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プロローグ1

目を開くと白い天井が目に入る。はて、と思う。場所に見覚えはない。森の中で眠気に勝てず仕方なく仮眠をとっていたと筈だが。


 寝起きで呆けた頭はうまく回ってくれずしかたがなし現状を把握する事にする。周りを見渡すと少女と目が合った。驚いたようで少女は部屋から飛び出していく。


 「ふむ……」


 人も居るようだし見知らぬ所で目を覚ましたのだ、意図はともかく運びだされたのだろうと青年が思惑にふけっているとやがて一人の女性が部屋へ入ってくる。


 「起きたようですね。体は大丈夫ですか?食事をもってきたので食べてください。」


 「ああ、大丈夫だ。ここは?それと君は?」


 「ここは孤児院ですよ。私はレイラ森の中であなたを見つけてここまで運びこみました。何をしても目を開けたなかったので生き倒れだと思ってここまで運びましたよ放っておけば魔物に襲われていたと思いますよ。」


 「そうか…ありがとう。おかげで助かったみたいだ。」


 実際の所そうそう死ぬことはないので割と無頓着になっていたが森の中火も焚かず居れば危険この上ない行為だろう。


 「それであなたは?どうしてあんな所に?」


 「すまない、俺はデュー、姓はない、旅人のようなものだよ。疲れがたまっていたのか休んでいたつもりだったんだけどね。」


 そういって長い黒髪を後ろにかき分けがしがしと頭を掻く。鎖骨当たりまで伸びた後ろ髪に眺めの前髪、貴族でもなければ短髪が当たり前だが不思議な印象も相まって似合ってるといえるだろう。


 「いろいろと突っ込む所満載ですけど…旅人ということは冒険者とは違うんですか?神子とはいえ武器も持っていないようですけど。」


 気付けばいつのまにかコートは脱がされていたようだ。今はシャツとズボンになりシャツお袖の肩口から神子の印である痣が少し見え隠れしている。


 神子とは人の身に神や獣神、あるいわ動物の魂が人として生まれ変わった者といわれている。とはいえ動物の神子などは珍しい者でもなく割とどこにでもみられる。神子として生まれた者は生まれつき体の一部に痣をもって生まれ、デューの場合は左型に痣がある。


 「あ、何の神子かは確認していないので安心してくださいね、さすがに勝手に見るのは失礼かと思いましたから。」


 「いや、構わない、それに防具はちゃんと身につけてるだろ?このガントレットとか。」


 デューは武器は持っていなかったが腕に銀色のガントレットを両腕につけている、不思議な文様がが描かれ魔石が埋まったガントレットは防具というよりも美術品のようにレイラには見える。


 「とにかく武器も持たずに一人旅なんて無謀ですよ。とりあえず今日はここで休んでください。しばらくは居てもいいですけど良ければ子供達の相手でもしてあげてください」

 「わかった、ありがとう。恩に着るよ」


 「ちゃんと返してくださいね」


 笑顔でそういってレイラは部屋を出て行く。


 


 食事を摂り部屋を出たデューは外へと出る。比較的おおきな村のようだが子供達が笑っている所を見るとそれなりに幸せのある良い雰囲気の村のようだ。


 周りを見ていると目が覚めた時にいた少女と赤い髪の少年が近づいて声をかけてくる。

 「真っ黒なお兄ちゃん目が覚めたんだね。」


 赤い髪の少年はそういって屈託なく笑う。金髪の少女の方は赤い髪の少年の後ろに隠れてこちらを伺っている。見ているとほほえましくなる光景だ。


 「ああ、デューだ、よろしくな坊主。」


 少年が真っ黒と言ったのも無理はない、デューは黒髪黒目、黒い服。銀のガントレットを除けば黒一色だ。


 「坊主じゃない、僕はエルクだよこっちはミーアだよ」


 「そうかエルクにミーア、よろしくな。」


 少年達と話してるとこの孤児院の事がおおよそ分かって来る。孤児院はレイラの他数人で切り盛りしているが食事などは十分な量は賄えていないようで子供達も皆痩せている。レイラも細身だったし食料事情はあまりよくないようで恩返しは食料を持ってくる事が良いかと考えるデューであった。


 「エルク、レイラさんに散策に出てくると伝えてくれ、晩には戻ると」


 「うん、分かった。伝えておくね。」


 そう言って孤児院を出て森へと歩みを進めるデュー。子供の扱いは分からないので好奇の目から早めに立ち去りたかったのもあった。





 森の奥深くにまで入ったデューはふと足を止め上を見上げる。目の前には長身のデューよりも倍ほどは高い、いや大きいと形容すべき生き物がデューを見下ろしている。


 ワイルドボアと呼ばれるその魔物は人の身を超える大きく超え二.五メルトル程の巨体で牙を持ち、冒険者と呼ばれる戦いに身を投じるものが何人も集まって狩る魔物であり巨大な牙でもって人を蹂躙する危険な魔物である。


 たった一人で目の前に立つ男を見て魔物は思う。獲物だと。たった一人目の前に立つ男など魔物にとっては獲物でしかない。過去何人もの人間を返り討ちにしてきた魔物からしてみれば目の前の細身の男にそう思うのは無理からぬ事。


 命を刈り取ろうと目の前の男へと突進を開始するが魔物は気が動転する思いをする事となる。目の前の男は木でさえ軽くなぎ倒すその突進を右手を魔物へと伸ばし牙をつかみ踏ん張る。踏ん張っている足が地面にめり込み突進の勢いのまま地面が抉れているが男怪我をした様子はない。


 デューは魔物の突進を片手で止めた後蹴りを放つ、魔物の巨体が空中へと吹き飛び直後デューはつぶやく。


 「換装:双刀」


 ガントレットの宝石が光り次の瞬間彼は手に二本の刀を持っていた。と、同時魔物はデューを見失う。どこへ行ったかと考え間もなく空中にいる魔物は重力に逆らえず落ちていく、空中で回るように回転する景色の中首から下だけとなった魔物自身の体が目にはいる。それが何が起こったか分からないまま首を切り離された魔物の最後の景色だった。


 

 レイラが夕食の支度をし始めた頃エルクが慌てた様子でレイラの元へときて告げる。


 「デューが戻ってきたんだけど…ちょっときて!」


 何やら焦った様子で告げるエルクにレイラは何かあったかと思い外へ出ると何とも奇妙としか言いようがない光景を目にする。


 孤児院の入り口に立つデューを見ると彼そのものには異常はない、異常なのは彼が担いでいるものとの違和感、デュー自身よりも大きな魔物、ワイルドボアを肩に担ぎ平然と立っている。彼自身と対比しても明らかに大きなその魔物を担ぐ姿は驚きを通り越して奇妙過ぎた。周りを見渡せばレイラのみならず子供達は孤児院の先生も呆けた顔をしている。


 その光景がどれだけ奇妙な事か気づいていないデューは笑顔を向けてレイラに向かって言う。


 「食べ物を獲ってきたよ。」

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