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いつか最強のふたりに! -お嬢さま剣士と中堅冒険者-  作者: 南野 雪花


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第36話 魔法使い


 ちなみに、死体から魔石をえぐり出すのはユキナエが一番早くて正確だった。

 聞けば魔石の取り出しは魔法使いたちの必須科目らしい。


「なんというか、意外とアクティブだな」


 魔法使いなんて机にかじりついて勉強ばっかりしてると思った。


「……研究にはフィールドワークも含まれてるから」

「牙や爪まで剥ぎ取ったのはお見事です」


 レオンティーヌも手放しで褒める。

 オークの牙と爪は売れるんだけど、けっこう細かい作業になるから諦めてしまう人も多いんだよね。


 ユキナエは手際よく取り外しちゃったけど、俺がやったら三倍は時間がかかる。

 そこから、徐々に連携も良くなってきた。

 剥ぎ取りで充分に血を見たから、吹っ切れたのかもしれない。




「……魔力付与(エンチャント)。いって、ティーヌ」

「諒解!!」


 レオンティーヌの長剣が淡く輝き、踏み込みと同時に振るわれたそれはゴルゴンの首を一刀のもとに切り落とした。

 ごろりと転がる立派な角を持った雄牛の首。


 お見事。

 くそ厄介なモンスターのゴルゴンを、石化ブレスを吐かせることなく倒しちゃうとか。


「エンチャント良いですね。刃こぼれひとつありません」


 ほれぼれと刀身を眺めてから、レオンティーヌは鞘に戻した。

 せいぜい四半刻(約三十分)程度の擬似魔剣だが、その切れ味たるや鉄よりも硬いゴルゴンの皮膚や骨を紙みたいに切り裂いてしまうレベル。


「……切れ味だけでなく、剣の強度も上がるから」

「すごいですユキナ。魔法選択もタイミングも完璧でした」

「…………」


 率直なレオンティーヌの称賛を浴びて、ユキナエがくねくねと身をよじった。

 三十過ぎの小太りの女性がくねくね。

 ちょっとあれな感じではあるけれど、照れているのだろう。


「……すごく重い蹄の音だったから……二角獣(バイコーン)かゴルゴンだと思った」


 ぼそぼそと説明してくれる。

 どちらだったとしても、放射系の攻撃魔法では効果が薄い。ゆえに補助魔法を選択したとのことだった。


「なかなかの勝負勘だ」

「……それほどでも」


 謙遜するけど、あらためて魔法使いの先読みに舌を巻く思いである。


 魔法というのは、剣術みたいに思ったときにはもう動いている、というものではない。

 状況を見極め、どんな魔法を使うのか選択し、呪文を詠唱して発動ワードを放つ。

 こういうプロセスが必要なのだ。


 即時に発動しないってだけで、どれほど難しいか判るだろう。

 状況を見誤ると、まったく意味のない魔法を使ってしまうことだつてあるのだ。


 かといって、どんな状況でもある程度は意味がある、防御魔法(プロテクション)ばっかり使ってればいいってもんでもない。


 魔法は切り札(トランプ)だもの。

 ここぞというときプロテクションの使いすぎで魔力がからっけつです、なんてことになったら笑うに笑えない。


 その点、ユキナエは状況判断が正確だし、先読みも悪くない。

 攻撃魔法じゃなくて補助魔法を選択する度胸(・・)もある。


「なんで役立たず扱いされてたのか、ちょっと謎すぎるな」


 俺の呟きに、レオンティーヌが熱心に頷いた。


「……あなたたちは、魔法使い(メイジ)の使い方を判っているから」


 寂しそうなユキナエである。




 魔法学校(アカデミー)を卒業した彼女は、高額な学費を出してくれた主家に恩を返そうと頑張ったらしい。

 魔力弾(マジックミサイル)を十発以上も同時発射して、ゴブリンを一網打尽にしたり、おびただしい戦果もあげたそうだ。


 ところが、彼女の戦闘力をリバナ公の部下たちは誤解してしまった。

 こんなに強いなら俺たちいらねーじゃん、とね。


 んなわけあるかって俺たち冒険者だったら判るけど、不幸なことにリバナ軍の者たちは、魔法使いの使い方を知らなかった。


 援護がなければ集中なんかできないし、身を守ることに終始したら魔法を使うどころではない。

 だから魔法使いが詠唱を始めたら、誰か一人は必ずガードのために張り付くのである。

 さっきだったら俺ね。


 安全圏を作ってやることで、魔法使いははじめて性能(・・)を存分に発揮することができるのだ。

 リバナ軍の兵士は魔法使いとの連携の経験がなかったのだろう。


 そしてそれ以上にユキナエが口下手すぎる。

 彼女の口からちゃんと連携についての要望とか出してないんじゃないかな?


 それで上手くコンビネーションが取れたら、むしろ奇跡だわ。


「……アルとティーナは言わなくても判るから……らく」

「らくすんな。言語コミュニケーションは大事だぞ」

「……バカにも判るように説明しても、バカは理解しない」

「ひでえな、おい」


 魔法使いやプリーストは、基本的に魔法を使えない人間を見下している。

 これは事実だ。

 特殊な才能だからね、理解はできる。


「だめです、ユキナ。判らなかったら判るまで説明するんです。全部やり尽くして、それでもダメだったら諦めても良いです」


 腰に手を当て、ぷんすかとレオンティーヌが怒った。

 年齢ダブルスコアな相手にお説教モードですよ。


 まあ、こいつはこいつで不可能に近いような難事に挑んでるからね。女の身で騎士叙勲っていう。


「……わかった。気がついたことは何でもいう」


 こくんとユキナエが頷いた。

 あんたも、秒で説得されてるとかじゃなくてさ。



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― 新着の感想 ―
デ……ぽっちゃりおば……お姉さん優秀。
一人で殲滅しちゃったかー あくまでも補助に徹してればまだよかったかな…
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