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魔法は得意ですけど、メイドさんとして頑張ります!  作者: ぺこ菜ほのめ子
第三章 おまつり
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19. メイドさんとお姉ちゃん -前編-

「七菜の姉の、六花(りっか)・レナルミカです。いつも妹が大変お世話になっております」


 お姉ちゃんはお食事の前、そう自己紹介しました。

 急遽、四人分の夕ご飯を用意し、いつもは三人で囲むテーブルを四人で囲みます。

 「客人が上座」だからと、普段ご主人様が座っていらっしゃるお席に、お姉ちゃんは案内されました。


「わたしは、玲櫻・ノルカワインデ・シャオズムレイネ。この屋敷の主よ。あなたの噂はかねがね七菜から聞いているわ。ふふっ、一度お会いしてみたかったのよね~。こちらこそ、どうぞよろしく」


 ご主人様は、いつものように大胆不敵に自己紹介をされました。


「瑠璃・メルクレイリアです。七菜の先輩メイドをしています。よろしくお願いします」


「あなたが瑠璃ちゃんなのね。七菜から話は聞いています。厳しいけれども、美人で可愛いって!」


「……そ、そんなことありません」


 瑠璃さんは、いつものように顔を赤く染めました。


「積もる話はいろいろとあるでしょうけれども、目の前に食事があるのだから、食べながら話しましょう。それじゃあ、瑠璃?」


 そう言って目配せして、


「いただきます」


 いつものように号令を掛けました。

 お姉ちゃんはフォークとナイフを手に、さっそく皿の上のハンバーグを口にします。


「本当においしいわ。これを作ったのは、瑠璃ちゃん?」


「は、はい。そうですけど……」


「後でレシピを教えてもらってもいいかしら?」


「全然構いませんよ」


 そのお姿はとても元気そうでしたけど、やっぱり心配でなりませんでした。

 わたしは意を決して尋ねます。


「お姉ちゃん」


「どうしたの、七菜? 食べないの?」


「聞かせてください。お姉ちゃん、入院してましたよね? それなのに、なぜ――」


 尋ねるとお姉ちゃんは微笑んで、


「元気になったから、フツーに生活をしているだけよ。お医者さんの許可だってもらってるんだからね。あのときは、七菜の卒業前ってこともあって無理しちゃったけど、休んだら幾分か楽になったの。私、人並みの生活を送れる程度には健康なんだから。でも――ありがとうね、七菜。」


「元気なんですね! 良かったです!」


「でも、やっぱり……ちょっとすぐに疲れちゃうみたい。頻繁に休憩を挟まないと、体力が持たないの。ふふっ、ダメね、私って。

 そうだわ! 今週、サリスモニカで大きなお祭りがあるでしょう?」


「知っているんですか?」


「当たり前よ、有名なお祭りだもの。だからここにはできれば、お祭りの日まで滞在させて欲しいんだけど――」


 向かいに座るご主人様に目配せします。


「当然よ。客人をもてなすのも、主人とメイドの仕事だもの。都和以外の客人は久々で腕がなるわね。

 というわけで、七菜。業務命令。あなたはしばらくの間、六花のお世話をなさい。その客人は、七菜にしか応対できない客人だから。主人に仕えるだけでなく、客人を満足させるのも、メイドの大事な仕事の一つよ。いいわね?」


「はいっ、分かりました!」


 そんなやりとりを見て、お姉ちゃんはクスクスと笑って、


「手紙からもひしひしと感じていたけれど、あなたったら、とてもいいところで働けているのね」


「あら、そう言われて主として光栄に思うわ。ありがとう」


「いいえ、こちらこそ。七菜を雇ってくださって、本当にありがとうございます」


    *


 お食事の後、わたしはお姉ちゃんを二階の寝室へと案内します。

 このお部屋は、普段ご主人様が使っている主寝室とは別にあって、普段は使用することはないのですが、こんなお泊まりのお客様が来たときは例外でした。

 部屋の奥にベッドが二つ並んでいる部屋で、広さは使用人室と同じくらいでした。


「ちょっと休ませてもらうわね」


 お姉ちゃんは、トランクケースを床の上に置くと、そのままベッドの上に横になりました。

 やっぱり、長い間ベッドの上で生活をする日々が続いていましたから、長い時間電車に乗って、駅からここまでやってくるのに、結構な負担が掛かっているのだと思います。


 わたしはお姉ちゃんの応対をする間、この部屋で一緒に生活するようにと、ご主人様に命令されていました。

 わたしもメイド服のエプロンを外して、ベッドの上に横たわります。


「こうやって、一緒のベッドにいるのって、すごい久しぶりな気がします」


「そうね。一ヶ月ちょっとかしら? 向こうではベッドなんて一つしかなかったから、毎日のように一緒に眠っていたっけ。狭くて窮屈だったわね」


「狭くても窮屈でも、わたしは好きでしたよ。お姉ちゃんと一緒に眠るの。ぬくもりを感じられましたから」


「七菜ったら相変わらずの甘えんぼさんなのね。それとも――こっちで生活を初めて、ちょっとばかしホームシックになっちゃったのかしら」


「それも少しはあります。でも、いまのメイドさんとしての生活って、毎日が新しい発見と学びで、とっても面白いです」


「あら、私が入院して良かったわね」


「そ、そういうことを言ってるんじゃありません!」


「でも私は嬉しいわよ。こんなに大きくなった七菜を見られて。正直ね、一生七菜に、あの狭い町で生活をさせるのはどうかと思っていたのよ。七菜は、いろんな才能を持って生まれてきた子だから、いずれはピロリアフィオナを離れて、旅に出て欲しいと思っていたわ。

 それがこんな思いがけない形で成し遂げられるなんて――『怪我の功名』という奴ね」


「ピンチのときって、最大のチャンスなのかもしれませんね。そういえば以前、ご主人様もそうおっしゃっていました」


「あら、そうなの?」


「お姉ちゃんは体が弱く生まれてきてしまいました。でもだからこそ、弱い人の立場になれたり、生きるためにわたしの手を借りたりできるんだって」


「……深いわね。あなた、いいご主人様に雇われて良かったわね」


「わたしもそう思います!」


 そういえば、お姉ちゃんは気づいているんでしょうか?

 ――ご主人様の、正体に。

 見た目は十歳なのに、あんな大胆不敵な態度を取る子供なんているわけがありません!

 そうですよね、きっと気づいています。

 お姉ちゃんは、人一倍魔法の気に敏感ですし。


「……あの、お姉ちゃん。ご主人様は――」


「分かってるわ、七菜。おかしいわよね、魔法を捨てたはずなのに、魔法関係者の屋敷でメイドをしているなんて。でももしかしたら、やっぱりそれは宿命なのかもしれないわね――」


「宿命ですか?」


「魔法を捨てようとはしたけど、それはもしかしたら許されないんだっていう、ね」


 お姉ちゃんは意味有りげに笑ってみせました。


 そんな雑談の後、許可をいただいて二人でお風呂に。

 久々に洗いっこをいたしました。

 部屋に戻ったら、お姉ちゃんはすぐに眠りについてしまいました。

 やっぱりちょっと無理をして、疲れが出て来たんだと思います。

 明日は、サリスモニカの街を案内してあげるつもりでいます。

 楽しむことももちろんですけれど、それ以上に、無理をさせないことが大事だって思いました。

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