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11 心変わり

 くそ!

 どうすればいいのか。オレにはもう判らない。もう判らないんだ……。

 ベッドの上でぐずぐず言いながら泣く。着の身着のままにベッドへと体を横たえたので青いデニムのスカートが捲れていた。これってパンツ丸見えだよね。でもいいんだ。どうせ誰もこの部屋には居ないし、しかも今はそんな事はどうでもいいし!


 さっき、レオさ……勇者に出会ってしまって、彼にこの街から出て行ってくれと言われたんだ。今はアレから二時間と経っていないと思う。このローレンスさん宅は街からそれほど近いわけじゃない。それでもアレから二時間は経っていないって思ったのは走って帰ってきたからです。

 お屋敷は勇者の所有物だから、オレに出て行けってのは百歩譲ってアリなんだとは思う。自分の家だから、意にそぐわない者が居ては面白く無いだろうからね。でもさ、街から出て行けとはなんなんだって思う? 街は貴方の所有物ですか? 所有物なんですか!?


 あー、もう! 勇者パーティーがなんだ! 魔王がなんだ! オレだってな、オレだって活躍したんだぞ! それをなんだ拾ってきた猫みたいに捨てやがって!

 もういいや……もう……。あーあ、オレの人生ってつまらないなぁ。


 どうでもいいなんて、そんな事を思いながら涙に濡れた枕を寝転がりながらはたいた。




 みんなと旅をするのはとっても楽しかった……これは本当の事。

 今だから判るんだけど、途中から勇者にハブられてたんだよなオレって。それでもみんなとの旅は楽しかった。だから半分は楽しかったんだよ。まあ、意地悪してくるメンバーもいたけど、魔王をやっつけるって大前提があったからそこまで深刻でもなかったしね。

 でも、倒してから一変したんだよなー。


 はあぁ……。




 ノックがする。ああ、もう夜か……。ドア越しにローレンスさんの声が聞こえてくる。


「晩御飯が出来たよ」


 はあ、億劫だけどお世話になってるし一応は答えてやるか……。


「すみませんが今日は体調が優れないのでいりません」


「そ、そうかい? 判った」


 そう言うと気配は離れていった。

 ふん。どうせローレンスさんもオレの体目当てなんだろうなー。勇者だってオレを戦力としか見てなかったし、魔王を倒したらハイそれまでよってか? くそっ! どうせどの男もオレは戦力だったり性の捌け口だったりとしかみないんだろう? もうどうでもいいや。ホントに、もうどうでも。

 イライラが募る。どうしてもイライラしてしまうんだ。まだ生理までには日にちがあるんだけどな……。







 いつの間にか寝てたみたいだ。んー。今は午前の三時か……。蛍光塗料で塗られた掛け時計の針だけが薄暗くぼんやりと見える。でもそれ以外は暗闇の世界となっているこのオレの部屋。キョロキョロと首を回して見る。今なら誰もいないよね……。誰もいないと判ると頭の中に性的な欲求が湧き出してくる。ここ最近は人様の家だし、勝手も判らないからといじるのはやめていたんだよね。

 だから……うん。久しぶりにいじって遊ぼうっと。

 たまにはね、自分の体にも快楽を与えてやらないとご褒美にならないからね。

 さあ、今日はどんなネタにしようか……。縛られて身動きできないオレが、無理やり出し入れされてる感じで行くかー!


 そう思うと、おもむろにベッドの中で下着をずらして摘んだり擦ったりをはじめるのだった。







 朝。ノックの音で目を覚ました。

 夜の間中、たくさん遊んだので疲れ果てて二度寝をしたようです。ノックの音が聞こえるまで前後不覚で眠っていましたから。


「朝ごはんが出来たよ?」


 優しい声でローレンスさんが扉越しに言葉をかけてくる。


「……はい。今行きます」


 昨日のイライラはだいぶ引いたみたいです。

 一晩寝たし、じっくりいじって遊んだからかなー?


 あーあ、ローレンスさんと顔を合わせづらいなぁ。昨日はあんな風に考えてしまったけど、ローレンスさんは弱いくせに自分よりも強そうな奴らに挑むくらいには正義の人だし、勇者とは違って心はカッコイイんだよね。

 勇者なんて顔と能力だけじゃん。あんな人にどうして憧れてたのか今となってはわけが判らない。よく考えてみれば好きになる要素皆無なのにね。

 ローレンスさんの方がよっぽどマシだよ。って言うか比べらんない。ローレンスさんに失礼だ!


 ただ、難を言えばあのメタボ体型なんだよなー。どうにかならんものか……。

 ん? この思考はちょっとおかしいぞ……! ローレンスさんが痩せたらなんだって言うんだ? まるでオレがローレンスさんを狙っているようじゃないか!!

 待て待て、考えを整理しなくては。


 と、とにかく今はお腹も空いたし朝ごはんを食べようか。




 今日の朝ごはんはパンとハムエッグ、それにサラダです。まあ、朝の定番だよね。ハムを二枚入れた目玉焼きはたぶんメイドさんがつくったのかな?

 むしゃむしゃと食べながらそんな事を考える。考えると言えば、目の前でもりもりと朝からたくさんのおかずを食べているローレンスさんの事。

 えっ? 勇者の事は考えないのかって? ああ、いましたねー、そんな人が。


 まあ、オレの体目当てってのはやっぱりあるんじゃないかなー? とは思う。男の人だもん。逆に無い方がおかしい。でも、ローレンスさんはそれだけじゃなくてオレの事を想ってくれている部分もあるんじゃないのかなー?

 だって酒場で多人数相手に負ける戦いをするバカは普通はいないよ? 一応は下心だってあったと思うんだ。助けてあげたらエロい事が待っているかもと思っていたかもしれないし、女子に惚れられるかもしれないとかね。

 けど、その勇気は賞賛されてしかるべきだよね。


 だからさ、今は普通にしてるけど心の中じゃ女体を触ったりいじったり、色んな事をしたいんだろうなーって思う。オレも前世はそうだったもの。おくびにも出さなかったけどね。


 たぶん毎晩、ひとりでやってるんだろうなー。そう思うと目の前のローレンスさんを見る。おかずはなんだ? やっぱりオレか? オレだったとしたら、たまにはパンチラでも拝ませてやろうかな?


 オレの視線にきょとんとしている目の前のローレンスさん。心中、お察しいたします。



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