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いつか最強のふたりに! -お嬢さま剣士と中堅冒険者-  作者: 南野 雪花


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第37話 最深部


『バンリュウの寝所』第三十九階層に俺たちはいる。


 ユキナエの加入により進行は順調だ。

 あらためて魔法職(スペルキャスター)って強いよね。

 魔法の援護があるのとないのでは、戦闘の難易度が段違いだよ。


「……リバナ家に伝わる話では、四十階層が最深部」


 ぼそぼそとユキナエが説明してくれる。


 最初はさ、この陰に籠もったぼそぼそした口調に若干いらいらしたけど、ユキナエなりに一生懸命しゃべろうとしてくれてるんだよな。


 もともと口下手な上に、コミュニケーション能力が低いんだ。

 稀少な魔法の才能があったことで研究に没頭することができたから、人と接するのがさらに苦手になってしまった。


 それが結局、凡人を見下すような態度にみえてしまい、他人から距離を置かれるという悪循環だ。


 もし俺が単独でユキナエと接していたら、とっくにさじを投げていただろう。

 ところがここには、思い込んだら一直線、座右の銘は「まっすぐゴー!」なんじゃないかっていうレオンティーヌがいる。


 ユキナエの人見知りや説明下手なんて、薄紙みたいに貫いてしまうんだ。

 数日のダンジョン探索で、世話の焼けるお姉ちゃんとしっかり者の妹って感じに納まってしまった、


 ちなみに俺のポジションは近所のお兄さんな。

 すごく微妙です。


「ボスとかいるのかな? ポーションの残量的にいれるかどうか」

「多少厳しくても行くしかありませんよ。再々アタックしたところで、今より状況が良いとは限りませんし」


 慎重に判断しようとする俺に、レオンティーヌがむっふーと鼻息を荒くする。


 現状、俺たちの戦闘力はかつてないほど高まっている。

 俺の武器がマジックアイテムになって格段に良くなっているし、レオンティーヌも手甲を新調してよりスマートに戦えるようになった。なによりユキナエの加入だ。


 ここで引き返して補給と補充をおこなったとして、いまより良い条件でここまでたどり着くとは言い切れない。

 ごく短い黙考。


「進もう。ここで引き返しても得るものはなにもない」


 俺は決断した。




「大広間か……?」


 四十階層へと降りる階段をすすんでいくと、だだっ広い空間が待ち受けていた。

 半町(約五十メートル)四方もあるのだろうか、とても端まで見透かせない。


「よくきたな。人間たちよ」


 薄闇の奥から声が聞こえた。


 うっわ、やだなあ。

 会話が成立するタイプのモンスターかあ。

 絶対に強敵じゃん。


 ぼ、ぼ、ぼ、という音ともに、壁際のたいまつが灯っていく。

 昼間のようにとまではいかないけれど、ランタンに頼る必要のない光量だ。


「騎士物語なら、最後の戦いみたいな演出ですね」


 不敵な笑みを浮かべるレオンティーヌ。

 やる気満々ですね。


「……魔力弾(マジックミサイル)


 もっとやる気満々な人がいたよ!

 ユキナエの杖から数発の魔法がはなたれ、声がした方へと飛んでいく。


 まともに狙いなんかつけてない。

 威嚇以上の効果はないだろうけど、魔力の光で敵の姿が明らかになった。


「最近の人間は、挨拶の手間すら惜しむのだな」


 小馬鹿にしたような言葉とともに、真っ赤な剣が魔力弾を切り裂く。


 ねじくれた角。

 四本の腕がもった剣。

 赤銅色の皮膚。

 邪悪な光を放つ眼。

 悪魔族(デーモン)である。


「デーモン相手に、わざわざ名乗るバカはいないさ!」


 距離を詰めながら俺は叫んだ。


 それは仲間たちに対して、絶対に自己紹介するなよという意味でもある。こいつらは厄介な特性をいくつも持っていて、その一つが「名前で縛る」というものがある。


 自分で名乗ってしまうと、制約(ギアス)をかけられたりするんだ。

 たとえば「誰それは動けない」とか、そういうやつね。

 これも一種の魔法。


 ユキナエは知っているだろうけど、もしかしたらレオンティーヌは知らないかもだから。


「……レッサーデーモンごときのギアスなんか、ひとえに風の前の塵に同じ」


 謎の言葉とともにユキナエが笑みを浮かべれば、なんとデーモンの腕が一本、(アッシュ)化した。

 それが全身に広がるよりはやく、デーモンが自らの腕を切り落とす。


(カウンター)制約(ギアス)か。小娘きさま言霊をつかうのだな」


 けっこうなダメージのはずなのに、デーモンの顔は余裕たっぷりだ。


「けどそいつがいつまで持つかな!」


 一連の魔法戦の間に、俺は攻撃範囲に入っている。


「疾っ!」


 裂帛の気合とともに抜き付け一閃。


「やるな小僧」


 デーモンが左右の剣をクロスさせてガードした。

 この速度の斬撃を防ぐか。


 けど、俺たち(・・)の攻撃はまだ終わっていない!

 たーんと俺の肩を踏み台にしてレオンティーヌが跳ぶ!


「なに!?」


 驚愕の表情で見上げるデーモン。

 走り込む俺のすぐ後ろにレオンティーヌがつけていたのである。もちろんブラインドの位置になるように。


「せいっ!」


 大上段から一撃。


「ぐう!」


 三本の腕のうち一本でなんとかデーモンが受けるが、落下速度まで乗せた攻撃に押し負ける。

 乾いた音とともに剣が折れ、レオンティーヌの剣が肩口に食い込んだ。


「ち」

 

 だが、舌打ちとともに彼女は攻撃を中断して再びジャンプする。

 一瞬前までレオンティーヌがいた空間を無数の魔力の矢が通過していった。


 まじかよ。

 詠唱なしで魔法使いやがったぞ。


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