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いつか最強のふたりに! -お嬢さま剣士と中堅冒険者-  作者: 南野 雪花


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第34話 領主の呼び出し


 領主さまからの呼び出しだってさ!


「悪い予感しかしない」

「奇遇ですね、アル。わたしもです」


 俺たち、パインコーストとは縁もゆかりもない外国人なんですよ。官憲に追われるようなこともしてないんですよ。


「領主の息子がティーヌを見初めたとか」

「それは予測の最悪ですね。国際問題になりますよ」

「デスヨネー」


 レオンティーヌはバシュラール侯爵の娘である。順位としてはものすごく低いけどルーン王国の王位継承権だってあるのだ。

 そんな女性に他国の貴族がコナをかけたらどうなるか。


 ど平民の俺でもやばいって判る。


「むしろ、アルがお姫様に見初められた方が、お話としては面白いですよ」

「面白くすんな」

「ギャクタマっていうらしいですよ。ヒーズルでは」

「ろくな知識を仕入れてないね。おまえさん」


 馬鹿話をしながら領主の城へと向かう。

 色恋は上段としても、ギルドを通しての呼び出しってことは、鑑定を依頼した魔法の指輪がらみの話だと思うんだよね。


 なんか曰く付きのアイテムなのかねぇ?




 パインコーストの領主はリバナ公という御仁で、このあたり一帯をぐるーっと支配しているような実力者らしい。


「最も王位に近い男と言われているらしいですね」

「世襲じゃないってのが、まず驚きだけどな」


 ヒーズル王国というのはちょっと変わっていて、六人の選王公の投票によって次の王が決まるらしい。


「実質は世襲ですけどね。力を持っていれば自分の子供が次の王に選ばれるように工作できますし」

「六人の絶対過半数は四。自分の家を除いて三家を抱き込めば王位は安泰ってことか」


 抱き込むための力を誇示しないといけない。

 単なる世襲よりは良い気がするな。


「まずは礼を言わせてくくれ」


 城に参内した俺たちは、ほとんど待たされることなくリバナ公の執務室に通された。

 陳情の間とかじゃなく執務室ってのは、完全に私的な用事ってことだろう。


「この指輪な。わしの次男の持ち物だったのだ。「建国伝説の謎、一端なりと解き明かしてみせる」と家を飛び出した馬鹿息子のな」

「そうでしたか……」


 そう語る初老の大貴族に俺たちは低頭する。

 奇しくも遺品を持ち帰ることになったわけだ。


 冒険者なんぞをやっていればこういう経験がないではないけど、いつもながらどういう顔をすればいいか判らないね。


「バシリスクにやられたのだな」


 大きなため息。

 単身(ソロ)だったとしたら、バシリスクとの遭遇はほぼ死と同義だ。


 俺たちは二人だったから勝てたけど、かなりのダメージを受けたし、軍隊なんかでも何人か戦死者が出る。

 そういう次元のモンスターなのだ。


「指輪は返還しますね」

「それでは筋が通らない。戦利品は倒した者の権利だからな」


 控えめな提案したら断られた。

 や、それはそうなんだけど、遺品だもの。

 遺族に返してあげたいじゃん。


「ではリバナ閣下、買い上げていただくというのはいかがでしょうか」


 困ったな、という顔の俺に、レオンティーヌが助け船を出してくれた。

 上手い手である。

 これなら筋も通るし、どちらの顔も潰れない。


「金銭で済ませる無作法を、貴殿らは許してくれるのか」


 すこしだけほっとした顔のリバナ公だ。


 たぶんね、魔法の指輪を返還してくれないか、という交渉のために俺たちを呼んだんだよ。

 もちろんごねられることを覚悟してね。


 たださ、いくら当然の権利でも遺品を返還しないなんて意地悪は、逆に冒険者の流儀じゃない。


「値段をつり上げる気もありません。額は公のお気持ちでけっこうです」


 ちょっとかっこつけて言っちゃったけど、ちょっとは計算してるよ。

 大貴族のお気持ちが、金貨一枚なんて話にはならないからね。


「……愚息は運が良かったのだな。死してなお志ある若者に関わることになろうとは」


 ふっと笑うリバナ公。

 このあたり、ヒーズル人の死生観って変わってる。


 死んだ後のことをすごく重視するんだ。

 卑劣に生きるより、正道を貫き潔く死のうとする。


 死して名を残す、だったかな。

 だから、次男さんが死んだということより、強敵と戦ったのだということに重きを置くし、遺品がちゃんと届いたということに感謝もする。


 ちょっとだけ考えた後、ひとつ頷き、リバナ公は部屋の奥『トコノマ』と呼ばれる場所に飾ってあったカタナを手に取った。


「やはり、金銭で済ませるのは儂の気が済まぬ。これを受け取ってくれぬか?」


 そう言って俺に差し出す。

 おいおい。大貴族が部屋に飾るような剣だぞ。逆に値段なんかつけられないだろう。


「『サダヒデ』。我が家に代々つたわる霊刀だ。受け取ってくれるな? アルベリクよ」

「いやいやいやいや。受け取れるわけないじゃないですか。売ったら一財産なんてレベルのモノじゃないですよね、これ」


 霊刀なんて、あきらかに魔法の品物(マジックアイテム)じゃん。

 慌てて手を振る俺に、リバナ公がにやりと笑った。


「儂の気持ちで良い、と、先ほどお主は言ったな」

「言いましたけど……」

「二言しちゃうんだ? お主ほどの傑物が? 二言しちゃっても良いんだ?」

「うぐぐぐぐ……」


 悪戯っぽく笑う初老の男に、一言も言い返せなくてうなってしまう。

 分不相応すぎるって……。




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― 新着の感想 ―
へーそーかー 二言しちゃうんだー って、随分と乗りが軽いんですけど!
殿、お戯れが過ぎますぞ。
「儂の気持ちで良い、と、先ほどお主は言ったな」 「言いましたけど……」 「二言しちゃうんだ? お主ほどの傑物が? 二言しちゃっても良いんだ?」 「うぐぐぐぐ……」 笑った
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