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02 傷心

 下を向いてトボトボと大通りを歩いているオレ。名前はミコ・ワイアット。花の十三歳独身女子です。一応は勇者パーティーの精霊魔術使いをやってました。やってましたって言うのは今現在はフリーだからです。

 フリーって言っても、みんなと一緒での話ですが魔王もやっつけましたし、それなりのレベルでもあるので冒険者ギルドになんて行って登録したら引く手あまたにはなると思いますよ! えっへん!

 はあぁ…………。


 つまらない事を考えながら大通りを先程と同じくトボトボと歩く。道すがら泣きはらした腫れぼったい目を手でごしごしと擦ったんだけどやっぱりちょっと痛い。痛いと思うと心まで痛くなってくるなー。ふう……あーあ、オレってば勇者様のパーティーを首になっちゃったよ。勇者様ハーレムの構成員の一人だったのになー。




 ちょっと聞いてくれよ。

 オレってさ、客観的に見てもとっても可愛い方だと思うんだよね? 

 クリーム色の長い髪は繊細でとても柔らかいし。体だってとっても小柄で抱きしめられると折れちゃいそうになるくらい華奢なんだよ! 目は少しタレ目だけど笑顔はとってもキュートだし、元の男だったオレが見たら絶対に惚れてしまうくらいの美少女なんだよ? それにさ、自分で言うのもアレなんだけど、気立ても良くて掃除に洗濯、他に簡単な料理まで出来ちゃうんだよ? しかもいつだって笑顔で接する事だって出来るし、元男なんだから男心だって判ってやれるんだぜ! 

 今迄言ってきたのを踏まえたうえでオレってば一応はハーレム要員なんだから、まだ経験は無いけれどさ、頼まれれば、よ、よ、夜のお勤めだってこなせるって言う、こんな優良物件は何処を探してもそうは見つからないはずなんだぞ。

 それが……。それがなんでこんな事になるんだよー!!


 さっきまで勇者様と一緒にわいわいと騒いでいた女の子が、ひとり寂しく肩を落としてトボトボと大通りを歩いているのを見た街の住人達はそりゃあもう興味津々らしく、オレの方を見てはヒソヒソ話を繰り返しているのがさっきから何度も見て取れる。

 でもね、まあヒソヒソ話ならいいんだよ。オレには聞こえないしね。でもさ、たまーに聞こえてくるんだよ。大きい声の人の話声が。


「ほら、あの子。さっきまで勇者様と一緒に歩いていた子だよ」


「あら、本当に。勇者様のお連れの子がどうしてひとりで……」


 買い物をしている夫婦の会話が聞こえてきた。どちらの声も心配そうな感じだったんだけど、オレとしては同上されるのすら苦痛に感じていたので早々に遠くまで離れてしまった。


「うわー、あの子すっごい美人さんだー。でもどうして泣きべそかいてるのかしら?」


「可愛いなー。俺んところに嫁にきてくれないかなー?」


 今度はオレの容姿について語る女の人と男の人だね。容姿について褒めてくれるのはすっごく嬉しいんだけど、今は全然余裕が無くて、やっぱり早々にその場を歩き去ってしまった。


 そんなのを何度も繰り返していると、街の住人達の色々な声を拾ううちにオレはもう居たたまれなくなっていた。だってさ、すっげー惨めなんだもん。心が痛すぎるよ。

 はあ、こう言う時、元のオレはどうしてたっけ……ああ、そっか。そうだな。酒に逃げよっかー。

 よし昼間だけど酒場に行こう。そこでやけ酒をひっかけて、その後はたっぷり寝て考えよう! こんな風に考えるとオレは宿も取らずにそのまま酒場を探しに歩き出した。







 んで、どこに行けば酒場があるんだろう?

 じつはこの街の地理を全然覚えていないオレなんですけど、どうすればいいんでしょう? 確か、大通りの一番大きな交差点を西に曲がれば繁華街へ出るはず……。

 



 うーむ。繁華街を探して道を外れてしまったらしいですね。

 ま、迷ってしまいました……。くぅぅ! ドジ過ぎる! オレってばドジ過ぎるー! 頭を抱えてその場でしゃがんで途方に暮れていると通りを挟んで向こう側にようやく一軒の店が見えた。


 もういいよ! 酒場じゃなくてレストランだとしても何でもいい! とにかくオレのこの心の傷を癒す為に酒を煽りたかったんです。だからその店へと入りました。いいとこのお嬢さんにしか見えない女の子が昼間っから。体裁が悪いのはもう仕方が無いです。それほどにオレは酒を欲していたんですよ。


 幸いにもこの店はいかがわしい系ではなく普通の酒場の様でした。昼間からやってるのでちょっと不安だったんですが杞憂だったみたい。

 よーし! さあ、呑むぞー。


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