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中堅冒険者とお姫さま剣士 ~悪縁奇縁で最強を目指せ!~  作者: 南野 雪花


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40/50

第40話 巡ってきたチャンス? ピンチ?


 パインコーストの街に移動して、宿屋に腰を落ち着けることにした。


「……込み入った話なら食事でもしながら」


 と、ユキナエがすごくまともな意見を言ったからである。

 ていうかこの人、ちゃっかりクライヴの横に座ってるけど、なんなん? 気に入ったん? このカミソリを。


「三十を超えると色々焦るんですよ。きっと」


 俺の耳にだけやっと聞こえる声で解説してくれるレオンティーヌだった。

 いやまあ、クライヴとユキナエが結婚しようが駆け落ちしようが、べつに俺の知ったこっちゃないんだけどさ。


「で、俺たちの力を借りたいというのは、どういうことなんだ? クライヴ」

「ティーヌ嬢ちゃんが言ったとおり、内応策を疑われたんだよ」


 内応策ってのは、偽の裏切りなんだってさ。


 ドイル王国をフリをしてルーン王国に寝返る。そしていざ戦争が始まったらいろんな破壊工作をして、ルーンを内部から壊してしまう。

 もちろんそんなことをしたら、偽の裏切り者であるベイカー将軍はルーンに殺される。


 それを承知した上で仕掛ける非情の策で、「苦肉の策」とも呼ばれるんだそうだ。


 なかなかにひどい作戦だと思うけど、クライヴもレオンティーヌも知っているってことは、これまで何回も使われてきたってことか。

 軍人さんは、やることがえげつないですな。


「ベイカー将軍……名乗りをラファイエットにしたんだけど、彼を信じるに足る実績を示せっていうんだな」

「まあ……妥当な指示ですね」


 ふむと頷くレオンティーヌ。

 歴史的な敵国の人間であめラファイエットを、無条件で信じる道理がない。寝返りが嘘であると考える公算の方が高いだろう。


「ゆーて、斥候(スカウト)のオイラと僧侶(プリースト)のラファイエットに、マルズ山のレッドドラゴンを倒してこいとか、無茶苦茶すぎる話じゃん?」


 ラファイエットってプリーストなんだね。


 それはともかく、マルズ山のドラゴンは俺でも知ってる大モンスターだ。

 こいつが山から飛んできて荒らし回るせいで、マルズ地方の肥沃な大地をいつまでも開拓できないらしい。


 幾人もの勇者が挑んだけど、いまだにドラゴンが健在って事実から、戦果は推して知るべしだ。


「しかも、ルーン王国軍の力を借りるべからずって言われちゃったんだよぉ」

「……無茶すぎ。私なら逃げる」


 身も蓋もないことを言うユキナエだが、ほとんどの人の正直な感想だろう。

 ラファイエットの身の証を立てるためにクライヴが奔走するってのは、さすがに間尺に合わない。


「見捨てるわけにはいかないでしょ。オイラを頼ってきたんだし、どっちかっていうと悪縁だけど、それでも袖ふり合ったわけだしね」

「……好漢」


 肩をすくめるクライヴと、ちょっと頬を染めるユキナエ。

 いいよもう。お前らつきあっちゃえよ。


「それで前衛を探していたわけですか」


 なるほどと頷きつつ、レオンティーヌの目は戦闘衝動にらんらんと輝いている。


 ついに巡ってきたドラゴンスレイヤーへの道しるべだもの。

 しかもマジックアイテムを手に入れた直後に。

 タイミングが良いやら悪いやら。


「ま、竜殺しが俺たち目標のひとつでもあるからな。協力するのにやぶさかじゃないさ」

「……私も協力する」


 俺は肩をすくめ、ユキナエが頷いた。

 この人は一連の騒動にまったく関係していないんだけど、クライヴにほの字っぽいからね。


「ありがとう、レディ。結婚してくれ」


 ユキナエの右手を両手で包み込んで、タワゴトをさえずるクライヴだった。

 もっと俺に感謝しても罰は当たらないのよ?




 一千年を生きたレッドドラゴンに挑むのに、何の準備もしないってわけにはいかない。

 武器は俺が『サダヒデ』、レオンティーヌ『ハバキリ』というかなりの魔力を持った剣を手に入れることができたけど、それだけで戦えるわけがないのである。


「バシリスクの皮、加工に回してよかったよな」

「良いタイミングでした」


 パインコーストの冒険者ギルドへと向かいながら、俺とレオンティーヌは頷きあう。


 バシリスクとの戦いでレオンティーヌは愛用のライトレザーアーマーをダメにしてしまった。いま身につけているのは新調するのでのつなぎで買った吊るし(古着)である。

 なるべくサイズの合うものを選んではいるが、やはりジャストフィットというわけにはいかない。


 ちゃんと採寸し、自分の体力や体術に合わせたアーマーが必要になるのだ。


 で、幸か不幸か俺たちは素材を持っていた。

 バシリスクの皮っていう魔力を帯びた素材ね。

 こいつで極上の革鎧が作れるだろう。


 だけど、バシリスクなんぞと戦わなければ、そもそもアーマーを破損することもなかったわけだから、幸か不幸かという表現になってしまうのである。


「一頭まるごとだからね。革鎧を三つとローブを一つ作ってもまだ余裕は降るよ。けどまあ、予定より二つ多いからね」


 そう言ってギルド職員の中年男性がにやっと笑う。

 お金がかかるよって意味だ

 こればっかりは仕方ない。

 俺とレオンティーヌとクライヴのライトレザーアーマー、ユキナエのローヴ。せめてこのくらいマジックアイテムでないとつらい。


 できればラファイエットの分も欲しいけど、この場にいないから採寸できないし。


「『バンリュウの寝床』で素材や宝物を漁ってきましたから、これでまかなうつもりです」


 むっふーとレオンティーヌが胸を反らした。


 そういえば、胸がない話をクライヴがレオンティーヌにして、殴り飛ばされたんだったよなあ、と、どうでも良いことを俺は思い出していた。



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