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12 ローレンスさんとお散歩

 今日も職探しに街まで出るつもりなのですけど、まずはその前にローレンスさんと一緒に散歩をしています。この農場の周りだけなのですけど。


 職は今以って見つかりません。じつは職探しってたいへんなんだなーって最近は思う様になりましたよ。

 うーむ、あまりにも見つからない場合は最悪、冒険者ギルドに登録しようかななんて思っていますけど、出来ればそんな面倒な職は御免こうむりたいです。

 自意識過剰なところがあるオレですけど、冒険者ギルドで登録すればすぐに稼げるとは思います。自分で言うのもアレですけど精霊魔法だって最高クラスの使い手ですし、更に実戦経験も豊富なんですから……。

 でもなー、どうせならそんな斬った張ったのやくざな仕事よりも、もっと平穏無事なぼけーっとしていられる職業に就きたいな。




 隣で一緒に散歩をしているローレンスさんを横に見ながら考え込む。歩幅が違うから自分に合った歩き方ってあるじゃないですか。オレはちょっと……いやここで言葉を濁しても仕方が無い。だいぶ体が小さいので歩幅も比例して小さいんですよ。

 でも、ローレンスさんは腹も大きいけど体全体が大きいから歩幅を広いんです。それなのにあえてオレの歩幅に合わせて歩いてくれているのがちょっと感動的だったりします! 大事にされてるんだなーって思うとちょっと嬉しい。


 しかし月日が経つのは早いもので、勇者と道で出くわしたあの嫌な日からもう一ヶ月近く経ちます。一ヶ月も経つのにまだ職が決まらないのかって? そりゃあ、二週間くらいは街へ出なかったからね、また彼らと遭遇するのは嫌ですから。だから、実質あれからの職探しは二週間くらいなんですよ。

 え? 二週間もあったのにまだ見つからないのはどう言う事なのか? うるしゃい! オレは選り好みが激しいんだよ!




「ミコちゃん。仕事はまだ見つからないんだって?」


 色々と考え事をしながら散歩をしているとローレンスさんが話しかけてきました。オレに気付かれない様に横目でチラチラと見ていたのは話しかけるタイミングを探しての事なのか、それともオレの体を見ていたからなのか。


「はい。どうにも私は仕事を探すのは苦手みたいなので、中々みつかりません」


 前屈みになりながら両手を前にだらしなく垂らして、ちょっとしょんぼりした様に答える。しょんぼり感は出せていたかな?


「どんなのを探しているんだい」


「そうですねー、楽でボケーっと突っ立っているだけで一日金貨一枚貰えるくらいの仕事?」


 ちょいと上を見ながら人差し指を口元へ持ってくると『うーん』なんて考え込んで、思いついたことをそのまま答えてみた。

 あっ、金貨一枚は日本円で十万円くらいね。


「あー、うん。そ、それは難しいね……。うん。とても難しいね……」


「やっぱりそうですよね……」


 普通に庶民が一日で金貨を稼ぐなんてよっぽどの幸運か、冒険者、それか女性なら娼館くらいだよなー。でもね娼婦にはなる気ありませんからあしからず。

 それと庶民でもないんだよなー。今のオレってさ。じつは魔王討伐の功績で国から『准二等勲爵士』の称号は頂いているのですよ。えっへん!


 これは偉さで言うと『国王』の次の『貴族』階級の下の『騎士』の更に下の『勲爵士(くんしゃくし)』に当てはまります。この『勲爵士』は国の仕事に就くともらえる位なんですけど、これにも位階がありまして『正一等』から『准八等』まであるんです。

 平民が民間ではなく国家の仕事をやって人生を送れば『正五等』辺りが到達点になるんだと思います。ですから『正五等』くらいまで来た平民はかなりの重職にはなっているんです。

 ちなみに『准三等』以上の『勲爵士』になると騎乗の権利を得たり、王国主催のパーティーにも参加が可能になったりと特典が色々付きます。


 オレはその中の『准二等勲爵士』に平民からいきなり上がったのですから凄い事なんですけど、これは所謂勲章みたいな名誉職でありまして実質的な何か職が提示されるわけじゃあないんです。まあ、国から銀貨五枚程の月給は出ますし、身分証明カードの位のところに『准二等勲爵士』なんて表示されていればほとんどの平民さんはオレには頭が上がらないんですけどね。


 そしてここでも色々とありまして、他のメンバーは『正一等』や『准一等』を頂いていたのに、オレだけがなぜか『准二等』……。この違いはなんなんだっと!?

 そりゃあ、勇者が『男爵』、シャーリン様が『騎士爵』。それにエルセリアさんが『准騎士爵』を頂いたのは格が違うのですから判らんでもないのですけどほかのみんなと違ってオレだけが『正一等』や『准一等』の位階を貰えなかったのは何の意味がああるんだって話ですよ!

 誰かの横槍でも入ったんじゃないかなー。例えばシャ○リン様とかスタ○ジス侯爵家とか。







 てくてくと農場の周りを歩く。てくてくてくてく。少し早歩きをかましてローレンスさんの前へと出ます。

 やっぱりさ、ローレンスさんってロリコンだよね? もう一ヶ月も前になるけど酒場でチラチラと胸元や太ももを見てたからね。今だってオレの生足をチラチラ見てるしさ。

 だから、わざわざ茶色のヒラヒラした短めのスカートを履いてるんですからローレンスさんに見せなきゃね。


 部屋で散歩前のひと時、鏡台の前でほんの一瞬パンツが見えるくらいの難度でスカートを翻す練習を何度も繰り返したんだからね。完璧なのです。

 子供が遊ぶように歩きながら回転してみせたり、畑の間の道をスキップしながら渡り歩いたり。能動的に動いてあげましたが、ローレンスさんの反応や如何に?

 うひひ、思った通り目を大きくしてこっちを見てる様ですね。


 こんな風にわざわざ短めのスカートにしてローレンスさんの夜のおかずを増やしてあげています。オレって気が利くなー。


 この一連の行動はローレンスさんが好きとか嫌いじゃなくて、何て言うのかな……。そうそう、彼が喜んでいると元の男だったオレも喜んでいるみたいに感じてすっげー嬉しいんだよ。

 ホントそれだけなんだよ。ホントだよ。ホントにホントだよ……。




「そう言えば最近さ、また魔物が増え始めたんだそうだよ」


 しばらく何事も無くてくてくと散歩をしていると、思い出した様にローレンスさんが話しかけてきた。


「えー、そうなんですかー。魔物がですか……」


「うん。ミコちゃんも街の方へはよく行くのだから気をつけておくれよ」


「はい! 判りました! 気をつけますね!」

 

 うーむ、魔王は倒したはずなんですけどね。偶然ならいいのですが何かがあったのかもしれません。







 時間にして三十分くらいの散歩コース。長いようで短い、そんなコースなのでローレンスさんの家の玄関が見えてくるのもすぐだったりします。


「お疲れ様でした。ローレンスさん」


 玄関に到着する。

 ローレンスさんは肩で息をしているけど、それほど嫌ではないようですね。よかったよかった。


「おかげでいい運動になったよ。ミコちゃん、ありがとうな」


「うん! ま、また誘ってもいい?」


 少し上目遣いにして恐る恐る伺ってみる。

 たぶんオッケーはしてくれるとは思うんだけど、やはりこう言う質問をする時って返答を聞くのが怖かったりするんだよね。拒否られたらと先に思ってしまうんだ。

 悪い癖だってのは重々承知はしてるんだけど、どうにもならないんだよねー。


「ああ、勿論だよ。また誘ってくれ!」


「判ったー!」


 ああ、良かった。心が安堵の溜息をする。今日も拒否られずにオッケーな返答。

 それに胸を撫で下ろすオレ。




 その後もしばらく玄関前で会話を楽しむとローレンスさんは手を振って家の中へと入っていった。

 さて、オレも職探しに街まで繰り出しますかー。




 なぜこうも毎日散歩に連れ出しているかと言えば、ちょっとでも運動をさせようと思っての事なのです。だって、ローレンスさんって、農場の仕事をしてるって言っても耕したり、収穫したりの仕事じゃなくてもっぱら事務仕事だからさ。


 この一ヶ月、ローレンスさんを見てて判ったんだ。運動不足だなって。

 ちなみに耕したりする仕事は小作人達がやっています。さすがは経営側ですね。通りでメイドさんとか雇えるわけだ。この辺一帯の農園の主なんだからビッグボディ家はミニチュアサイズの領主様だったのです。

 こんな好条件のローレンスさん。それなのになんで嫁がいないの……。平成の時代と違って食うに困っている美少女だっているだろうにね。


 やはり、その腹か? その腹で自信が持てないんじゃないかな? 

 うーん、ダイエットをさせるしかないのかー。よし! じゃあまずはその腹をなんとかしましょうか!

登場人物紹介の項。

何名か付け足しておきました。


知らない間に増えてるかもしれませんw

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