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第16章 犯人は誰か

 私と理真(りま)新津(にいつ)署に戻った。時坂保(ときさかたもつ)殺害に関する調査結果が上がってきたので、発表も兼ねた捜査会議が開かれるのだ。

 私と理真は例によって一番後ろの席をとった。前にはいつも通り城島(じょうしま)警部の顔が見える、隣には織田(おだ)刑事、さらにその隣にいるのは警視庁の田町(たまち)篠塚(しのづか)両刑事だ。心なしか少しやつれたように見える。定刻となり、会議が始まった。


「では始めます。最初に、時坂保殺害事件の流れを確認します」


 説明に立ったのは中野(なかの)刑事だ。背広も着替え、屋上での奮闘の陰はもう見られない。


「まず、横手(よこて)病院受付に犯人から電話が掛かってきました。これが午前十一時三分。電話を受けたのは同病院の事務員。犯人は変声機を通すか、ヘリウムを吸ったような声で喋ってきたということです。内容は時坂保殺害をし損じた代わりに、万代(ばんだい)シティでの無差別殺人を予告するような内容であったため、警官隊を動員して急行しました。その際、病院に詰めていた刑事警官も多数駆り出されることとなりました。しかしながら、これは犯人の罠で、電話の後すぐに犯人は横手病院に向かったものと思われます。警備が手薄になったところを狙って、時坂保を殺害するためです。電話があったのがほぼ十一時ちょうど、現場の横手病院まで、車で一時間もあれば移動可能です。犯人の侵入ルートは屋上からでした。屋上に干してあったベッドシーツを繋げロープ状にして保の病室真上の手すりに結び、それを伝って窓から侵入、保を毒殺し、再び屋上へ。犯行に使ったシーツを解いて屋上に置かれていた段ボール箱に詰め、逃走したものと思われます」


 中野刑事による犯行再現現場にいなかった捜査員からは、当然、窓が施錠されていなかったのか、保が侵入者に気づかなかったのかと疑問が投げられた。中野刑事は、それに対する答えも持っていた。


「犯人の侵入ですが、これは病室にいた保さんが協力したものと思われます」


「えっ?」私は思わず声を出してしまった。隣の理真も、こちらを向き私と目を合わせる。捜査員の中からも喧噪が広がり始めたが、中野刑事の話を聞くため、それはすぐに治まった。場内が静寂を取り戻してから中野刑事は、


「病室の捜索で、一枚のメモがみつかりました」中野刑事は正面隅に座っている女性警官に向き、「お願いします」と告げた。


 女性警官が手元のノートパソコンを操作すると、正面スクリーンに画像が映し出された。


 ニチヨウビ ゴゴレイジカラレイジハンニ


 スクリーンを注視した捜査員の中から再びどよめきが起こった。映し出されたメモに書いている文字は全てカタカナで、定規を当てて引いた線のような直線ばかりで構成されていた。筆跡を誤魔化す常套手段だ。中野刑事は続けて、


「メモはA4サイズの普通紙に、ご覧の通り、定規で引いたような文字で書かれていました。使われた筆記用具はボールペンです。これが、保さんのベッド脇にあるサイドテーブルの引き出しの中からみつかりました。三回折りたたまれた状態でした。指紋は出ていません」


 捜査員たちに正面を向けて座っているため、振り返る姿勢でスクリーンを見ていた城島警部が、


「『日曜日、午後零時から零時半に』と読めるな」

「はい」中野刑事は返事をして、「これが保さんが犯人の侵入に協力したと思われる証拠品です。犯人は前もって、日曜日の午後零時から半の間に保さんの病室を訪れると予告を出していた。保さんはそれを知っていたため、窓を開けておき、犯人の侵入を手伝った」


 ここで当日病室前の見張りを担当していた相田(あいだ)刑事が手を上げ、


「私と、他に病室の見張りをしていた刑事も知っていると思いますが、保さんは窓を常に少し開けておくのが日課でした。夜はさすがに閉めて施錠しますが、日中はずっと窓を開けていました。病院の空気が苦手で息が詰まるから、常に外の空気を入れておきたいと言っていましたので」


 病院の屋上でも相田刑事は私たちにそんな話をしてくれた。それを聞いた城島警部は、


「保さんは満足に立てないんだろう。夜になってからの窓の施錠は誰が?」

「それは、夕食を下げに来た看護師に頼んでやってもらっていました。朝は朝食を運んできた看護師に窓を開けてもらっていました」


 城島警部は、そうか、と納得した声を出し、続いて、


「このメモはいつ、誰が病室に持ち込んだのか、分かるか?」


 質問を中野刑事に向けた、中野刑事は、


「分かりません。見張りの刑事の証言から、病室には家族、西根(にしね)家の見舞い客以外は、医師と看護師しか出入りしていません。トイレに行く時は、個室内でひとりになりますから、そこでメモのやりとりが行われた可能性もあります。例えば、犯人が保さんの入った個室の隣に潜んでおり、仕切りの下の隙間からメモを渡すとか。ちなみに病院の個室トイレのドアは通常閉じている状態で、ノブのところを見ないと使用中かどうかは分かりません。保さんのトイレに付き添った看護師たちに訊いてみましたが、保さんが入った個室の隣に人がいたかどうか、そこまで見ていないし憶えていないそうです」

「まあ、仕方ないな」


 城島警部は腕を組んで、


「しかし、たったあれだけのメモの記述で、保さんは犯人が窓から侵入してくると理解したわけか? メモのことを警察に話しもしないで」

「侵入者が、大手を振って見舞客として訪れることができない人物だったから、ではないでしょうか」


 中野刑事の言葉に、やはり、といった顔で城島警部は、


相模健(さがみたける)か?」中野刑事が小さく頷いたのを見て、「ということは、保さんと相模は知り合いだったという可能性が出てくるな。薬害のことで互いに名前は知っていただろうが、直接接触していたということなのか? まあ、そこのところの捜査はこれからだな。それでは、次に鑑識の報告を聞こう」


 中野刑事は着席し、説明者は須賀(すが)鑑識員にバトンタッチされた。


「えー、まず犯人が電話を掛けた万代シティ伊勢丹脇の電話ボックス及び電話機の中に残っていた硬貨からは、丸柴(まるしば)刑事が東京から入手してきた相模健のものと一致する指紋は検出されませんでした。テレホンカードを使ったのかもしれませんが、受話器に指紋を拭き取ったような跡はありませんでしたので、手袋を着けていたと考えられます。時坂保さんの病室、屋上及び主だった病院施設からも、犯人の指紋及び足跡その他遺留品は発見できませんでした」


 足跡も残っていないのか、と捜査員の中から声が上がった。


「保さんの死亡原因ですが、解剖の結果、シアン化カリウムを嚥下したことによるものであることが判明しました」


 シアン化カリウム。俗に青酸カリとも呼ばれるメジャーな毒だ。過去の不可能犯罪でも幾多も使用されてきた。


「えー、現場から、食器、冷蔵庫の食品、飲料、被害者が服用していた薬まで、口に付ける可能性のあるものを全て回収し調べた結果、シアン化カリウムが混入されているものが発見されました。冷蔵庫に入っていたウーロン茶です。五百ミリリットルのペットボトル入りのもので、残っていた中身の量は三分の一程度でした。この中から約百ミリグラムのシアン化カリウムが検出されました。同薬の人ひとりの致死量は、二百から三百ミリグラム。よって、満タンの中身に三百ミリグラムのシアン化カリウムが混入され、その三分の二、つまり二百ミリグラムのシアン化カリウムを嚥下して死に至ったと考えられます。ちなみに、ご存じの通り、シアン化カリウムというものは口に含むと強い苦みを生じる毒物です。元々苦みのあるウーロン茶に混入するというのはうまい手と言えるでしょう。五百ミリリットルの液体に溶かしてしまえば、元々の苦みも薄まりますし。ちなみに、そのペットボトルからは指紋はひとつも検出されませんでした。明らかにタオルか何かで拭き取った形跡がありました。それと、ペットボトルの口から唾液も検出されませんでした」

「それについては」と病室の警備に当たっていた相田刑事が手を上げて発言する。「保さんはペットボトル飲料はグラスに注いでから飲む習慣があったようです。私も被害者がそうしてペットボトルの水を飲んでいるところを見たことがあります」


 そう言えば、私たちが話を聞きに行ったときもそんなことをしていたのを思い出した。


「そうですか。ベッド脇のテーブルにコップも置いてありました。コップは空だったため、こちらから毒物は検出されませんでした」


 須賀は言い終えると着席した。鑑識からの報告は以上のようだ。

 ふむ、と城島警部は息を漏らして、


「犯人は保さんが招き入れた。毒物の侵入経路はペットボトルのウーロン茶。これらから考えられる犯行の経緯は、どうなる? まず犯人は万代シティで病院にニセの犯行予告の電話を掛け、すぐに病院へ直行。警備が手薄になった隙と、保さんの協力で屋上から病室に侵入。ここでペットボトルのウーロン茶が出てくる。犯人は封を開けたペットボトルに青酸カリを混入。残っているペットボトル内から青酸カリが検出されたことから、コップに注いだものに毒を入れたのではないことは明らかだな。当然、保さんに気付かれないように隙を見て入れたんだろう。ペットボトルに唾液が付着していないことと、日頃の習慣から、保さんはペットボトルからコップに中身を注いでウーロン茶を飲む。ペットボトルの指紋が拭き取られていたため、犯人が注いでやったということも考えられるな。致死量である二百ミリグラム分が溶けた量のウーロン茶を飲んだところで、保さんは死に至る。犯人はペットボトルを冷蔵庫に入れ、窓から去る。侵入に使用したシーツは解いて段ボール箱に入れ屋上に放置。病院から逃走した」


 捜査員たちは一様に考え込む顔をして黙り込む。隣の理真も神妙な顔つきになった。


「詳しい考察は後にしよう」城島警部が沈黙を破り、「では次に、織田、相模の捜索のほうはどうなっている」


 城島警部は次の報告を促した。織田刑事が起立する。


「はい。市内のホテル等宿泊施設を当たっていますが、今のところ相模らしき人物が宿泊している、していたという情報は確認できていません。宿泊施設に限らず、公園などに寝泊まりしている可能性もありますので、そちらも当たっております。また、長野県警に協力を要請し、相模の実家のあった地域の聞き込みも平行して行っています。新潟に来る前に故郷に寄った可能性もありますので。なお、相模の携帯電話は解約されていました。失踪直後に手続きを行ったものとみられます。先ほどの万代シティでの一件でも、周囲に設置されていた監視カメラの映像をチェックしていますが、今のところそれらしい人物の発見には至っていません。映像量が膨大ですので、まだ全て見切れていないのですが。電話を掛けてきたという電話ボックスは監視カメラの範囲外でした。以上です」


 織田刑事は着席した。


「長野県警からは、何か情報があれば俺のところに連絡が来ることになっているが、今のところないな」


 城島警部が言った。


「私からもいいですか」手を上げて立ち上がったのは警視庁の田町刑事だった。城島警部の返事も待たずに田町刑事は、「久慈村、時坂保が殺害された以上、相模がこの新潟に残る可能性は低いと思われます。ここにはもう相模の復讐対象となる人物がいないからです。五年前の薬害問題に関連した人物のほとんどは東京に在住しています。今後は警視庁が音頭を取って捜査に当たる可能性が大きいでしょう」


 捜査員たちは一斉にさざめいた。ここまできてタッチできるか。俺たちも東京まで行こう。そんな声が聞かれる。田町刑事は、その声を無視して着席した。場内が静まってから城島警部は、


「最後に。安堂さん、何か気づいたことがあればお願いしたい。先ほど私が述べた犯行の経緯についても、何かおかしいと思われるところはありませんか」

「はい」理真は立ち上がる。例によって織田刑事は面白くなさそうな顔をした。

「私は屋上からの侵入について疑問だったのですが、メモのことを聞いて納得しました。確かに、病室にいる保さんの協力があれば侵入は容易に可能です。保さんが何の目的で犯人と会うつもりだったのかは、もちろんまだ分かりませんが」


 理真はそこでひと息ついてから、


「毒物が混入されていたペットボトルのウーロン茶ですが、それは始めから冷蔵庫にあったものだったのでしょうか?」


 この質問には、中野刑事が手帳を見ながら、


「それについてはまだ確認できていません。銘柄は病院の売店でも売られているものです。保さん自身が入院後に売店で何か買ったことはないようですので、入院時に荷物を運び入れてくれた西根家の方か、お孫さんの藍子(あいこ)さんが買った可能性もあります」

「そうですか」理真はそれを聞いて、「毒物を混入した証拠品なのですから、犯人が持ち去ってもおかしくないと思ったのですが、元から冷蔵庫にあったものでしたら、持ち帰ってしまっては、元々そこにあったものがなくなっていると誰かに気が付かれてしまう恐れがあるため、残していったというのは理解できます。ですが、犯人が、わざわざペットボトルの中身まで残していったのはどうしてでしょう? 保さんの病室は中に洗面台がありますよね。そこで中身を捨てて洗ってしまえばよかったのでは? 毒物混入経路が不明となり、犯人に有利となります。空になったペットボトルは、ゴミ箱に入れておけばいいだけです。保さんが飲んだものと思って誰も疑わないでしょう。最後に遺体となった保さんの手に握らせでもして、指紋を付けておけば完璧です」


 城島警部は理真の話を聞いて、場内を見回した。誰か答えられるものはいるか、という合図だろう。手を上げたのは、ドアの見張りに付いていた相田刑事だった。


「私が考えますに、犯人は洗面台で水音などが立つのを警戒したのではないでしょうか。洗面台はドアのすぐ近くにあり、水を使うと音が廊下まで聞こえます。ベッドから洗面台まではある程度距離があり、歩いて行く必要があります。保さんはひとりでは満足に歩くこともできないので、保さんひとりしかいないはずの病室内で洗面台を使っている音がしたら、私も含め見張りのものは当然、おかしいと思い病室に入るはずですから」

「……なるほど。ありがとうございます」


 理真が礼を言うと、相田刑事は小さく頭を下げた。理真は続けて、


「残った中身を窓の外に捨てるという手段も考えられますが、それを外にいる誰かに目撃される恐れもありますからね。そういえば、犯人が屋上からシーツを伝って出入りしたところの目撃情報はないのですよね?」

「はい、今のところありません。目下、聞き込みを継続中ですが」


 答えたのは中野刑事だった。


「そうですか。ありがとうございます。冷蔵庫の中には、ウーロン茶の他に飲み物はありましたか?」


 理真のこの質問には、今度は須賀が手を上げ、


「はい、ミネラルウォーターも一本ありました。しかし、先ほど申し上げた通り、シアン化カリウムは苦みのある物質です。水に混入しては、いくら薄めたとはいえ、ひと口目の味で、これはおかしいと吐き出されてしまう可能性があります。ウーロン茶を選んだところに、犯人の狡猾さが見えると思います」


 須賀の答えにも理真は礼を言って、


「犯行の内容については概ね理解できました。ですが……」


 理真が言葉を止めて俯き、考え込んだ。

 城島警部は、「ですが?」と話の続きを促す。


「はい」顔を上げた理真は、「どうしても腑に落ちない点があるんです」

「それは何ですか?」

「電話の声と指紋、それに病室から出て来たメモです」

「電話の声と指紋とメモ?」


 理真の言葉をオウム返しに口にした城島警部。捜査員の中にも、何のことだ? という表情を浮かべるものがいる。


「犯人が相模健であれば」理真は話し始める。「声を変えたり指紋を消したりする必要はありませんよね。メモの字にしてもそうです。あれは筆跡を誤魔化すために犯罪者が使う常套手段です。見立て殺人までやって、『俺の仕業なのは、とっくに御存じなんだろ』状態ですから、警察に自分が犯人だということは完全にバレている。そんな状況なのに、どうして相模は、いえ、犯人は、変声機のようなもので地声を隠したり、指紋を拭き取ったり、筆跡を誤魔化したりしたんでしょうか?」


 理真のこの言葉には、捜査員たちも、各々話し合いや、持論を語るものが出て、場内はちょとした喧噪の場となった。犯罪者心理だ。我々になるべく情報を与えないつもりだ。などの説が支配的だった。城島警部は場内の声を静めて、


「それについて、安堂さんのお考えはありますか?」

「はい」理真は静かに息を吸い込み、「この事件の犯人は、相模健ではありません」


 場内に起きたどよめきは、この日もっとも大きなものとなった。織田刑事は失笑し、田町刑事は、話にならん、と横を向いた。理真はそんな場内の空気は構わずに、


「この事件の犯人が相模健で、時心(ときしん)製薬が引き起こした薬害事件に対する復讐だというのは、私たちが勝手に作り上げたシナリオです。犯人は一度も、自分が相模だとは名乗っていないし、久慈村さん殺害現場が相模さんが制作に加わっていたゲームの見立てだというのも、私たちの勝手な考えです。それと、私たちは丸柴刑事と一緒に相模さんをよく知る元勤め先の人たちに話を訊いてきました。そこで語られた相模像からは、およそこのような復讐殺人を実行するような人物は思い浮かびません。体力的な問題もあります。相模さんは力仕事に関してはからきし駄目だったそうです。そんな人物が、屋上からシーツを伝ってのレスキュー隊員顔負けの侵入、脱出を行うことができるでしょうか?

 この事件の犯人は、声を聞かれたら困るんです。指紋を残してはまずいんです。筆跡も知られたらいけないんです。それらの手掛かりから、警察の手が犯人自身に辿り着くことを恐れているんです。結果、犯人は、まだその正体を私たちにまったく知られていない。尻尾も掴ませていないんです。犯人がこの捜査状況を知っていたとしたら、きっと今頃せせら笑っているはずです。警察や探偵は、何て見当違いの捜査をしているのか、と――」

「じゃあ」これ以上理真に喋らせるわけにはいかない、といった様子で田町刑事が机に手を付いて立ち上がり、「あんたは一体、相模以外の誰が犯人だって言うんだ!」

「分かりません!」


 理真の答えがあまりに堂々としていたので、私は吹き出しそうになった。それを聞いた田町刑事の顔が益々赤くなる。


「まあまあ、お二人とも」城島警部は立ち上がり、二人を制した。「安堂さんの考えも理解できる。しかし、逆に言えば、犯人は相模じゃないという確証も、同時に得られていない。体力面でも、行方をくらましている間に体を鍛えていたのかもしれない」


 理真はそれを聞いて頷く。場内の喧噪も収まり、警部は会議の締めに入った。


「保さんの事は、我々の力不足だった。しかし、相模捜索により多くの人員を割くことができるようにもなった。明日からはさらに捜索範囲を広げ、一刻も早く犯人の、相模の身柄を確保しよう」

「ふん」荒々しげに息を吐いて田町刑事は、「もう新潟には相模の復讐のターゲットはいないんだ。とっくにどこかへ逃走してるさ。私と篠塚も明日には東京へ戻らせてもらう」


 城島警部に止める気はないようだ。田町刑事には何も言わずに、会議終了と解散の言葉を場内に告げた。

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