食べ物の恨みは恐いのよ!
ここは、南半球に位置する小さな島国。
今、弓状の形をしているこの島国に、小さな妖精達がやってきていた。
「こらぁ〜っ。ジン、待ちなさぁ〜ぃ。」
ジンと呼ばれた妖精は木々の間を縫うようにして逃げていた。
「だから、ごめんって謝ってるだろ、アニス。」
アニスは透き通るような透明の羽根を懸命にばたつかせ、妖精仲間のジンを追い掛けていた。
「うるさいわね!逃げながら謝るやつがどこにいるのよ!!」
二匹の妖精はなおも追い掛けっこをしている。
事の起こりは二十分前。
ジンは、木のうろにあるアニスの家に遊びに来ていた。
「おぉ〜い。アニス〜いるかぁ?」
ジンは玄関の扉をドンドンと叩く。
「いないのかぁ?」
ジンは扉を開き、アニスの家へと侵入する。
「おぉっ!いいものみっけ♪」
ジンは目を輝かせ、机の上に置いてある花粉団子を見つける。
「うまうま(^o^)」
ジンがお皿の上に置いてあった花粉団子に手を伸ばしそれを頬張る。
「いやぁ〜っラッキーだったぜ。まさかこんな所に団子が落ちてるなんてな。」
お皿の上に置いてあっても、ジンから言わせば落ちていたのだろう。なんの疑いもなく、それを食べる。
「あぁぁぁぁ〜〜っ!!」
後ろで悲鳴が聞こえる。
「!?」
ジンはビックリし、もう少しで団子を喉に詰まらせる所だった。
軽く咳き込む。
「!?」
ゾクッと寒気がし、後ろを振り向く。
「ジィィィィン!」
そこでは、アニスが頭上に大きな氷の塊を作り出し、鬼のような形相でこちらを睨んでいた。
(やばい……、殺される)
「ま……、まて、アニス。話し合おう!な?」
両手を前に突き出し、ばたばたと手を振りまわす。
「問答……、無用!!」
アニスは頭上に作り上げた氷をジンに向け、投げ付けた。
「う、うわぁ〜」
ジンは両目をギュッと閉じる。
「うっ、えっ?あれ?」
ジンは一向に訪れてこない衝撃を気にし、うっすらと目をあける。
と、目の前では数本の木がジンを護るように新たに生えていた。
アニス達妖精は、何か一つの力がある。
アニスが大気中の水分を氷結させ氷を生み出すように、ジンは木を地面より生み出したのだ。
「手加減してあげようと思ったのが、間違いだったようね。」
先程の攻撃を防がれ、アニスは更にご立腹のようだ。
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
アニスから何かとてつもないオーラを感じたのだろう。ジンは慌ててその場より離れながら、謝りだす。
「こら〜っ。逃げるなぁ〜。」
小さな氷のツブテが、ジンを襲う。
「い、嫌だ〜!」
ジンは慌ててアニスの家を飛び出した。
(オレのバカバカ。アニスの団子だったってなんで気付かなかったんだ。)
ジンは自分の頭をポカポカと叩きながら、アニスから逃げる。
「こら〜っ!待て〜!」
アニスが次々とツブテを作ってはジンへと投げ付けてくる。
「うぎゃ!」
とうとうその中の一つが、ジンに直撃した。
「あぁ〜〜〜っ!」
キリモミしながら落ちていくジンを尻目に、アニスは直径20cmはあろうかと思われる、巨大な氷の塊を作り上げている。
「さようなら。ジン」
アニスは頭上に作り上げたそれを力の限りジンに投げ付けた。
クリーンヒット
落下の勢いもあり、ジンは激しい衝撃とともに、地面へと叩き付けられた。
「きゅ〜う」
目を回し、ぴくぴくと痙攣を起こしているジンの上にアニスが着地する。
「これでわかった?食べ物の恨みは恐いのよ。」
爪先でグリグリとジンを踏み付けながら、ニヤリと笑う。
その顔は、どこかうれしそうな顔をしていた。