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中堅冒険者とお姫さま剣士 ~悪縁奇縁で最強を目指せ!~  作者: 南野 雪花


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第48話 作戦行動を取るモンスター


 ドイルの私掠戦術に使われるモンスターは、強大化の一途をたどっている。


 俺とレオンティーヌが遭遇したときはゴブリン程度だったんだけど、最近はオーガーやトロールまでいるのだ。


 しかもセムリナ国境付近で起こっていた事態は、ルーン王国全土に波及しつつある。

 いや、それどころかドイルを含めた周辺国家にも波及しそうなんだ。


 もうね、国際問題の一歩手前だよ。


「こうなる可能性があったから私は大反対だったんだけどね」


 ある日の会議室。

 ラファイエットが盛大なため息をついた。


 ゴブリンでも理解できる絵本みたいな指南書を作り、それを使わせて人間を襲わせる。

 一見すると、味方の兵力をまったく消費しない素敵な策だ。


 俺も、なんて悪辣なことを考えやがるって思ったものである。

 だけど事態は、仕掛けたドイル予想を超えて悪化の一途をたどっている。


「モンスターを完全にコントロール下に置くなんて無理なんだ。そんなことができるなら、そもそもモンスターなんて呼ばれない」


 肩をすくめるラファイエット。

 当初はゴブリンが知恵をつけただけだった。しかしその知恵は、どんどん上位のモンスターに伝播していった。


 なんでそんなことになったかというと、知恵をつけたゴブリンがオーガーとかをその知恵で負かしたりしたから。

 そしたらオーガーもゴブリンの取った作戦を学んでしまう。


 これを、戦訓という。


「まあオイラたちだって戦訓を取り入れるからね。モンスターがそれをしないなんて言い切れないよね」


 はははと苦笑するクライヴだが、事態はわりと笑って済ませられる範囲を超えつつある。


 そうだな……連携し、作戦行動を取るオーガーやサイクロプスって考えてみてくれ。

 どうよ?


「装備はありふれたものしか使わないし、出会ったゴブリンは一匹残らず殺すっていうゴブリン狩り専門の冒険者がいたけど、結局それは戦訓を拾わせないためなんだな」


 いまになって理解し、俺は腕を組んだ。

 知恵をつけ、進化していくモンスターは手に負えない。


 もしオーガー二体が前進と後退のタイミングをはかり、交互に攻撃を仕掛けてきたら、たぶん普通の冒険者パーティーには対応できないだろう。

 軍隊だって思わぬ隙を突かれるかもしれない。


「勝つための方策を練るから人間は強い。この常識をわざわざ壊してやるんだから、素晴らしい作戦すぎて涙がでてしまうよね」


「軍隊同士の戦いではなく、民草まで巻き込んだ戦争です。ファイが強固に反対する理由がわかりますね」


「反対はしても止められず、国を追われてしまったけどね」





 ひとしきり愚痴った後は現実への対応である。

 街道を旅する隊商などからも陳情が上がっているのだ。


 モンスターに襲われる頻度が高く、常に護衛をつけなければならない。その護衛に支払う報酬の分を価格に上乗せしてよろしいか、とね。


 行政としては、いいよいいよ、なんぼでも値上げしちゃって、なんて言うわけにはいかない。

 かといって、正規軍を守備要員として街道各所に配置するなんてことになったら、予算も人員もまったく足りない。


「セムリナ国境のあたりでは、剥ぎ取り目的で冒険者をたちが動いていましたが」

「当初はかなり効果的だったみたいだね、ティーヌ。ところがモンスターたちもどんどん知恵をつけていったから」

「わたしたちがヒーズルにいたのは二ヶ月ちょっとですけど、そんなに状況が悪くなっているんですね」


 待ち構えられると知ったゴブリンどもは、偵察をおこなうようになった。

 結果として、待ち伏せしていない時間を狙われるようになってしまったのである。


 小さいことなのだが、じつはすごく大きい。

 どうして偵察をおこなうのか、その意味をモンスターが知ったということだから。


「とにかく、これ以上の戦訓を与えないというのが大事だな」

「それも手ではあるんだけどね……」


 俺の言葉に、ラファイエットが腕を組む。

 なにか別のアイデアがある顔だね、これは。


「言ってみ言ってみ」

「モンスターたちに、「作戦なんか無意味だ」って思わせていくのが、最終的には良い気がするんだよ」

「いやいや。無意味なわけないじゃないですか」


 レオンティーヌがぱたぱたと手を振った。


 それな。

 無意味だったら人間だって作戦行動を取らない。より効率よく勝つために作戦を立てるんだよ。


「うん、それはそうなんだ。だけどそれは果てしない軍拡競争になるだけ」


 ラファイエットの声は重い。


 俺たちが素晴らしい作戦を考案してモンスターに勝ったとする。するとモンスターたちはどうして負けたのかを考え、次は勝とうとするだろう。

 そしてより確度の高い戦法を取ってくる。


 これが、モンスターに知恵をつけてしまった結果だ。

 野生動物の延長線上では、もうなくなっているのである。


「いずれ他種族との連携に結びつくかもしれない」

「やめてくれよファイ。しゃれにならん」


 オーガーが主戦力。ゴブリンが遊撃を行い、シャドウストーカーが斥候、ヌエやマンティコアが後方から攻撃魔法を飛ばす。


 そんな敵軍が現れたら、俺は即時撤退を進言するよ。

 勝てるわけがない。


「そういう未来を避けるためにさ、作戦なんて立てたって意味がないと思わせるのが良いかなと」


 簡単な方法ではないけれど、と、ラファイエットが付け加えた。



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