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中堅冒険者とお姫さま剣士 ~悪縁奇縁で最強を目指せ!~  作者: 南野 雪花


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第44話 決着!


「迂闊ですよ! アル!」


 一挙動で飛び込んできたレオンティーヌが、レッドドラゴンの右半面を存分に切り裂く。

 青緑の血がしぶき、右の眼球が潰れる。


「あ、もったいない! 竜の目玉!」

「いってる場合か!」


 ワンステップ、ツーステップと距離を取り、俺は左側に回り込もうと試みる。


 俺がこっちにいれば、レオンティーヌは死角から攻撃できるって算段だ。

 いらついたのか焦ったのか、レッドドラゴンが吠え声をあげる。


 そして放たれるブレス。

 ぐるりと首をめぐらせ、狙いすら定めずに。


「広範囲にくるぞ! 防御魔法は間に合わない! 各員勝手にしのいでくれ!」

「ひっでぇ指示だな!」


 せっかく詰めた距離を飛び下がりながら、ラファイエットに文句を言う。


 つーかあっちぃ!!

 バシリスクレザーアーマー着てるからなんとか助かってるけど、普通の装備だったら黒焦げになってるレベルじゃねえか。


 ラファイエットとユキナエは……なんとか防御魔法が間に合ったのか。

 レオンティーヌも大丈夫そうだな。俺の視線に親指を立てて見せた。


 距離が離れたのをみてレッドドラゴンが翼を広げる。

 逃げる気か!


 ドラゴンの回復力なら、一晩二晩でこの戦闘のダメージなんかなかったことにされてしまう。


 そうはさせじと走り込むけど、たったいま後退してしまった分の距離がどうしても届かない。


「ところがどっこい。このチームにはまだオイラがいたりして」


 突如としてクライヴの声が聞こえた。

 なんとドラゴンの背から。

 ていうか、彼の存在を俺も失念していたよ。これが隠形ってやつか。


「その羽いただきます。まいど!」


 何が起きたか判らない。俺たちだけじゃなく、ドラゴンも判らなかっただろう。

 右の翼がどさりと地面に落ちる。


 噴き出した青黒い血が、驟雨のように地面を叩いた。

 一瞬遅れて響くドラゴンの絶叫。

 空へと地上へと無作為にブレスが撒き散らされる。


「こりゃたまらん! 退散退散、しっつれいしましたあ」


 ドラゴンの背にあったクライヴの姿がすうっと消えた。




 レッドドラゴンは飛行能力を失った。

 千載一遇のチャンス。この気を逃せばもう勝機はないといって良いほどの好期である。


「みんな! 総攻撃(フルアタック)だ!」

「諒解!」


 飛び込んだレオンティーヌがドラゴンの胴体部に『ハバキリ』を突き立て、そのまま一気に駆ける。

 一文字に切り裂かれていく竜鱗。


 大ダメージを与えた、と思った瞬間、狂ったように暴れる尻尾にはじかれ、六間(約十一メートル)も吹き飛ばされる。


 子供が遊び飽きて投げ捨てた人形のように、二度三度と地面にバウンドして止まった。

 鼻と口から血があふれ、腕や足が変な方向に曲がってしまっている。


 一見して瀕死だが、すぐにラファイエットが駆けよって回復魔法を使う。


「ティーヌ! 命を惜しみなさい!」

「惜しんでますよ……だからファイをアテにしていました……」

「勝手なことを!」


 ぷんぷんと怒るラファイエットだが、みるみるレオンティーヌが回復していく。

 あっちは任せていて大丈夫そうだ。


「ユキナ。支援頼んだ」

「……まかせて」


 魔力回復薬を一気に飲みし、ぽいっと瓶を投げ捨てたユキナエが頷く。

 彼女の周囲には空瓶が何本も散乱していた。


 そりゃそうか、鼻血がぼたぼた落ちるレベルで魔法を使い続けてるんだからな。


 でもユキナエは、もう無理だともできないとも言わなかった。

 任せてと言った。

 なら、その言葉を信じて突進あるのみ!


「……加速(アクセラレート)


 ドラゴンへと駆ける俺の足が、まるで羽が生えたように軽くなる。

 迫る爪を、牙を、易々と回避できるほどに。


 常に死角をキープしつつ、こまかいダメージを回り込みつつ、蓄積させていく。

 レオンティーヌみたいに大ダメージを与えられたら良いんだけど、俺の『サダヒデ』は彼女の『ハバキリ』みたいにドラゴン特効はない。  


 それに、前衛がみんな戦闘不能になってしまうと後衛が危険だ。


「さあトカゲ野郎! どっちが先にくたばるか、いっちょ勝負としゃれ込もうぜ!!」


 好戦的な叫び

 応えるようにレッドドラゴンも吠える。


 ゼロ距離での削り合い。

 気付けばクライヴも最接近して縦横に双剣を振るっている。

 ユキナエのアクセラレータがあっても、この距離ですべて回避することはできない。


 致命傷になりそうなものだけ最小限で避ける感じ。

 ここからはもう根性の勝負である。


 ドラゴンとしては人間ごときに押し負けるなんて絶対に許されないだろうし、俺たちだってこの機を逃したら勝算がないことを知っている。

 だから、意地にかけてもさがることはできない。


「お待たせしました! 戦線復帰します!!」


 どのくらいの時間そうしていたのか、不意にレオンティーヌの声が割り込んできた。

 回復できたのか。


 ちらっと視線を投げると、ラファイエットが諦めきった顔で首を振っていた。

 レオンティーヌも、気合で無理矢理に身体を動かしてるってこと。


「なら! なおさらここで決めるしかないよな!」

「諒解!!」

「ひゃっはーっ!!」


 レオンティーヌとクライヴが応える。後者は完全にハイになってるね。

 ユキナエの魔法も次々と着弾。

 もう魔力なんてほとんど残ってないはずなのに。


「これで! 終わりだ!!」


 一息に懐に入り込み、両手持ちした『サダヒデ』で首筋を掬い上げる

 同時にジャンプ一番、反対側からレオンティーヌが『ハバキリ』を切り下げた。


 どう、と、重い音をたて、ドラゴンの長首が草原に落ちる。


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