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いつか最強のふたりに! -お嬢さま剣士と中堅冒険者-  作者: 南野 雪花


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第35話 ニューカマー


「ところで、バシリスクを倒した猛者に、ひとつ頼みがあるのだが」

「マジックアイテムをもらってしまいましたのでおいそれとは断れません。袖の下なしで相談に乗ります」


 意趣返しというわけではないが、こちらもにやりと笑ってやる。

 よほどの頼みでなければ聞きますよ。


「儂の配下でな。魔法学校(アカデミー)を卒業した才子がいるのだが、自らの優秀さを鼻にかけ、どの部署で持て余されているのだ」

「あるあるですね」


 メイジやプリーストといった魔法職(スペルキャスター)はものすごく稀少だ。

 万人に一人の才能って言われるくらいだからね。


 で、天才天才ってもてはやされるから天狗になっちゃうんだよ。


「お主らで鍛え直してもらえぬだろうか?」

「わたしたちが行くのは『バンリュウの寝所』ですよ? 命の保証はまったくできませんけど」


 こてんと小首をかしげるレオンティーヌ。

 稀少な魔法使いを失うことになってしまうかも、ということだ。


「かまわん。それて死ぬなら、あやつの才もそこまでだったというだけの話だ」

「閣下が良いなら良いんですけど……」


 不承不承に頷く。

 俺たちの連携が乱れるのは困るけど、魔法戦力の加入は正直言ってありがたい。


 あとは本人のやる気次第かな。

 リバナ公の配下ってことだから命令に否やはないだろうけど、やる気がないのについてこられても迷惑だから。




「……ユキナエ。よろしく」


 不機嫌そうな低い声。


 おおう。

 ここまで無愛想な自己紹介は、俺の人生の中でも五指に入るね。


 黒髪黒瞳の女性で中背ながら体型はやや太い。

 年齢は三十歳らしい。


 なんというか、俺より八つも年上なのに社交能力が低すぎるなぁ。

 たぶん研究ばっかりで、あんまり人付き合いをしてこなかったんだろうね。


 魔法学校(アカデミー)って四十過ぎの人も普通にいるから、三十ですでに卒業しているなら、たぶん速い方なんじゃないかと思う。


「リバナ閣下から聞いてるかもしれませんが、目標は『バンリュウの寝所』の最深部にあるという魔法剣です」

「たぶんユキナエの護衛までは手が回らないと思う。自分の身は自分で守りつつ、危ないと思ったら逃げてくれ」


 レオンティーヌと俺が口々に説明するが、反応はいまひとつ鈍い。

 頷いてるから、聞いてはいるんだろうけどね。

 大丈夫かなぁ。




「きたぞ! オークが六!」


 第三階層で早速お出迎えだ。


「ユキナエ! 先制攻撃いけそうか?」

「…………」


 後衛の位置にいる彼女の方を振り向けば、顔面蒼白にして固まっている。

 あらら。

 新人が最初にかかる病気だな。


「ティーヌ。俺は左から」

「わかりました! 右から行きます!」


 同時に踏み切り、一気に距離を詰める。

 前線の位置をぐっと前に出すために。


 はじめてモンスターと対峙してユキナエはどうして良いのか判らなくなり、立ちすくんでしまった。


 この状態のときに目前でチャンバラされると、どうして良いのか判らないまま遮二無二(しゃらむに)突進しちゃったりするんだよな。

 なので距離を開ける。


「さて『サダヒデ』。お前の力、見せてもらうぞ!」


 ぐんと距離を詰めて一閃。


「疾!!」


 名付けて、アルベリク剣法一の太刀、閃空(センクウ)だ。


 間抜け面を晒したまま、豚鬼の頭がごろんと床に落ちる。

 一拍遅れて噴水みたいに血が吹き上がった。


 まるでどっちに倒れるか迷うように揺れていた身体が、どうと後ろに倒れる。

 もちろん俺は、ぼーっとそんなもの見ていない。


 すでに次の相手に向かっている。

 二匹が等距離か。


 ならば!


 中間地点にどんと踏み込む。オークどもは同士討ちを恐れたのか、ほんの一瞬だけ攻撃をためらった。


「二の太刀! 流転(ルテン)!!」


 鞭のような軌道でひゅんひゅんひゅんひゅんと『サダヒデ』が風を切り、オークの腕や頭が血煙とともに宙に舞う。


 足を止めての範囲攻撃。

 これはハンゾロの道場で編み出した技である。


 アルベリク剣法は、カタナを鞘から抜き様に攻撃する『抜き付け』に特化している。

 ここを極めたから当たり前なんだけど、それだけでは後が続かない。


 なので、カタナを抜いた状態で使う技をいくつか編み出したのである。


「素晴らしい切れ味だ。惚れ惚れするな」


 三匹を倒し、付いてもいない血脂を飛ばして鞘へと戻す。


「わたしもはやくマジックアイテムが欲しいですね」


 そんなことを言いながらレオンティーヌが近づいてきた。

 この人ってば、俺より早く三匹片付けてるんですよ。

 魔力剣を持ったら、どこまでパワーアップするか、空恐ろしいほどだ。


「ユキナ! 剥ぎ取りやりますよ!」


 小刀を取り出し、大声でユキナエを呼ぶ。

 ふむ、ユキナね。その方が呼びやすそうだな。


 はっと我に返ったユキナエがこくこくと頷く。

 近づいてくる足取りもちょっと震えてるね。


 ま、しゃーないしゃーない。

 誰でも最初はそんなもんだ。


「びびったか?」


 予備の小刀を手渡しつつ、にやっと笑ってやる。


「……べつに。こんなのたいしたことないし」

「そいつは立派だ。俺と幼なじみの初戦なんかひどかったぜ。漏らしたからな」

「漏らしたんですか!? アル!」


 すぐに食いつくレオンティーヌ。

 意外とあなた下ネタ好きよね。


「十歳のときだぜ。普通は漏らすでしょう」

「……それはどうかな……」


 ユキナエが笑う。少し無理した笑いではあったけどね。




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ティーヌちゃん、おもらしに食いつかないであげてもろてw
「……べつに。こんなのたいしたことないし」 太めの30才。
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