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第3話 魔王は人助けをもう少し続けるようで

9/22 表現の微調整、表記のおかしかった所を修正しました。

 このまま逃げれば万事解決なんじゃ、と思ったけど却下。剣を借りパクしたままとかあり得ないし、

僕は再び、考える。


 現在、自分のお節介の所為でなぜか、僕が魔王じゃないにしても人外なのがバレそうなので、必死に考えている状態。やっぱり、悩まず素手で打撲になりながらも倒して、逃げれば良かったかな。


 と、そろそろ沈黙もできないので取り敢えず2人に話しかけてみようか。


「大丈夫でしたか。」


 僕の問いかけに2人の内の男の方が答える。


「ええ、妻の治療のお陰で命に別状はなかったのですが、御覧の通り手首を奴に持ってかれましてね。」


 彼はシドラと名乗った。妻の方はケーナと言うらしい。彼が言うように2人は夫婦らしい。惜しい。未婚だったらちょっとケーナの方を口説いてみたい、と思っていた。結構好みのタイプだからね。そんなどうでもいいことはひとまず置いといて。


 シドラの右手首は確かに無くなっていて、そこには木の葉を加工したらしき包帯でぐるぐる巻きにしていた。結構、大丈夫そうだ。余程、ケーナの治療が良かったらしい。


「どうしてこんな夜に出歩いたりしてたのかな。」


 そこが疑問になっていた所だ。触れてなかったが、今は夜だがその空は雲で覆われていて、星明かりは全くない。暗いのだ。『暗視』を持つ僕とは違い、人間の彼等はそんなものはないと思うのだが。


「私たちは、息子の為に〈クロカシ草〉を探さなければいけないです。」


 彼は自分たちの息子は〈魔力凍結病〉に患っているらしい。徐々に体の魔力ー血液の中に含まれるモノ。全ての生物に備わっていて魔法を発動するなどに使われるーが硬化していき、体が鈍くなっていく最終的に呼吸がままならなくなり死に至る難病だったはずだ。〈クロカシ草〉。確かその土地の中でも最も栄養素の高い場所でのみ生えている場所が限定される草だ。魔力回復ポーションを高品質にするために必要だったはずだ。


「しかし、なぜこんな時間に外はほぼ見えないのでは。」


「そうなのですが、息子の容態が急変しまして、一刻も早く、〈クロカシ草〉を探さなければ命が危ないんです。それのなのにこうして怪我をしてしまって。」


 息子の危機であれば親は命をも賭けるそうだけど、危険だ。いくら何でもその怪我をしている状態で長い間、暗く魔物がいるのは命を投げ捨ててしまうと同じことだ。待てよこの流れは、


「失礼なのは承知です。どうか〈死真珠蜥蜴パールデッド・リザード〉を倒したあなたの力を見込んでたすけてほしいのです。」


 来ちゃったよ、更なるお節介。正直さっきの流れから来ると思うと予感はしてたけどね。助けようかなけどメリットが僕に全くないしなー。ちょっとは何かないとやってけないよ。


「あの、御礼もしますのでどうか息子を助けてはくれないでしょうか。」


「やります。」


 ケーナの提案に二つ返事で答えた。やっぱり女性の助けには人妻だろうと応えないとね。


 効率を上げる為に別行動を取ることにした。僕と夫妻、2チームに必然的になった。集合場所がないと困るので決める事にした。結果、決まったのは彼等が住んでいる村で見つかる、見つからないにしても1時間後に落ち合う事にした。念の為、僕はシドラの剣を持っておくことにした。雑嚢も背負い直す。


 彼等は怪我、特にシドラの怪我が深刻なのでそんなに動けないので長時間は無理と僕が判断したからだ。松明などの照明を持っているにしてもやはりこの暗さでは無理があるだろう。


 というわけで僕が探さなきゃほぼ彼らの息子の命は危ないということになる流石にそれは重大なので、僕も本腰をいれよう。


 早速、2人と離れたところで『脳内地図クリエーション』と『我が見るのは真実のみ(マーベラアイズ)』を重複発動する。まずは『脳内地図』から。


「すべてを知れ 『脳内地図クリエーション』。」


 僕がさっき使ったように、一部のスキルにはこういう風に〈起動言語アクセスワード〉を持つモノがある。これは文字通り、スキルを発動させるために言わなければならない。そもそも、そのスキルの中には〈起動言語〉を必要としない常時発動型パッシブ能動的発動型アクティブがあり、僕のスキルの大半はどちらとも有する、複合型ユニークなのだが、その続きは次の機会にしよう。


「見通せよ『我が見るのは真実のみ(マーベラアイズ)』」


 続けて、もうひとつのスキルも発動する。これで準備オーケーだ。


 『脳内地図』の効果で脳内に広がるマップを更新する。たまにこうしないと何時の間にか出来てた村とか地形に反応できないからね。案の定、更新の結果、幾つかの村と山が消え、新たに村が増えていた。ここから南西2キロにブブボ村という僕から一番近い村を発見する。おそらくこれが彼等の村だろう。そこにマーキングをつけておく。


 そして『我が見るのは真実のみ』は僕の意志で自分の眼に特殊な効果を持たせることができるので元々発動させていた『暗視』の他に、木々を透過させ見晴らしを良くする『透視』、そのまんま望遠鏡と双眼鏡を足したような効果をもたらす『視野拡大延長』、頭蓋骨を透過させ、さらに眼球の制限を解除する『視野拡張』を発動する。これで全ての条件が揃った。


 目を閉じ、意識を集中させる。全ての物事、事象をその目で確認する。透視することで得た視野を最大限活用し、情報を得る。更に『脳内地図』から得た情報も活用し、三次元に情報を得る。ここからだ。


「ぐぅっ。」


 更に空気中の魔力を観測できる『魔力視』を使う。流石に完全復活していない僕には負担が大きい。膝を附いてしまった。身体が捻れるような感覚がする。だが、これで全て終了だ。


 人の命、ましてや会ってもない子供のために、なんでこんなことをするのかは分からない。僕も長い間生きていた性で考えが甘くなったのかも知れない。


 けどそれでもいい。僕はもう変われないのだから周りを少しでも変えていこう。


「見つけた。」


 僅かながらに発生していて尚且つ魔物とも違う魔力を探知した。魔力回復ポーションにも使われる〈クロカシ草〉のことだ。魔力を自然発生させていてもおかしくない。1番近いのでも5キロ程あるが森の構造も把握して、目的地も分かっている。魔物も僕の敵じゃない。


「急ごう。」


 僕は目的地に向けて走り出した。




 トンボ型の魔物を見つけた。邪魔だったので斬り伏せる。木が進路上にあったので蹴りで叩き折る。今度は兎型、足元に来たので蹴飛ばした。僕が通った所は既に森とは言えない。血が混ざりあった匂いと抉れたような悲惨な状況はどんなモンスターが通ったのかは想像は容易いだろう。怪物モンスターは僕だ。僕が道を造る。


 「よし、これかな。」


 恐らくこれが〈クロカシ草〉だろう。少なくとも僕の記憶ではそうだ。一刻も早く、戻らないともうすぐ約束の時間だ。僕は更に足の回転を上げた。


 なんとかたどり着いた。息が上がっている。息を整えないと。僕はブブボ村に到着していた。規模はそれなり、住民が家の戸数的に200から300人ってところかな。特筆するところはない。敢えていうなら珍しく鍛冶屋があるってところかな。僕は村の入り口に居る2人に話しかける。


「どうでしたか。」


「私たちは残念ながら、あなたはどうでしたか。」


 やはり、無理だったようだ。僕は雑嚢の中から布で包んだ〈クロカシ草〉をシドラに渡した。因みにこの布は結局使わなかった粉砕した剣の鞘代わりだった布だ。


「これで合ってますか。」


「これは、まさしくそうです。本に乗っていた〈クロカシ草〉その通りです。どうやって見つけたのですか。」


受け取ったシドラが中身を確認して驚きつつ訊いてきた。


「たまたまだよ。僕はこの辺りの地理に詳しいのでね。」


 嘘は言っていない。但し1時間と少し前まで、君たちの方が圧倒的に知っていたのは確かだけど。スキルって恐ろしいね。


「これで息子の命が助かります。本当に何度、礼をしても足りないくらいです。」


「いや、いいんだよ。僕は人助けをするのが趣味でして。」


 これは嘘だ。半日前に大量殺人をした僕が言うセリフじゃないね。それはともかく人を助けたのは事実だ。全く魔王らしくないね。


「そういえば、あなたの名前を訊いていませんでした。私たち家族の命の恩人だというのに。」


「えーと。僕の名前は。」


 と、ここで思考が停止する。どうするかな。どれくらい眠っていて時間が経ったか分からないし、本当の名前だすとどんな反応されるか分からないし偽名にしようかな。よし決めた。


「クロだよ。」


 僕の髪と眼の色。僕はそう名乗った。安直だが、なかなか味がある名前だと思う。ついでに〈クロカシ草〉からも着想を得てみた。


「クロさんですか。今回は本当にありがとうございます。」


 夫婦揃って頭を下げた。たまにはこんなことをするのも悪くない。彼らはすぐにこの〈クロカシ草〉を使って息子の病気の特効薬を作るらしい。硬化した魔力を薬で和らげるらしい。


 時間ももう深夜なのだが2人で徹夜で薬を作るらしい。僕に手助けできることはないかと聞いてみたんだけど、助けられてばっかりなのでこれぐらいは自分たちに任せて僕はもう休んでいいと言われた。正直、僕は疲れが溜まっているのでこれ幸いとブブボ村の村長から許可を貰ったらしい木造住宅に入らせて貰った。


 簡単な麻で出来た枕と布なのだけど、借りた剣と雑嚢を放り投げ、寝転がった僕にはすぐに眠気がやってきた。本当に疲れた。彼らの息子のことは気になるが自分のことも大切だ。明日、聞いてみよう。僕はそれだけ考えると意識を手放した。


 

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