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軍神様が見てる

 ドキドキの初投稿、痛くしないでね(笑)


 苦しい、死ぬ死ぬ……死んでしまう。


 いつもどおりに早めの夕食を済ませ、自分の寝室にやってきたところまでは平和な日常

二人きりになった瞬間、側付きのメイドが急に襲いかかってきたことは予想もしなかった大惨事。


 側付きのメイドに両手で首を絞められ、宙に吊り下げられた状態のボクは、ただじたじたともがくことしかできない。

 意識が朦朧とし、これまで過ごしてきた人生が、まるで走馬燈のように脳裏をよぎる。間近に迫り来る死の予感にひしひしと恐怖が押し寄せてくるが、助けを呼ぼうにも首を絞められたままでは、声を上げることすら出来ない。


 絶望の中、ベッドの脇においてあった花瓶が倒れ、不意に大きな音を立てた。


 ガシャーン


 本能的に振り回していた手足のどこかにあたったのだろう、


「坊ちゃまっ!!」


 部屋の扉が開け放たれ、よく知った誰かの声が屋敷の中に響き渡る。助かった……そう思った瞬間、ボクの意識は途絶えた。







 そして、目覚めた朝、見慣れたはずの自分の寝室になぜか奇妙な感覚を覚え、その違和感に混乱するボクがいた。


 この寝室は無駄に広い、トーキョーで借りていた部屋の3倍はあるだろう、もはやうろ覚えであるが田舎にあった実家の居間とほぼ同じぐらいの広さだろうか?

 何故、ボクはこんな所にいる?いや、この屋敷がボクの家であることは間違いない、ボクは生まれたときから5歳になったいままでの間、ずっとこの家に住んでいるのだ。


 なのに!何故、トーキョーという街で8年間もあくせく働いていた記憶がある?何故、寂れた田舎の港町で過ごした少年時代の記憶が有る!?


 ベッドで悶々としているうちに気分が落ち着き、ボクがなぜ変な記憶を持っているのか、その理由についてだんだんと思い出してきた。


□□□□■■■■□□□□

 ある夏の日の早朝、ジュクと呼ばれる街の西に位置するオフィス街で、ボクはコンビニの袋を抱えて会社に向かい、ふらふらと横断歩道を渡っていた。

 会社に泊まり込んで早3日、酩酊しているといってもよい徹夜明けの頭では、交差点で減速もせずに突っ込んできた暴走トラックに反応する事は出来ない。ガードレールを越えて道の反対側の歩道まではね飛ばされたボクは、享年26歳にしてあっけのない人生の終わりを迎えた。






 ボクは大通りの上空にわふわと浮かび、しばらくの亜間、呆然と自分の死体を見下ろすことしか出来なかった。頭が真っ白で、どうしたらよいのかさっぱり分からない。そんなボクの背後から、誰かが声をかけた。


 「受け入れたまえ、君はたった今死んだ。」


 振り向いたボクの前に立っていたのは、濃紺の軍服に身を包み、軍刀を携えた白髪の老人だった。白い口髭を蓄えた、そのどこかで見たことのあるようないかめしい顔は、ボクの知る軍神様のうちの一柱だ。


 「ええ、そうみたいですね・・・軍神様?それとも提督閣下とお呼びした方がいいでしょうか?ボクはこれからどうなるんでしょう?」


 「どちらの呼び方も、間違っておらんが神という呼ばれ方はあまり好きでは無い。単に提督と呼ぶが良い。君がどうなるかはこれから説明するが、そのまえに一つ聞きたい、何故君は、儂が神だと思った?」


 ボクの問いかけに軍神様は不思議そうな顔をする。


 「えっと、人間が死んだ場合は、普通ご先祖様の霊とか、天使とか、神様が案内をしてくれるものでは無いのですか?提督のお姿が、ボクが知っている神様の一柱のように思えたので、これは神様のお迎えがきたものだと思ったんです。」


 ボクがおそるおそる答えると、提督はかすかに頷いて言った。


 「君の考えは概ね間違っておらん。より正確に言うなら、彼岸から此岸へと死者を迎えに来るのは、生前その者が信仰していた神、もしくは最も縁故の深い神という事になる。儂の受け持ちは基本的に海上自衛隊、もしくは海上保安庁職員なのだが、儂にはもう一つ別の受け持ちがあってな。つまるところ、その対象は博打にうつつを抜かした大馬鹿者達だ。そしてそんな儂が、何故単なるサラリーマンの君を迎えにきたのか……どうだ、思い当たる節はあるか?」


 幽霊だから冷や汗は出ないが、なにやら不穏な言葉にボクの背筋を悪寒が走る。


「ボクは博打にはあまり縁がありませんが、サイコロ遊びというくくりで言えば……身に覚えがないと言えば嘘になりますね。」


 神様を相手に嘘をついても意味は無いだろう。なるべく正直に答えることにする。


 「そうか、では身に覚えがあるという君には、このまま異界に転生してもらうことにしようか?」


は?何故そう繋がるのだろう?ボクには、その理屈が分からない。


 「まるで理解できないという顔だな。説明してやろう、儂は兵士を目隠しで戦場に送り出すようなマネは好かん。実を言うと儂は、ある世界の創造の女神に大きな借りがあってな。その借りというのは、大東亜戦争中、沖縄と京都、そして国体のおわす帝都に墜ちるはずだった3発の原爆を、向こうの世界に肩代わりしてもらったというものでな。彼女の世界に対し、儂は毎年一定数の魂を譲渡せねばならんのだ。これは当然、儂の手持ちとなった空きの魂から捻出することになる。」


 提督は、そこで不自然に言葉を切ると、何かを求めるようにボクを見ている。どうやらボクの方から、何か言わないといけないみたいだ。


……その雰囲気で何となく分かった。多分、抵抗しても無駄だろう。ボクはあきらめとともに、提督が待っているであろう言葉を口にする。


 「分かりました。同意します。行きます。博打にうつつを抜かした大馬鹿者で、真性のキモヲタブサメンの私は、まじめな兵隊さんになりかわり、お国のために逝ってきます。」


 提督の目的が同意の言葉を取り付ける事に有ると気づいたとき、ヤケクソな気分におちいったボクを誰が責められるだろう?


 「そこまで自分を貶めなくとも良い。魂の譲渡といえば仰々しく聞こえるかもしれぬが、それは儂と女神の間での話に過ぎん。転生と行っても特段、使命というものもなければ、罰といえるようなものも無い。当事者である君にとっては、単に異界の住人として生まれ変わり、そこで普通に一生を過ごすことになるだけだ。」


 そうは言われても、見知らぬ異界に行けと言われ、わき起こる不安はぬぐえない。ボクはただ


 「そうですか」


 と一言呟くことしかできなかった。


 「そう心配するな。君があっさりと転生に同意して、儂にあまり手間をかけさせなかった褒美として、若干良い家柄の家庭に生まれることが出来るよう、少しばかりの運を与えてやろう。もっとも、生まれ変わった瞬間にまったく意味を成さなくなる類いの運だがね。それでは、そろそろ君を向こうの世界へ送るぞ。」


 ボクの周りを白い光が包み始めたとき、提督は思い出したように敬礼の仕草をとって、最後の言葉を投げかけてくれた。


「そうそう、肝心な一言を忘れるところだった。転生者よ、Godspeed」


□□□□■■■■□□□□


 かなりうろ覚えなのだが、確か、神様とこんなやりとりがあったように思う。

 つまり、ボクが思い出したニッポンでの生活の記憶というものは、前世のボクが体験した記憶に他ならなかったのである。

 軍神様の描写について不愉快に感じた方がいたらごめんなさい。当方けして悪意は有りません。

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