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第5話 魔王は街に来たようで

「あー、疲れたな。」


 村を出てあれから3日。僕は無事、タールシェル市に辿り着いたよ。道順はこの前の捜索で得た情報を参考にルートを選出、寄り道せず真っ直ぐに来た。途中、魔物が襲ってくるかなと思ったんだけど、どうやら魔剣〈日陰ヒカゲ〉の力かどうか知らないけどそもそも少なかった魔物がぴたりととまってしまった。試し斬りもしたかったのだけれど。


 それはともかく、来てみたタールシェル市は大きかった。人々も比較的温暖な気候に合わせた服装で生活しているようだね。商業都市らしいこの街には色んな人種や様々な品物の数々を見れるのでウィンドウショッピングでも十分楽しめそうだ。


 街に入る審査などもあり、時刻は夕方になってしまっているので店の大半が閉まり、人気が少なくなりつつあるのが残念だけど、仕方ない。今日はもう休もうかな。宿を探そうと中央通りをとぼとぼ歩いてみる。


「って、金を持っていないね。」


 そういえば、まだ僕が目覚めてから物を売買する所を見ていない気がする。『異次元格納庫メートゥラーシュ』の中を急いで確認してみるとある程度まとまった数の金銭があったけど使えるかどうか。急いでそこら辺を確認してみないとね。僕は中央通りの道をさらに進めた。大体の店が閉まるなか、こちらの品物も売ってくれる一見さんお断りでは無い場所。


「冒険者ギルドにいってみようかな。」


 僕は歩みを進めた。


 そこはこの夕暮れ時のなかで一番の活気を持っていると言っても過言ではないと思う。中央通りの抜けた先、つまり街の中心部にこの建物があった。


「すごいなあ。」


 固い大理石で大半を占められたこの建物の前で僕は息を呑んだ。っと、圧倒してはいられない。とにかく前に進もうか。僕は開きっぱなしの大男が飛び上がっても大丈夫な大きさの扉をくぐる。念の為に剣をいつでも抜けるように構えてっと。


「臭さっ。」


 鼻に抜ける。この濃厚な汗と酒の臭い。鼻が曲がって折れそうだ。野郎が約9割を超えるこの空間は仕方ないことだけれども、慣れてない内はやっぱりキツいものだね。


 そこは大きな大広間だった。何卓も並べられた円形テーブルがあり、奥の方には沢山の紙があちらこちらに貼られている。もちろん人も沢山いる。大体は酒を呑んでいて、笑い声やら酒の入った木のジョッキが鳴る音がテーブルから聞こえているが今は興味はないので無視。奥の方の紙の数々にも目を通しておきたいが、そんな事より僕はこっちに興味があるんだよね。


「すいません。素材の売買ってここでできますか。」


「はい。こちら、冒険者ギルドタールシェル市部所属のメルーです。素材の売買はできますよ。どのような魔物ですか。」


 僕は一番奥に埋まるような形である受付に向かい真ん中にいる女の子に話しかけた。決して隣の受付の男より女の子がいいとかそんなのではない。


「えーと、蜥蜴の奴と兎の奴で合わせて2匹かな。」


 手頃に〈死真珠蜥蜴パールデッド・リザード〉と僕が蹴飛ばして殺した角が付いている小振りな兎を言ってみる。どちらも僕が殺したものでブブボ村を出てから改めて拾い直したものだ。兎は他の獣か何かに喰われて損傷が激しかったので角だけを引き抜いたものだけどね。


「分かりました。では私が『鑑定ジャッジ』のスキル持ちなので素材をお出し下さい。判別しますので。」


「わかりました。」


 僕は背中に背負っている雑嚢を開く、中を探す振りをして、『異次元格納庫』を発動。あらかじめ剥いでおいた状態の良い蜥蜴の鱗と兎を取り出す。常日頃からこういうのを持ち歩くのはかさばるし面倒なんだよね。一応、雑嚢の厚みでスキルを使っているとバレないようにダミーの服なんかで雑嚢のかさましをしているけどね。僕は長さが20センチ程の角と一辺が大体60センチくらいの鱗を3枚をカウンターに出してみる。鱗はストックがかなりあるのでそれなりの値段だったらまとめて買ってもらおうと思ってたりする。


「蜥蜴の鱗が3枚に兎の角をば。」


「確かに受け取りました。1つは〈一角兎ユニコビットの角〉ですね。残りはええっと、〈死真珠蜥蜴パールデット・リザード大鱗メイル〉って。……こんなに状態の良い貴重なものを売ってもよろしいのですか。」


 何故かギルド職員の目が驚きに満ちている。美人とまではいかないけど化粧の薄い素朴な顔の素の表情が見れたので個人的には良かった。けど、そんな思考はしてられない。昔はそうでもなかったけど、やっぱり価値が変わったのかな。昔はポピュラーで市場に並ばない日はあまりないとか言われてたのにね。


「あの、どちらでこの鱗を入手されましたか。出来ればでいいのですが。」


 おや、予想以上に口調が真剣だぞ。これは僕が〈死真珠蜥蜴〉を殺したこととかを伏せとかないと後々面倒なことになりそうだね。適当に話を変えておこう。


「いや、このタールシェル市に来るときに森があってその時に〈死真珠蜥蜴〉の死骸を見つけて、生憎手持ちが多く、鱗のほんの数枚しか持ち帰られなかったのですよ。」


 こんなものでいいかな。これでこの街では鱗とか蜥蜴の刃なんかが売れなくなったね。別の街で売るか他の使い道を考えないとね。


「森というとタールシェル市周辺の森のことですよね。数年前からそのC級の魔物が出没していたのは調査済みなのですが、まさか死んでいたとは。因みにどこら辺にその死骸が、ギルドが回収したいのですが。」


 更に食いついてきたよ、流石にこれ以上はボロが出そうだ。ごまかして話の方向を変えとこうか。


「ええっと、僕が通った時には大分劣化してましたからね、もうないんじゃないんですかね。後、少し気になったのですが、C級とかいうのはなんですかね。」


「そうですか、残念です。それで質問の答えですが、それは等級と呼ばれていたものでして。」


 かなり残念そうな顔をしているけど僕の質問には答えてくれた。


 昔から魔物がいて人間に悪さをしてきたのだが、如何せん、人間は非力だ。そこでそれを何とかする目的で冒険者ギルドが生まれた。


 これは僕も知っている。当時はギルド第一号を見物しにこっそりこっちに来たものだ。


 それで冒険者は魔物を何とかしようとしているうちに基準を作ろうとした。理由は単純被害を減らすためだ。相手の事を知らないと自分がやられる可能性が一気に上がるからね。


 それで出来たのがこの魔物等級だ。冒険者が何人辺りでなんとか倒せるかを基準に作ったそうだ。A~Gまでの等級。これのお陰で冒険者が相手を選ぶようになったので生存率が上がったらしい。


 ここまで聞いて、僕は確認をしてみる。


「それで〈死真珠蜥蜴〉の等級Cはどのくらいのレベルなんですか。」


「はい。この魔物はC-。大体、ミスリルの冒険者が50人程度、集まれば対処できるとされています。もちろん、それなりの被害を出すという前提ですが。」


 危なかった。それを知らずに言ってたら確実に笑い物か人外なのがバレるところだった。僕の背中を中心に汗が出てきた。


 因みにミスリルというのは魔力を通しやすいという特性を持った希少金属で冒険者であればそれを扱えるのならば一流ともいわれる程だ。その希少価値の順に冒険者は最下位の銅から最高位のオリハルコンまで存在している。その中でミスリルは上から四段目とかなりのレベルを持っているとされているそうだ。


「それで、売却額なのですが角が銀貨5枚、鱗が3枚で金貨3枚になります。」


「はい。確かに。」


 貰った貨幣をあらかじめ作っておいた布袋に入れておく。これは略奪した布を簡単に縫ったものだ。意外としっかり出来たのでそれなりに気に入っている。

 貰った貨幣を確認する。貰ったのは直径15センチ程の合金で出来たのが3枚と銀で作られた一回り小さい10センチくらいの銀貨が5枚だった。他にも別の種類の貨幣があるかも知れないけど、後日調べるとして。今日はこれぐらいかな。


「それじゃあ、僕はこれでまた明日来るかも知れませんのでその時はよろしくです。」


「そうですか。またのお越しを。」


 事務的なギルド職員の別れの挨拶を聞きつつ、ギルドを出ようとした僕。途中、通り道に足を仕掛けて僕を転ばそうとした奴がいたけど、足を踏み抜くことで対処。周りからみれば大の大人が酒に酔い潰れたように見えたと思う。それを数回こなして外に出た。


「さてと。」


 僕は外に出ると誰かに見られている気がするので人気の少なそうな裏路地に直行。その向こう側に用があるわけじゃないんだけどね。


「よいしょっと。」


 狭い路地からすれ違った男相手に飛膝蹴り。人がやっと通れる程度のスペースには当然避けれる場所などなくクリーンヒット。相手は沈黙。殺しちゃあいないので気絶しただけだね。鼻が折れたと思うけど。一応、言っておくけど僕は被害者だ。


「ストレス解消とでもいこうかな。」


 僕の鞄の膨らみと貨幣の僅かな金属音でスリが僕から鞄を強奪しようとしているね。ギルドに居たグルがリークしたのか数はそれなり、二桁は確実かな。明らかに子供と言われても差し支えのない僕の体躯を見ての犯行と読んでみる。それにしても数の暴力が過ぎるのではと思うけど、冒険者ギルドから出てきた人間なので多少は腕が立つという判断だろう。その予想はあたりだけど、残念かな。僕を相手には数が足りない。


 少し数が少ないけど好都合だ。僕は街にしばらくは居るつもりなので障害はさっくり取り除こうかな。肩慣らしといこうか。僕は腕を回す。


 精々死なないように頑張ってよ。僕は完全に夜の空気になった路地で顔をにたりと歪めた。ちょっぴり地獄を体感しちゃってよ。

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