?」


「いやよ、そんなメイドなんてー。あれ、住み込みなんでしょ? 自由時間なんてないだろうし、そもそもあたし、全然お金に困ってないし」


 椅子に座った女の子と、机に腰掛けた女の子がそんな談笑を繰り広げていました。

 メイドさん? 住み込み?

 もし住み込みなら、いまお母さんが払っている寮費だって払わなくてよくなりますよね?

 それにご飯だって、しっかりと三食出るのでしょうか?

 お花が好きだからお花屋さんのアルバイトを選びましたけど、こんな訳の分からない体質になってしまったのなら、いっそのこと――


「あ、あのっ。そのお話、詳しく教えてくださいなのですっ!」


 名前も知らないクラスメイトたちに、藁にもすがる思いで尋ねてみるのでした。


    *


 クラスメイトに案内されて、私はすぐに一年一組の教室へと突入しました。

 ――ウェーブの掛かった金髪と紅い瞳の少女で、歳は十歳くらい。

 教室中を見回して、窓際の一番後ろの席に悠然と腰掛ける、メイドを募集しているらしい女をすぐに見つけることができました。


「あのっ、お伺いするのですが、あなたがメイドを募集しているのですか?」


 単刀直入に尋ねます。

 するとその女はクスクスと笑って、


「ええ、そうよ。ふふっ、なかなか応募が来なくて退屈していたところだったのよ。あなた、所属とお名前は?」


「砂穂・アストラリウズンっていうのです。一年C組です」


「C組って言うと、魔法クラスの所属なのね。面白いわ。あら……ちょうどいいところで戻ってきたみたいね」


 金髪の女は、私の背後に視線を向けました。

 なんだろうと振り返って見ると、


「……!」


 肩まで伸びた黒のセミロングヘアーとエメラルドグリーンの瞳。

 すっかり忘れていましたけど、例の出来事について問い詰めようと思っていたあの女が現れたのです。

 その女は私を発見するや、駆け足で向かってきて、


「会いたかったです、砂穂ちゃんっ!」


 私の両手を握りしめて、ぴょんぴょんと飛び跳ねるのでした。

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