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中堅冒険者とお姫さま剣士 ~悪縁奇縁で最強を目指せ!~  作者: 南野 雪花


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第47話 トーリアンの新城司


 なんてこった。

 人がぜんぜん足りない。

 武官も文官も、まったく足りないんだ。


 いや、数はそこそいるけどさ。どっちも練度が低すぎる。

 ルーン王国正規軍ってこんなレベルなの? って思ってしまうありさまだ。


「そんなわけはありません。舐められまくってるんですよ」


 城司は女で、しかも十代の小娘。


 副詞として名を連ねるのは、元冒険者に亡命者だ。クライヴだけは監察官(インスペクター)として実績があるけど、異国の女に入れあげた愚か者というレッテルが貼られてしまっている。


 こんな連中が上役として赴任してたのに、気分は上々なんていう兵士も役人も滅多にいないだろう。


「軍でも官僚でも縦社会だからね。一応は命令に従うだろうけど、あまりに面従腹背だとこまるねぇ」


 ぜんぜん困っていなさそうなラファイエットである。

 早急に鍛え直さないと、ドイルが攻めてくるってのに。


 国境のデスバレー要塞を管轄するトーリアンがこんなありさまだと知ったら、ドイルの連中は小躍りして喜ぶだろう。


「ファイにはなにか手がありますか?」

「乱暴な手と、やや乱暴な手があるけど、ティーヌはどっちが好みだい?」

「穏健な手はないんですか?」

「あるわけないさ」


はっはっはっと笑う。


こちらを舐めている相手に理解ある歩み寄りなんかしたって無駄。

そのへんは理解できる。


冒険者の業界も力関係ってすごく大事だからね。


「乱暴な手というのは?」

「とくに反抗的な者を一人か二人ひっと捕らえて、命令に従順ならざる者として王都に送ってしまう」


 うっわ悪辣。

 命令に従順ならざる、なんて柔らかい表現にしているけど、反逆者ってこと。

 問答無用で首を撥ねられて家財は没収。一族郎党みんな鉱山とかで強制労働とか、そんな未来しか待ってない。


「鬼ですか? ファイは」


「人聞きが悪いね、私は反逆者だなんて一言もいっていないよ。命令に不服従だったのは王国に反意があるからじゃなくて、上官が気に食わないからだと言い訳してみるといいんじゃないかな」


「いやいやいやいや、王国政府がそんなタワゴトをきくわけないじゃないですか」


 レオンティーヌか呆れる。

 政府にとって、地方都市の兵士の命なんて紙切れより軽い。


 そんな紙切れが、上役が気に食わないんで反攻しました、なんて主張したら、一瞬で反逆者認定だ。

 もしかしたら本当に上役がクソなのかも、なんて思ってはくれないんだよね。


 だって、いちいち調べるの面倒くさいじゃん。

 金と時間と労力をかけて、名もなき一兵卒の訴えをきいてやるなんて酔狂な真似するわけがない。

 兵士には業腹だろうけど、それが縦社会ってものなのである。


「まあ、一発で震え上がるね。そこからは去勢された猿みたいに大人しくなるだろう」

「一罰百戒というわけですか」


 有用性は認めますけれど、と、留保の色が濃いレオンティーヌだ。

 逆らってきたきたくらいでそこまでするのは気が引けるのだろう。生来の優しさもあるし、彼女自身が親に逆らって生きてきたという事情もある。


 もちろんレオンティーヌの場合は自由を得るために多大な犠牲を払ってきたんだけどね。

 現状で反抗的な兵士や文官どもに、そんな覚悟があるかって話さ。


「ちなみに、やや乱暴な方法ってのは?」


 なかば手を上げるようにして俺は訊ねる。

 助け船ってわけじゃないけど、レオンティーヌには味方を嵌めるような策をとって欲しくないんだよな。


 彼女の堯勇は強敵と戦うときにこそ発揮されるべきだ。


「そっちはシンプルさ。拳で語る」


 不満のある奴は名乗り出ろって話だね。うん、本当にシンプル。




 兵士たちは、あっというまに大人しくなったよ。


 俺でもクライヴでもレオンティーナでも、誰か一人に勝ったら一時金として三年分の俸給と二ヶ月の休暇をあげるよって条件で挑戦者を募ったんだ。

 名乗り出たのは十人ちょっと。


 レオンティーヌに挑んだのは二人。クライヴはゼロ。残りはぜんぶ俺ね。


 クライヴ人気なさすぎ。

 まあ、もと監察官だから強いだろうって、みんな思っちゃうからね。仕方ないね。


「じつはこの三人で、近接戦闘いちばん弱いのオイラなのにね」


 とは、最もラクをした男の台詞である。


 で、俺と三合打ち合えたのは二人しかいなかった。

 残りは、レオンティーヌの相手も含めて、一撃で終わり。


「お話になりません。ドイルが私掠戦術で使ってくるモンスターにはオーガーも含まれてますよ。そんな腕で民草を守れますか?」


 と、城司たるレオンティーヌが檄を飛ばし、兵士たちは憑き物が落ちたように訓練に邁進するようになった。


 まあ、もともとが強い奴がえらいっていう単純な生き方を選択した連中だもの。

 ドラゴンスレイヤーは伊達じゃないって判ったら、ちゃんと従うさ。


 文官筋の方は、ユキナエが出たら片が付いたらしい。


 普段のぼそぼそ喋りと仏頂面からは想像できないけど、三十で魔法学校(アカデミー)を卒業した俊秀だから。

 万人に一人の才能を持ち、加えて不断の努力を重ねないとできないこと。


 こういう人に文句を言ったら、嫉妬してるのかって思われるよね。自分のできないことをやった人間に嫉妬なんて、小さい男だねって周囲から思われて、あっという間に孤立する。

 そうなるように、天下の名軍師さまが情報工作をしたっぽい。


 恐ろしいねぇ。



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― 新着の感想 ―
おい、ついこの前までここ攻めてた奴が目の前に居るぞ。
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