第41話 ちょっと気まずい再会だね
ところどころに燻し銀のような光沢のあるレザーアーマー。
そのかっこよさは、俺もレオンティーヌも一目見た瞬間にほうとため息をついちゃったくらいだ。
レオンティーヌ専用のやつは、胸に金色の稲妻模様が走っている。
もちろん彼女自身のリクエストだ。
これに手甲と鉢金というのが、レオンティーヌのスタイル。
かなり控えめにいって格好良すぎ。
吟遊詩人が歌うサーガの主人公みたいだ。
同じ素材のライトレザーをまとっていても、俺やクライヴなんかは姫騎士のおともって感じですよ。引き立て役引き立て役。
「……ティーヌ、似合ってる」
「ありがとうございます。ユキナも大魔法使いって感じで素敵ですよ」
「……ほめすぎ」
くねくねしてる。
魔法使いの称号は、魔法使い、魔導師、大魔法使いの三つ。メイジってだけで普通の人からは雲の上だけども、ウィザードなんていったら全世界に十二人しかいないって話だよ。
神話レベルだね。
魔法学校を卒業して何年も経ってないユキナエはまだメイジに過ぎないけど、バシリスクローブをまとった姿はウィザードとまでは言わないまでも充分にソーサラーの風格がある。
「よし! ヒーズルでの目的は果たした。いくか! マルズ地方へ!」
俺は宣言し、仲間たちが大きく頷く。
イバナ公とハンゾロ師匠に挨拶を済ませたら、また船でセムリナへ。そしてアンジェリクを経由して南に広がるマルズ地方へ。
拠点になるのは南の大都市ポックルトになるだろう。
「もう二度と会うまいと思って、あんなに格好いい書き置きを残したのに、再会してしまうとは、なんともばつの悪いことだな」
アンジェリクで待っていた美髯の伊達男がはにかんだ笑いをみせる。
舞台の上でやったら、女性客がきゃーきゃー言いそうだ。
一度煮え湯を飲まされた俺としては、さあ今度は何を企んでやがるって警戒しちゃうけどね。
「いやいや、煮え湯を飲んだのは小生だよ、アルベリクくん。八割方は成功していた作戦をすべて放棄して逃げ帰ることになった」
途中まで上手くいっていた作戦など、出足で躓いた作戦よりたちが悪いねと笑う。
侵略の橋頭堡を築けなかったことで、ドイルは私掠戦術に走った。
それだけは、ラファイエットにとって避けたい事態だったのに。
なぜなら無辜の民が死ぬから。
「それも戦のならいだと思いますけどね。民草の犠牲をゼロにはできません」
「だとしても、それを一人でも二人でも減らしたいのさ。我ながら青臭くて嫌になるけどね」
レオンティーヌが投げた皮肉をストレートに投げ返す。
こうもまっすぐな瞳で語られると苦笑するしかないね。
そして、こんな人物だからこそドイル軍の中心にはなれなかったんだろうなと思ってしまう。
「さぞ上層部に嫌われたんでしょうね」
「私が作戦に失敗したとき、祝杯を挙げた連中がいるらしいね」
肩をすくめるラファイエット。
金と時間をかけた作戦を失敗させ、おめおめと逃げ帰ってきたあげく、次の私掠戦には断固反対する。
そりゃあ居場所がなくなりますわね。
「けどまあ、何が何でも筋を通すって生き様、嫌いじゃないぜ、ファイ」
愛称で呼び、右拳を突き出す。
「これからよろしく。アル」
顔をほころばせラファイエットがぶつける。つづいてレオンティーヌ、クライヴ、ユキナエがこつんこつんと。
パーティー結成である。
前衛は俺とレオンティーヌ。後衛はラファイエットとユキナエ、遊撃の位置にクライヴ。
このメンバーでマルズ山のレッドドラゴンに挑むわけだ。
勝算は、正直にいって高くない。
相手はドラゴンだもの。
しかも千年を閲した古代竜だ。
これまで幾多の猛者が挑んでは敗れていったわけで、俺たちが敗者の列に加わらない保証なんてどこにもない。
「でもそれなら、結局いつなら挑めるんだって話になりますからね」
レオンティーヌがむっふーと鼻息を荒くする。
こいつの場合は戦いたいって願望が一番にきてしまうけど、準備にばっかり時間をかけて足踏みしていても意味がないのは事実だ。
人間がドラゴンに挑むんだぜ?
どんだけ準備したって足りないさ。
賢いやつは、自分より強い相手となんか戦わない。
確実に勝てる相手だけを選んで、確実に勝てる人数で挑むんだ。
それが間違っているとは言わない。兵法とかいうやつなんだろう。
けど俺は、徒党を組んで弱い者いじめをするような連中を尊敬しない。
勝つか負けるか判らない。自分がどこまでやれるか、それを知るために手を伸ばすレオンティーヌの生き様を尊敬する。
まぶしいと思う。
「戦って勝たねば、私はルーンに住まわせてもらえないらしいからね。ない知恵を絞るよ」
「アテにしてるよ」
敵味方ただ一人の犠牲者を出すこともなく、城塞都市トーリアンを陥落寸前まで追い込んだ名将の知謀だ。大いに期待させてもらうよ。
「よし、決めた」
珍しく軽口を挟まないで黙り込んでいたクライヴが、突如としてユキナエの手を握った。
「ユキナ。この戦いが終わったらオイラとふがう!?」
なにか言いかけたんだと、突如として降ってきたレオンティーヌの踵に脳天を痛打されて悶絶する。
奇声とともに地面を転げ回ってるから、死んではいないだろう。
「出陣前のプロポーズは御法度です。絶対に生きて帰れなくなるって軍学校で習わなかったんですか? クライ」
腕を組み、下目遣いに監察官を睨み付けるレオンティーヌだった。
そういうジンクスがあるのか……。
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