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27 まさかの勇者フラグ!?

第27話 




 結局、明日はリギドさんと一緒に行動するって事で話がついてオレと美衣さんはみんなの泊まってる宿へと帰った。

 帰り道は薄暗く辺りは夕方を通り過ぎていた。

 あーあ、ほんの野次馬のつもりが思わぬ寄り道になってしまいましたよ。




「ただいま帰りましたー」


「遅くなりました」


 宿へ着くとみんな揃って大きな部屋のソファやら椅子に座って寛いでいました。

 そこでふたり揃って帰宅の挨拶。ちょっと遅くなっちゃったかなーって感じをこめて。


「おかえりなさいふたりとも。そこまで遅い時間ではありませんが少しだけ心配でした。でも何もなくてよかったわ」


 部屋の一番手前の椅子で紅茶を頂いていたエルセリアさんから少し心配されてしまった。あう、ごめんなさい。


「ミコちゃんらば(なら)心配かけるんは(のは)いつもん事だろも(だけど)、美衣さんが一緒だすけ(だから)、まあ大丈夫らろうとは思ってたよ」


 そしてその横にいた方言少女のエミカさんからも帰りの遅い事を叱られた。

 って言うか、このオレと美衣さんの扱いの違いって何!?


「す、すみません。色々と……」


 全てオレの不徳からくるものです。しくしく……。


「エミカ。ごめんなさい。心配かけましたね」


「あはっ、私は美衣さんこんで(のことは)信頼してるすけ(から)、そう面と向かって謝られると困ってしもうわ」


 ふたりのやりとりを見ているとどちらも気遣いがあってとっても微笑ましい。同じ東方組のエミカさんと美衣さんは生まれた文化圏が近いせいか仲が良いですね。ちょっと羨ましいなー。

 でもねおふたりとも、じつはオレもそこまで貴女達の出身地には近くはないけれど一応は辺境の村出身なのですよー。

 ですから仲間に入れてくれないかな……?







「じゃあみんな、用意も整ったから夕食にしようか」


 宿の女将さんと何やら話し合っていた勇者が夕食にしようとハーレムメンバーへと促した。

 たぶん今の会話は『夕食の用意が出来ました』『判った』とかそんな内容なんでしょう。


 そんな勇者の言葉にみんなは思い思いに一階の食堂へと階段を降りて行きます。オレも最後尾で、目の前のアナスタシアさんに続いて廊下から階段へと足を差しかけて階下へと降りようとしたところを、寸でで勇者に呼び止められた。


「ミコ?」


「あっ、はいレオ様。どうかなされましたか?」


 うわっ、勇者だ! 勇者に呼ばれちゃったよ。面倒くさいなー。

 って言うか、この爽やかな微笑みはなんだ! この勇者スマイルはなんなんだー! 何か楽しい事でもあったのですかー?


「ミコ、今日はどうしたんだい? 日が落ちるまで外になんていて」


「えーっと、魔術関係の知己が出来ましたのでそこで色々と」


「ああ、そうだったのか。ひとまずは安心だ。でもあんまり心配させないでくれよ」


 ニコニコと勇者スマイルを振りまきながら近くまで来た彼。そしてそのままオレの肩をぽんぽんと手で軽く触る。さらにその後、その手を肩に乗せてきた。

 こ、これはスキンシップってヤツか!! 


「はぁ…………。はい。判りました。気を付けます」


「うん。判ってくれればいいんだ。それじゃあ食堂へ行こうか」


「ああ、はい……判りましたレオ様」


「さ、どうぞお姫様(・・・)こちらへ。ここからは私めがエスコート致します」


 勇者がニコニコしながらオレの目を見つめ、恥ずかしげもなく言い放つ。お姫様って……。なんだこの恥ずかしい言動は。


 勇者のやる事なす事が、今のオレにしてみれば凄い嫌悪の感情にしかならない。そうなんだけれども通常の女の子なら真逆の反応になったりするんだろうね。 ……って、そう言えば最初に会った時はこれでまんまとのぼせ上ったんだよなオレって……。


「あははは……レオ様……その……あ、ありがとうございます」


「さあ、お手をどうぞ?」


 う、ううむ。勇者が階段の前で手を出してオレがそれに添えるのを待っているんだけど!


 しかし、変な雰囲気だぞ……? なんだこれは? なんだこの甘ったるい雰囲気は……。

 もしかしたらこの雰囲気のままで食堂になんて行くつもりじゃないだろうな。そんな事になったらオレの隣の席に来そうなんですけどー。

 それは困る! とても困る! ど、どうにかして受け流さなくては!!


 そうだ、何か大事な事を思い出したフリ(・・)をしよう!


「ああ、そうそう思い出しましたー(・・・・・・・・)。レオ様、私ちょっと部屋へ行ってから食堂へ入りますので先にはじめていて下さい!」


 手を差し伸べてきた勇者を焦った笑いでかわす。 

 

「あっ、ミコ、待って!」


「ではっ!」


 眉毛を八の字にした笑顔を作り、『シュタッ』なんて効果音が出そうなくらいに敬礼をすると、そのまま一目散に勇者から離れた。





 勇者と強引に別れて部屋に入ると扉に鍵を掛けた。そしてそれを背に肩で息をするオレ。


 ハアハア、うがーーー! 意味判らないんですけどー! ほんんんんっとに頼みますって。オレにちょっかいを掛けるのはやめて下さいよー。マジでさー。

 ぬぬぬ、勇者めこの変わり様はいったいなんだ!? 旅の間ずっとオレが名前で呼んでたからいつの間にかキュンキュンしてたのですかっ。

 考えても考えてもそれくらいしか思い当たる節が無い。

 だってほんの何ヶ月前にこっぴどく邪険にした女の子に対して、よくもまあここまで手の平を返せるものだと感心しちゃうよ? それなら最初からあんな風な最悪なフリ方なんてしなきゃよかったのに。

 アレだけの事をやっておいてまだオレが勇者に良い感情を持ってるなんて思われてはたまったものじゃない。


 ハアハア……ハアハア……。っはぁ……もう……。

 



 その後、部屋の中で息を整えるのにしばらくベッドに座ってから食堂へと降りて行きました。食堂の中に入ってみると勇者の正面両隣にはいつもの三人が席を占めていましたとさ。

 いやー、良かった良かった。


 もう今日はご飯を食べてお風呂に入ったらすぐにでも寝てしまおうっと。



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