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Sea Grass

Forget me not

作者: 天鼎雫月希
掲載日:2026/01/11

久しぶり。

本当に久しぶりだね。

あ、指輪してるじゃん。

おめでとう。

そっかぁ、もうそんなに時が経ったんだね。

嘘みたいだよ。君がこんな風になって。

——————別に、泣いてないし。

もう、泣いてないって言ってんじゃん(笑)。


………そう言えばどうしてここに来たの?

もう、結婚してるんでしょ?

僕のところになんか来ていいの?

そっか、そう、だよね。

ごめん、そんなこと聞いて。

分かりきったことだもんね。

ごめんごめん。


君は何にも話さないの?

え、僕の話聞きに来たって?

そう言うのは早く言ってよ~。

時間も制限があるんだしさ、そうでしょ?

ほら、ちゃんとタイマーかけといてよ。

君はちゃんと向こうの世界に戻ってもらわなきゃいけないからね。

できた?

よし、じゃあ、何から話そうか。

……え、『あの時』の話が聞きたいって?

幸せな話じゃないよ?

いいの?

あんまり君に聞かせるもんじゃない気がするけど。

ほんとにいいの?

も~、わかったよ(笑)。

じゃあ、話そうか。

君と離れて過ごした「あの時」の話を。



僕が君の事を好きだっていうのは君も知っていたんでしょ? 僕は何であの日に君に告らなかったのかって今でも思うんだけどさ(笑)。今考えると、告白しても良かったんじゃないかって思うんだけどね。君は県外に進学して、僕はそのまま近郊の学校に進学した。確か、入学式の日は雨が降ってたよね。土砂降りでもなく、小雨でもなく、桜を散らすには十分な強さの雨。よく覚えてる。

……あぁ、でも君は県外に進学したから、知らないかもね(笑)。

…え、そっちも降ってたの? 

そっか、やっぱり、そうだったんだね。

……ううん、なんでもないよ、



僕が行った学校はクラス替えがないからさ、三年間一緒で唯一の友達ともいえる子が一緒のクラスで本当に嬉しかった。……嬉しかったんだよ…? ……でも、その子は人懐っこいからさ、すぐにどっかのグループに混じっちゃって。初っ端から一人にされた気分は最悪だったんだよ。別に彼を憎もうって言うんじゃないさ。でも、ね。君も知ってるだろ? 僕が本当に人付き合いが苦手なこと。一人にされて本当に、苦しかった。当たり前っちゃぁ当たり前だけどこんな奴に話しかけてくる人は誰も居なくてさ。それに自分から話しかける事ができるほど僕には勇気がないし。……………………そっからさ、僕の地獄は始まったんだよね。


丁度一年生最後の方の時にさ、校外学習があったの。それに泊まりがけだよ? 僕にとって頼れる仲の良い人が誰も居ないのにさ。なんかもう、僕悪いことしたのかな、って思っちゃって(笑)。それに班決めの前々から周りはもう既に友達とグループ組んじゃてて僕は班決めの前から独りぼっちだった。班決めで決まった面子もさ、本当に地獄で、苦しくて、当日休んじゃおうかって思ったんだよ? でも母さんが単位を落とすかもしれないから行けって言うんだ。母さんに逆らったら僕は家には居られない。行くしか無いじゃないか、って。本当に辛くて、消えたくて、どうしようも無かった。あの時からじゃないかな、段々と死のうって思いはじめたの。



僕さ、何でか知らないけどいつも面倒ごとに巻き込まれるじゃん?

もう今は巻き込まれる心配なんてしなくていいんだけどね(笑)。

そんな悲しい顔しないでよ。

それが現実だもん。

__そう言えば、丁度その校外学習の時にも巻き込まれたんだよね。

聞く?(笑)。

………滅茶苦茶胸糞悪いけど。

……………………………‥え、聞くの? 

体調悪くなっても知らないよ? 

いいの?

本当に?

話すよ? 


確か一日目だったかな、あ、そう、五日間あったんだけど(笑)。そのうちの一日目ね? その日にさ、見学先のまじで建物の構造も形も出口も何もかも知らない所でさ、僕置いて行かれたの。丁度お腹下しててさ。バリ痛くて。洒落にならないレベルで。まじで痛くて。んでそこを切り抜けてトイレからやっと出られたと思ったら、誰も居ないの。確か、誰かには「お腹が痛いからトイレからでてくるの遅くなるかもー」って言ったんだよ? 先生も二人以上居たし。誰か待っていてくれるかな~なんて思ってたの。でもさトイレの外に出たらさ、誰も居なくて。もしかしてもうバスに乗っちゃったのかな、なんて思ったの。んで、取り敢えず出入口を探したの。見つけはしたんだけどさ、カードキーが無いと入ったり出たりできないタイプのドアで。まぁそりゃあカードキーなんて持ってるわけなくてさ(笑)。半分パニック状態でもうよく分からなくなって何故かトイレに帰ったんだよ。それでトイレの蓋の上に座ってさ、そういやぁスマホ持っとるやん、って思ってスマホをスリープから起動させたのね。そうしたらLINEからメッセージがなん十件もあって。何故か嫌な予感がして見ないでおこうかと思いはしたんだよ? でも、何故か手が動きを止めなくて、開いちゃって。そうしたらクラスの人からLINEがきてて。見ちゃったんだ。



——————息が荒い?大丈夫だよ

大丈夫、大丈夫だから。

ちょっと、そんな急に抱き締めないでよ。

……何? 苦しそうだった?

ありがとね、本当に。

そう、辛いんだけどさ。

こんな事、本当は思い出したくは無いよ。

でも、だからと言って過去と向き合わないのは違う。

分かってくれるかな、

……うん、そうだね。

あ、そのまま、横に座っててくれない?

そうそう、それでいいから。

大丈夫だからね。


で、見ちゃったんだよ。そこに大量の罵詈雑言があって。死ね、だとか、消えろ、だとか。何人かのクラスメイトからそうやって送られてきてて。幻覚かと思いはしたんだけど、生憎現実で。思わず吐いた。本当にトイレの中でよかったんだけどさ(笑)。吐いちゃって、無性に涙が出てきて、もうどうしようもなくって。苦しくて、苦しくて、全部吐いて、吐いて、出せる物全部出して。吐き気を手で押さえながら、洗面台まで出て、苦い味のする口をゆすいで。先生が気づいたのかトイレに入ってきてさ。「大丈夫か」って。僕、そのまま泣き崩れてさ…。



—————ちょっと何で君が泣いてるんだよ、

辞めてくれよ、

泣きそうだからさ、

ちょっと、もう、本当、僕も泣いちゃうから…、



泣き崩れた後、先生がゆっくり話を聞いてくれて。初めて自分の話をじっくりと聞いてくれて、こんなにきちんと僕と向き合ってくれる大人は初めてでさ。



それでその先生とは今も連絡取ってるの(笑)ほら、これ。

………え、この先生知ってるの?

え、なんで?

まじ?

君の担任?

え、高校の時の?ほんとに?

まじかぁ………

だからいなくなっちゃったんだね……、あの先生……。



~♪ ~♪ ~♪

—————え、もう時間?

まじかぁ、

短かったけど、楽しかったよ。

嬉しかったよ。君ともう一回出会えて。

え、なに?

一緒にこのまま外で遊ぼうって?

ごめんね。…………僕はこの喫茶店からでられないんだ。

そう。

知ってるだろう?この喫茶店はそういう店なんだ。

この喫茶店『Sea Grass』では、亡くなった人と出会えるって。

分かってると思うけど、僕はもうこの世界には居ないのさ。


—————ごめんね。

君とはもう一緒に居られないんだ。

本当にごめん。

大好きだよ、

そして、さようなら、

どうか不幸にだけはならないでくれよ。


——————幸せに、なってくれよ。


*  *   *


あぁ、お久しぶりですね。Reiさん。

今日もReiさんの抹茶ティーラテめっちゃおいしかったです。

この個室ってこういう用途だったんですね。

Meet Roomって言うんですか?これ。へぇ~。

Chiiちゃん、いろいろやってくれてありがとうね。

あ、そうそう、これ、持ってきたんですよ。

飾ってもらえます?これ。

そうですそうです!

白い勿忘草です。

Reiさん、この花の花言葉、知ってます?

そうですよね。やっぱり知ってますか(笑)

流石、Reiさんですね。

なんで、僕がこの花言葉を知っているかって?

そりゃ当たり前ですよ。

「私を忘れないで」って、僕にぴったりですもん。

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