第46話 新たな仕事
二百年ぶりとなるドラゴンスレイヤーの誕生である。
ルーン王国は沸きに沸いている。
「ホントにやっちゃいましたね」
「正直、できるなんて思っていなかった」
「私もですよ。でも、おめでとうございます」
レティシアが差し出した右拳に、笑って俺は自分のそれをぶつける。
祝福の儀式であり、同時に別れの挨拶だ。
騎士叙勲された以上、もう冒険者ではいられない。
いずれ近いうちに任地が与えられるだろう。どこかの町か村を統治せよって感じ。
で、そこの税収が収入であり、そこから何割かを国庫に納める。
これが領地を持たない貴族ってこと。
ただ、俺もレオンティーヌも統治なんてやったことないからね。それぞれ別の町を治めるのではなく、まずは経験豊かな先輩の下について修行するって感じになるんじゃないかと思ってる。
そのあたりの人事が定まるまで、ホームタウンであるアンジェリクに戻っているのだ。
俺とレオンティーヌ。そして行動を共にすることになったラファイエットはね。
クライヴはユキナエとともにヒーズルはパインコーストに向かったよ。
リバナ公から結婚の許可をもらうためにね。
ていうか、本気で結婚しちゃうらしい。
蓼食う虫も好き好きっていうけど、俺から見るとあんまりユキナエは女性としての魅力を感じない。
無表情だし、ぼそぼそ喋るし。
どっちかっていうと、レオンティーヌみたいに思ったことはばしばし言う女性が好きかな。
「では、アルもプロポーズすると良いよ。ティーヌに」
「何言ってんだよファイ、身分が……」
「違わないね。どちらも騎士だよ」
「うおう……」
ラファイエットの言葉に愕然としてしまう。
冒険者登録を抹消して宿にもどり、昼間っから食堂で飲んでいた不良中年軍師のご相伴にあずかっていたのだ。
いつのまにか、こんな話になってしまったのである。
あ、レオンティーヌは宿暮らしではなく、バシュラール侯爵家に戻っているよ。
彼女が騎士を志すことに(名目上は)反対していたバシュラール侯爵だけど、ホントに騎士になってしまたった娘に感動していた。
そして、バシュラール侯爵家の分家を興すことを許可しちゃった。
破格というか、むちゃくちゃですね。
レオンティーヌの兄たちにだってそんな権利はない。
バシュラール侯爵の位を継いだ人以外は、バシュラールの一党という身分のままだ。
新たな家を興すことなんて許されないである。
「つまりティーヌはこれから婿取りをしないといけないってことさ」
「あいつ婚約者いるじゃん」
「当然のように解消だろうね。家柄が合わなすぎる」
ラファイエットが笑う。
小なりといえどもレオンティーヌは貴族家の当主となった。どこかに嫁ぐことはできない。
ラファイエットがいうように婿を取るしかないのだが、彼女の婚約者であるセレスティアンはネルヴィル伯爵家の公子、つまり次世代の伯爵だ。
婿入りなんかできるわけがない。
嫁入りも婿入りもできないわけだから、婚約は解消するしかないのである。
「貴族社会めんどくせぇ」
「アルももう貴族の一人だけどね」
苦笑交じりの乾杯。
名誉と富貴は約束されたのに、なんだかすごく窮屈に感じてしまう。
俺たちの任地が決まったのは、クライヴとユキナエが夫婦になって戻ってきた直後だった。
「なるほどね」
「そうきましたか」
王国政府からの使者を見送った俺たちは、苦笑をかわし合っていた。
俺たち四人の任地はトーリアン。
ドイルとの国境を守る、あの城塞都市トーリアンである。
城司はレオンティーヌ、俺とクライヴとラファイエットは副司、ユキナエは無位ながらクライヴの妻として、また名誉騎士として統治に参画する。
「ラクをさせてくれるつもりはないってか」
「潰れるなら、それはそれで良いってことでしょうね」
前の代官とシティコマンドの隊長は更迭された。降格までされたらしい。これはまあ仕方ないよね。
俺たちとクライブの登場によってラファイエットが撤退しなければ、今頃トーリアンはドイル王国に占領されていたかもしれないんだ。
未然に防ぐことができたとはいえ、この失態をいいよいいよって笑って許してくれる上層部だったら、たぶんルーン王国はとっくに滅んでるって。
で、代官とシティコマンドの隊長を兼任するのが城司。
レオンティーヌいわく、それぞれを別人がやるよりはずっと良いんだそうだ。
右手の動きを左手が知らないって状況を利用して、まんまと占領を成功しかかったのがラファイエットなんだって。
「ですが、どちらの職責も多忙を極めますからね。兼任は物理的に無理があります」
「だから四人で支えろってことだな」
副司は三人だけど、ユキナエも間違いなく数に入っているだろう。
「これでドイルの侵攻を防げってことだよな」
「試金石ですね。頭を一つにしてその手足を同格にする。これで上手くいけば、他の国境でも似たような布陣にするつもりなんでしょう」
責任重大なんだけど、レオンティーヌは不敵に笑う。
騎士叙勲が彼女の最終目標、だったわけではない。
まだまだ人生は続くのだ。
ここまできたら、歴史に名を刻んでやろうとと俺たちは誓い合ったものである。
手始めに、ドイル野望をくじく。
「モンスターを使って無作為に民草を襲わせるなんて戦法、騎士にならなくたってやめさせないといけないからな」
俺の言葉に仲間たちが頷いた。
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