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いつか最強のふたりに! -お嬢さま剣士と中堅冒険者-  作者: 南野 雪花


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第32話 魔法の指輪


 だいたいどこのダンジョンでもそうなんだけど、深い階層に行けば行くほどモンスターは強くなる。


「し……しんど……」

「大丈夫ですか? アル」


 地下十階層、苦戦の末バシリスクを倒し、石化した左腕に回復薬をかけながら大きく息を吐いた俺を、歩み寄ってきたレオンティーヌが労ってくれた。


 彼女の鎧も何ヶ所か石化しているし、マフラーなんかただの石の棒になってしまっている。


 石化光線の直撃を受けなかっただけマシというものだけど、ハードレザーもマフラーも新調するしかないだろう。


「なんとか。避けるのが一瞬でも遅れていたら左腕だけじゃなく全身いかれただろうな。危なかった」


 八本の足をもった牛並の大きさのトカゲの厄介さは、なんといっても邪眼から放たれる石化光線だ。

 俺は左腕を、レオンティーヌは防具を石にされてしまった。


 勝負は最後の瞬間までどっちに転がるか判らなかったのである。


「長いマフラーをたなびかせて走ったら格好いい、くらいの理由でつけていたものですが、うまいことバシリスクの視線を誘導できましたね」


 マフラーの無事な部分を裁ち切り、床に捨てる。

 こつんという軽い音を立て、それは砕け散った。


 バシリスクは、たなびくレオンティーヌのマフラーを視てしまい、結果として石化光線は正確性を欠いた。

 これが俺たちの勝因のひとつだといっていい。


 ぜんぜん捉えられないレオンティーヌにいらつき、俺への警戒がおろそかになった。

 その隙を突いて最接近し、致命的な一撃を与えたのである。


 ただ、悪あがきの一撃を食らってしまった。


「アルの反射速度だから左腕だけで済んだともいえますけどね」

「や、まじで胆が冷えたよ。死んだかって思ったもの」


 回復薬で元に戻った左腕の感覚を確認しながら、俺は苦笑する。

 ハンゾロの道場で鍛えていなかったら、たぶんかわせなかったんじゃないかな。


「どうします? 進みますか?」


 小刀でバシリスクの眼球を慎重にえぐり出しながらレオンティーヌが訊ねる。

 残酷というなかれ、バシリスクの目玉はものすごく高値になるのだ。


「進むのは無理だろう。ハイポーション使ってしまったし」


 ちぎれた手足だってくっつけるという優れものだが、いかんせん値段が高いため一本しか携帯していない。

 ありていに言って切り札の回復薬なのである。


 これを使ってしまった以上、先に進むリスクが跳ね上がってしまう。


「それなら鎧を捨てていきましょう。防具の体をなしてませんから」


 目玉を丁寧に収納袋に入れ、次は慎重に皮を剥いでいく。

 いっそこいつでハードレザーを仕立て直しても良いかもだな。


「売るか利用するか、そこが問題だ」

「バシリスクレザーアーマーは悪くないかもですけど」


 レオンティーヌもちょっと悩んでる。

 皮を売れば、かなり上等なレザーアーマーが誂えられるが、この皮で作った革鎧はその性能をはるかに上回るだろう。


 なにしろ火炎耐性のあるマジックアイテムだもの。


「問題は値段ですよね。目玉を売ったお金でペイできれば良いですけど」

「うーむ。魔石次第かな」


 左腕がちゃんと動くことを確認し、俺も小刀を取り出してレオンティーヌの作業を手伝い始めた。


「保存できる導具があれば胆も持って帰れるんだけど、もったいないよな」

「伝説のアイテムポックスですか?」


 俺の嘆きにくすりと笑うレオンティーヌ。

 ものすごい量を収納でき、入れたときの状態のまま時間が経たず、しかもアイテムボックス以上の重さになることはないってやつだ。


 その希少性といったら、魔剣なんか比じゃないってレベル。


 ほしい。

 でもたぶん、一生お目にかかることはないだろうね。


 小刀を動かしていく。

 コツンとなにかが刃先に触れた。


 ん?

 胃のあたりだよな? ここ。




 胃を裂くと中から指輪が出てきた。


「マジックアイテムですかね?」

「だろうな」


 レオンティーヌの問いに答えながらつまみ上げる。

 白銀の台に青い宝石。


 モンスターの胃袋ってのはものすごく強くて、食べた人間の骨どころか鎧とかまで消化してしまうんだよね。


 消化されずに残ってるってことはマジックアイテムで間違いないだろうけど、俺もレオンティーヌも魔力探知なんかできないから、どんな種類のマジックアイテムかは判らない。


「帰還の予定だったけど、ますますその必要が出てきたな」

「ですね。得体の知れないマジックアイテムを長期間持ち歩くのは避けたいです」


 マジックアイテムって、往々にして呪い(カース)がかかってたりするんだよな。

 でもその呪いが稀少なものだったりすると、ものすごく高く売れたりもする。


 持ってるだけで生命力を吸われるっていう厄介極まりない呪いをかかった指輪を、回復薬をがぶ飲みしながらなんとか持ち帰って、巨万の富を得たって話もあるくらいだ。


 この指輪にどんな代物かは鑑定してもらわないと判らない。

 で、鑑定は宿場町とかでは無理だから、それなりの都会にいかないといけない。


「さすがにサクーイまで戻るのは効率が悪すぎるな」

「パインコーストの街ですかね。ここから一日の距離ですし」


「ハンゾロ師匠が、厄介な領主って言ってたからできれば避けたかったけど」

「背に腹はかえられないですよ」


 地図をのぞき込みながら、今後の方針を決める俺たちだった。




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