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魔法は得意ですけど、メイドさんとして頑張ります!  作者: ぺこ菜ほのめ子
第三章 おまつり
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25. エピローグ1 -里帰り- または -七菜のいない日-

後半はご主人様視点です。

 メイドさんとしての毎日が始まりますっ!!……って意気込んでいたのですけれど、その前にわたしには大きな任務が課せられました。

 星祭りの翌日、月曜日(リア・モニカ)、お姉ちゃんをピロリアフィオナまで送り届けるという任務です。

 今日はメイド服ではなくって、お姉ちゃんとお揃いのブラウスとエプロンドレスを身につけて、ご主人様と瑠璃さんの送り迎えのもと、サリスモニカ行きの二等車両へと乗り込みました。


 お姉ちゃんは列車に乗り込むと、すぐに眠りについてしまいました。

 実はお屋敷から駅に向かうまでも馬車を手配してもらいましたし、やっぱりとてつもなく疲労が溜まっているんです。

 ご主人様は、体の調子が良くなるまでサリスモニカで休むことを提案してくださいましたが、お姉ちゃんはそれを断ってしまいました。

 それならばと、サリスモニカへ転院させることも提案しましたが、それも退けられました。

 ご主人様は「近くにいれば、七菜がいつでもお見舞いに行けるのに」と不思議そうに言っていましたが、なんとなくわたしには拒絶する理由が分かる気がします。

 要は、ちょっとした試練なんだと思います。

 わたしは、六花お姉ちゃん大好きですから、近くにいたらきっとたくさん甘えちゃいます。

 それを見越して、これまで通り・約束通りにピロリアフィオナ――わたしたちの故郷へと戻るのだと思います。


 ――里帰り。

 いつかお暇をいただいて、お姉ちゃんの容態を確認しようとは思っていました。

 でもこうして、お姉ちゃんと一緒に、こんな時期にするなんて!

 そういえば、サリスモニカにやってきたばかりの頃は、魔法も完全に隠し通すつもりでしたが……予定ってまったくその通りに行かないんだと反省をします。


 向こうでやりたいことはいろいろとあります。

 お姉ちゃんを病室に連れて行って、それから四年間を共に過ごした、わたしたちの小さな家の様子を確認します。

 八月にお屋敷の大掃除をするって言われましたけど、その前に、あの小さな家のお掃除をしなくてはなりません。

 それから近所の人たちとも挨拶をして、学校のお友達とも会いたいです。皆さん、元気でやっているでしょうか?

 それから時間があれば、野原で横になって、青い空を緩やかに流れる雲を眺めてゆっくりとしたいですねぇ……。

 最後に、もう一度病院に行ってお姉ちゃんの様子を確認してから、サリスモニカ行きの最終電車へと乗り込みます。

 それで里帰りはおしまい。

 お屋敷に戻って、メイドさんとして、魔法はもちろん封印して、これまでと何一つ変わらない毎日を送るんです!


 お姉ちゃん、わたし頑張りますからね。

 そしてわたしがちゃんと成長して、お姉ちゃんも元気になって、それから世界のどこかにいるお姉ちゃんたちとも仲直りして――

 いつの日か、みんなで一緒に幸せに過ごすんです!


    *


 昼下がり、執筆作業も一段落ついたので、メイドの瑠璃を誘って庭でブレイクタイムを過ごすことにした。

 屋敷にはもう一人メイドがいるが、いまは里帰り中で、ここにはいない。

 七菜、ちゃんとやっているかしらね?


「瑠璃の淹れるココアはおいしいわね」


「ありがとうございます」


 瑠璃は真面目で美人で可愛くていい子だ。……胸も大きいし。

 掃除はカンペキ、料理もプロ級。

 ちょっと愛想に欠けるけれども――まあとにかく、うちの自慢のメイドだ。


「ねぇ、瑠璃。一つ聞かせて。わたしが魔法使いだって知ったとき、どう思ったかしら?」


 一つ屋根の下で過ごす仲間とはいえ、彼女にはその正体を隠していた。

 日常を送る上で、わざわざそのことは話さなくてもいいと思っていたからだ。


「驚きました。でも薄々は感じていたんです。ご主人様って、どこか普通の人と違うって。だから意外とすんなりと受け入れられたというか……。

 それ以上に驚いたのが、七菜のほうです。頭がお花畑な村娘っていう印象だったのに、あんなものを隠し持っているだなんて……」


「あはは、そうよね。わたしも初めて正体に気づいたときは驚いたわ。……魔法の才能があるのに、こんな屋敷でメイドとして働いているなんておかしいんだもの!」


「……そうですね。でも、あいつがここにやってきて、とても良かったと思います」


「そうね。その通りだわ。

 ところで話は変わるけど――もう瑠璃には隠すこともないし、わたしのこと全て話そうと思うのだけれど」


「全て……ですか?」


「『まだあるの?』とでも言いたげな顔ね」


 「魔法が使える」――それだけでは、わたしの正体にはたどり着けない。

 なぜわたしが子供の姿をしているのか。

 なぜメイドを雇って生活をしているのか。

 それらを吐き出して、スッキリとしたかった。


「わたし、簡単に言えば異世界人なの。この世界とは別の世界で死んで、こっちの世界に転生してきたのよ」


「……はい?」


 頭の中には「?」がいっぱい。そんな表情だった。

 わたしは構わず話を続ける。


「玲櫻・ノルカワインデ・シャオズムレイネとして生まれ変わったわたしを最初に見つけてくれたのは、神社の巫女――都和。どうやらあそこは異世界と通じる不思議なスポットだったみたいね。

 初めはわたし、一人で生きるつもりだったわ。向こうの世界でしていたように、誰の助けも借りずにね。でも、この世界の魔法使いが共通して被る不具合――「呪い」で一切の家事ができなかったから、わたしはメイドを雇うことにしたのよ。

 お金を稼ぐために向こうの世界の出来事を小説として書いたり、この世界の「魔法」や「呪い」について調べているうちに季節も変わって――そこで瑠璃、あなたと出会ったの」


 全ての真実を簡潔に語り終えて、心が晴れやかになる。

 でも――異世界・転生・呪い……瑠璃の頭の中はますますこんがらがっちゃうだろうな。

 そう思っていたのだけれど――


「どうしてご主人様がそんな幼い姿をしているのか、どうしてわたしたちをメイドとして雇っているのか、全て謎が解けました」


「あら、疑わないの? 自分でも荒唐無稽なことを言っているって思うのだけれど」


「私のご主人様は、嘘をつきません。何かを秘密にしておくことはあっても、です」


「そう。ありがとう、瑠璃」


 やっぱり瑠璃はいい子ね。

 わたしのことを、こんなにも信じてくれるのだから。

 まあでも――もうちょっと積極的なスキンシップが欲しいところだけど、それは今後の課題かしら?


「この話は、他言無用よ。七菜には、そのときが来たら話そうと思うから」


 マグカップをテーブルの上に置いて、屋敷へと戻る。


 さぁて、じゃあ小説の続きでも書こうかしら。

 孤独の魔法使いとして今を必死に生きる、わたしの物語を!

第一部 -完-

物語はまだまだ続きます。

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