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30 暗躍 ▲リギド視点

描写を追加しましたー。

第30話 リギド視点




 ここは私の道場。いつもはただ広いだけの門弟すらひとりも居ない魔術道場なのですが、今日は目の前に先日仲間になった警備隊長がいます。彼は何人もいる警備隊長の中でも特に出世欲の強い人間で、あとひとつふたつ手柄を立てれば総隊長になれる等と街の往来でもお構いなしで口に出しては嘯く様な人物だったりします。


 こう言った人なので、手柄を立てるチャンスがあると餌をチラつかせたらとても簡単に仲間になってくれました。

 あの急場の中、この様な人物とは言えよくもまあ人をひとり誑かす事が出来たと自分自身の事なのですけど関心してしまいますよ。

 時間的な余裕が無かったので自分の身体を餌にしたりはしましたけど、それでも事はうまくいっていますから良しとしましょうか。

 

「隊長さん? あのふたりは貴方に任せましたよ。煮るなり焼くなりお好きにどうぞ。そうそう、ふたり揃ってたぶん処女でしょうから権力に物を言わせてモノにしてしまってはどうです?」


 この隊長さんは彼女達が勇者のパーティーの一員だと言う事は一切知りませんし、私だって言うつもりもありません。だって、それをこの人が知ったら権力に弱い分、すぐにでもふたりを釈放してしまうでしょうから。

 釈放なんて事になったら罪をなすりつけたのが世間にばれるのと同義なので私の人生も一貫の終わりとなってしまいます。それだけは困りますから言動から何から慎重に行動しなきゃ。


「ただ、彼女達はセキューとの戦いぶりを見るかぎり手ごわいと思いますからまずは刑の確定を伝えて戦う気力をそがなければいけません。そこだけは気をつけて下さいね」


「わかっておる。あの様な年端もいかぬ小娘どもはわしの手で素直にさせてやるわ!」


 ふふふ。隊長さんったらすごく嬉しそうですね。あのくらいの上玉をふたりも好きに出来るのですから嫌らしい顔も浮かべられると言うものですかね?

 ミコさん、美衣さん、たっぷりと可愛がってもらってくださいね。


「はい。嘘でもいいのですから、最初に最も重い刑を伝えてそこから言う事を聞けば刑を軽くしてやるなんて言うと効果的かもしれませんよ」


「ふむ。そうだな、それも良い手だな! くくく……わしにも運が向いてきたのかもしれんなー。それでお前はこれからどうするのだ? 借金も無くなったからには、また一から道場を立て直すのか?」


「はい。私は混乱しているセキューのところを吸収しようかと考えています。それはそうと、ふたりの有罪は決定しているのですか?」


 これは建前。警備隊長を煙に巻く為の模範解答。

 本当の狙いはこれを機に勇者様のパーティーへと入ろうと考えているんです。勇者様もパーティーのメンバーがふたりも行方不明になっては戦力が不足しますからね。


「殺人罪だからな。即決の裁判で有罪は確定している。よって、銅山送りは免れぬであろうな。くくく……」


 銅山送りですか。

 過酷な労働だとは聞いていますが、殺人罪なら仕方ないですね。ああ、仕方ないです。まったくもって仕方ない。ふふふ、ミコさん達も気の毒に……。


 この中年の隊長さんに散々可愛がられた挙句、その後の行き着く先は銅山労働。そしてそこにもたくさんの鉱夫達はいるでしょうから……。ああ、心が壊れなきゃいいですけど。心配ですわ。うふふ。 




 私が勇者様のパーティーの中へと入っても戦力としてはどうしようもない事くらいはいくらなんでも判ります。

 しかしそれでも私は勇者様のパーティーに入らなくてはならないのです。

 そう、勇者パーティーへと加入して、閑古鳥の泣いていた我が道場を盛況にする事で今までバカにしていたヤツらを見返してやる為に!

 私に実力なんて無くてもいいんです。民衆なんてモノは無知蒙昧な烏合の衆。だから加入したと言う事実さえあれば箔なんてモノは後からいくらでも付いてくるのですからね。


 ふふふ、スパリオ魔術道場が大盛況となった暁には、良い服を着てもっと大きな道場をこしらえて、更には何人もの男を従えて自堕落で甘美な人生を送ってみせましょうとも!







「それにしてもだ。お前は何度見ても頭の上から足の先まで全てが黄色になっておるのう。やはり黄色が好きなのか?」


 その後もしばらく話していた隊長さんがそう言うと濁った目でこちらを眺めながら自身の体を近づけてきた。そしてそのまま体を寄せると私の左手を触り始めた。

 くっ、気持ち悪い。あの時自分自身の身体を人身御供に交渉をしたのはいいんだけど、こうも会うたびに身体を求められるとさすがに辟易する。

 隊長さんの方は私の初めてを奪ったのがとても嬉しいのか知りませんけど、私は本当に心の底から貴方に身体を弄られるのが嫌なんですよ……。


「うっ……あぁ、はい。私の元住んでいたところが菜の花畑の傍らにあったので、物心付いた時にはすっかり黄色い物の虜になって……うぅ……いたのですよ」


「ふむふむ。その黄色の髪と相俟ってお前にはよく似合っているぞ。安心するといい」 


 そう言うと隊長さんは私の両肩を掴むとその体ごと覆いかぶさってきた。

 ううぅ、やっぱりこうなりますよね。

 好きでもない男……違いますね。嫌いな男に私のこの身体を預けるのは吐き気を催すくらいに気持ちが悪い……。しかしこれも私の選んだ道。嫌で嫌で仕方ありませんけど蹂躙されてしまいましょうか。


「やっ……。あ、ありがとうございます……」


 はあぁぁ、はやく終わってくれないかな……。 







「それではわしはそろそろ行くぞ。入牢者を見回らねばならんからな」


 いそいそと上着に袖を通しながら床でぐったりとしている私を眺めてにやにやと笑う隊長さん。

 部屋着とは言えお気に入りの短めな黄色のスカートはめくれ上がり、上半身なんて何も着ていない状態……。


「はい。何のお構いもしませんで……」


 ううぅ、身体中べたべたする。気持ち悪い……。早くお風呂へ入ってこの男の全てを洗い流さなきゃ。


「うむ。それと昨日も言った通り街で会っても知らぬ仲だからな。気安く話しかけるでないぞ」


「承知しております。私と隊長さんは何も関係は無いのですから」


 それに頷くと散々私の事をもてあそんだ隊長さんは裏口からこっそりと出て行った。




 さあ、お風呂に入って気持ちを切り替えましょうか。隊長さんの事をずっと考えていると心に悪いですから。


 それにしても、私にも運が向いてきましたね。

 それもこれもミコさんが口を滑らせて勇者様の仲間だなんて言ったりするからですよ。口は災いの元とはこの事です。あまり知らない人に余計な事は言ってはいけませんって人から教わりませんでしたか? ふふふ。

近いうちにもう一個くらいリギド視点でいくと思います。

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