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中堅冒険者とお姫さま剣士 ~悪縁奇縁で最強を目指せ!~  作者: 南野 雪花


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第45話 ドラゴンスレイヤー

 

 しばらく誰も口をきけなかった。


 疲労困憊。ダメージ甚大。

 俺とレオンティーヌは、地面に膝と手をついて荒い息を吐いている。


 クライヴなんて大の字に寝転がってしまった。

 ここで敵が襲ってきたら、たとえそれがゴブリン程度でも全滅は確実である。


 正直、もう剣を持ち上げる気力もない。


「回復するね」


 そういってラファイエットが立ち上がったのは、戦闘終了から四半刻(約三十分)も経過してからのことだった。


 魔力回復の薬をぐーっと飲み干し、空き瓶を捨てる。

 ていうか、そこらじゅう空き瓶だらけで、スラムの路地かよってことになっちってるよ。


 ラファイエットとユキナエで何本飲んだんだ?

 それだけ間断なく後撃魔法と支援魔法と回復魔法を使い続けていたってことなんだろうけど、飲みきった薬だけで一財産だよな。


 回復魔法で怪我は治ったけど、疲労感だけはどうにもならない。

 四つん這いの姿勢から、クライヴを見習って俺も寝転がることにした。


 空が青いなぁ。


 ぐーと手を伸ばしてみる。

 届きそうだけど届かない。

 あの雲みたいだと思っていた。


 だけど、届いた。


「ドラゴンスレイヤー……」


 思わず呟いた声は、自分のものとは思えなかった。

 だから一度大きく息を吸い、両手を点に伸ばす。


 まっすぐ。

 雲に届くように。


「俺たちは! ドラゴンスレイヤーだ!!!」

「「おーっ!!」」


 仲間たちが唱和した。


「さて、水場を探すか」

 半刻(約一時間)ほどもだらだらと転がりながら、互いの健闘をたたえ合った俺たちは、ようやく現実への対処をすることにした。


 全員、血みどろのぼろぼろなのである。

 傷は治っているが、ざっぱんざっぱん浴びたドラゴンの青黒い血までは落ちない。


 せめて洗わないと、ポックルトにも帰れないだろう。

 あと、解体もしないとな。


 ドラゴンに捨てるところなしっていって、肉や骨、臓物どころか生き血だって良い金になるんだよ。


「いやあ、でもきっとオイラたちのものにはならないね」


 苦笑しながらクライヴが指さした方を見やれば、領主軍の旗を立てた馬車が何両も近づいてくるのが見えた。


「機を見るに敏ですね。まさか手柄を横取りはしないでしょうけど」

「素材はぜんぶ買い取るぞって構えだろうな。たぶん相場より安く」


 レオンティーヌの言葉に俺は肩をすくめる。

 業腹だけどこればっかりは仕方ないかな。


 俺たちだけじゃ街までドラゴンを運べないし、もし相場通りの価格でぜんぶ売ったら、とんでもない金額になってしまう。

 それこそ、危なくて夜道を歩けないレベルでね。


 名誉とそこそこの金銭、そのあたりで妥協するのがお互いのためだろう。

 なにしろドラゴンスレイヤーの称号は、たぶん世界中どこにいってもでかい顔をできるからね。


「……でも、ぜんぶ取られるのはくやしいから」


 小刀を取り出した、いつもどおりの素晴らしい手際で深紅の鱗を十枚と牙を五本切りはずす。

 そして仲間に等分した。


「……討伐記念」


 にっと笑う。

 いつも仏頂面のユキナエが笑うと、なんか石像が笑ったような不思議な感覚だった。





 そして俺たちは英雄になった。


 レッドドラゴン討伐から一ヶ月ほどは記憶を失ってしまうほど忙しかった。

 ルーン王国の憂患のひとつであるマルズ山のレッドドラゴンが討伐されたのだ。


 そりゃあみんな大興奮ですよ。

 連日連夜、絵入り新聞の取材はあるし、祝賀会だパーティーだとあちこと引っ張り回されるし、ついにはポックルトに王都からの使者か来るし。

 なんの冗談だよって騒ぎだった。


「それほどのことを成し遂げたのだよ、アルよ」


 そう言って肩を叩くのはリンネハイム公。

 ポックルトの領主であり、俺たちがずっとお世話になっている城館の主だ。


 いや、普通に宿屋に泊まるって言ったんだよ? そしたら、竜殺しの英雄が市井の宿に泊まる方が危ないっていわれてね。

 お城にご厄介になることとなった。


 身分差があるから最初は距離があったんだけど、一ヶ月も同じ釜の飯を食っていれば仲良くなる。

 そうじゃない人ももちろんいるけどさ。リンネハイム公爵って御仁は、身分差を吹き飛ばしてしまうくらいの好漢だった。


「それはアルも同様だな。六十を超えて、新たに友誼を結べる男と出会えるとは思わなかった。これだから人生は面白い、としておくべきだろう」


 そんなことを言って老顔をほころばせるリンネハイム公だった。


「ところでな。きみたちから要望のあった騎士叙勲の話だが、王国政府から諒と返事があったぞ」

「本当ですか! ありがとうございます!!」


 この言葉に一番喜んだのは、当然のようにレオンティーヌだ。


「なんとまあ……」


 どういう表情をして良いのか判らない、という顔はクライヴ。


 ドラゴンスレイヤーの俺たちはユキナエを除いて騎士に除せられることになった。

 どうしてユキナエは除外されたのかといえば、ごく単純な理由で彼女が他国人だから。


 さすがにヒーズル皇国の人間を騎士に取り立てたりしたら外交問題だ。

 なので、名誉騎士という称号で報いられることになったらしい。ルーン王国内においては騎士としての待遇を受けられるってやつね。


「騎士叙勲ということは、私の居住権も認められたと考えて良いだろうね」


 ラファイエットは笑ってるけど、認められるどころの話じゃない。

 騎士ってのは領地のない貴族だもの。

 亡命者が、いきなり貴族の仲間入りですよ。



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ファイファイさん、生活の基盤ができてよかったやん そしてティーヌ、おめでとう!
ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!!
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