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一人ぼっちの浜辺



タイトル

『ほおずきが咲く頃に』

本当は、咲くでは無くて、実る。もしくは熟す。だと思いますが、どうしても『咲く』と書きたかったのです。


疑問に思われても、スルーして頂けると幸いです。




 ドォドォドォドォドォォォッーーーー ザッブーン  ザザザァァァァーーーー


 空には真ん丸の月が浮かんでいる。








 気が付くと夜の浜辺にいた。辺りはガレキや流木で埋め尽くされていて、まるで台風が去った後のようだった。少女の白い素足は、一歩足を踏み出せば直ぐにでも傷付いてしまいそう。


「どうしてこんな所にいるんだろう。そして何で裸足?」


 少女は疑問に思いながら、一歩目をどこに踏み入れるべきか悩んだ。


 慎重にガレキを避けながら、一歩又一歩と道路に向かって歩いて行く。真夜中の海は暗闇が広がり、闇の中から何かが襲いかかって来るような恐怖が、背中に迫って来る。不気味な感覚が小さな身体を包み込んだ。急いで、暖かい灯りの元へ行きたい衝動に駈られ、足元に目を落とし慎重に一歩づつ歩く。その間も絶えず海は唸り声を上げ続ける。「怖い…」恐怖心が心を占める。道路の向こう側に在る民家へ、明かりが灯る家に早く辿り着こうと急いだ。






 おびただしい数のガレキを抜け、漸く防波堤の元まで辿り着いた。少女は立ち止まる事無く、つづら折りに成った長い階段を登り始めた。思ったよりも一段一段が高く、急な造りに成っている。途中で何度も立ち止まったが、何とか上の道路に辿り着く事が出来た。


 歩道に立ち、自分が歩いて来た場所に目を向ける。遥か下方に、黒や灰の影を落としたガレキたちが小さく見える。遠くには荒々しく打ち付ける波が、まだ唸り声をあげていた。


 陸内に身体を向けその全体を目で追う。とてつもなくでっかい山が、月の影で黒々と浮かび上がる。砂浜から見えた灯りはどこだろう。


「家が在ると思ったのに…」


 少女は辺りをキョロキョロと見回した。海から見えた暖かそうなオレンジ色はどこにも無く、外灯も無く、あるのは月明かりだけ。あの灯りは見間違いだったのだろうか。少女は右、左と確認し道路の向こう側へ渡った。


 山裾は雑草が生い茂り、どこにも入れる隙間はない。仕方無く左に向きを変え歩き出した。俯いて歩いていると雑草が途切れる場所があった。細い石畳の路地が林の奥へ続いている。その先には真っ黒な闇が広がっている。何も見えない。少女は急に心細く成って涙が込み上げた。


「……ここに来れば誰かいると思ったのに……」


 ぐずぐずと鼻を鳴らし手の甲で目元を拭う。寂しくて心細くて涙が止まらない。路地の入口の両脇には狐の銅像が向き合って建っていた。えぐえぐと泣きながら狐の像に寄り添う。少女は、像にもたれたまま泣き続けた。


「…キツネさん、泣き虫でごめんね…。でも、独りじゃ怖いよ…」


 ……誰か助けて……


 やっと泣き止んだ少女がそう思った時に、どこからともなく声が聞こえてきた。


『――中へ、お入り――』


 少女は驚いて辺りを見回すが誰もいない。ん? 今の何? 中って‥何の中? 尚もキョロキョロしていると。


『――さあ、早く――』


 と誰かに背中を押された気がした。







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