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いつか最強のふたりに! -お嬢さま剣士と中堅冒険者-  作者: 南野 雪花


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第31話 バンリュウの寝所


 修行は一ヶ月ほどで終わった。

 一年くらいかかると思っていたから、これは嬉しい誤算である。


 そして修行が終われば、お楽しみのダンジョンアタックだ。

 いやまあもちろん、剣術を磨くのだって楽しんだけどね。俺たち冒険者は、やっぱり冒険がしたいんですよね。


 生きるか死ぬかの冒険が、伸るか反るかの大博打が、オールオアナッシングのスリルが、たまらなく好きなんですわ。

 そりゃあ世間様から大馬鹿野郎あつかいされますよね。


「けれど、ヒーズルの伝説に登場する剣なのに、片刃の曲刀じゃないのは不思議ですよね」


 件のダンジョンへと向かう道すがら、レオンティーヌが疑問符を頭上に浮かべた。

 それはたしかに。


 両刃の剣だって話だからね。

 つまり伝説の時代では剣が主流だった。いつの頃からかカタナになっていった。そういうことなのかもね。


「わたしは剣の方が使いやすいから良いですけど、せっかくだからアルもカタナを新調したらどうですか?」


 もう伝説の魔剣を手に入れる気まんまんのレオンティーヌだ。

 空振りに終わる可能性だってあるのに。

 もちろん途中で死んじゃうこともあるだろう。


 ただ、失敗することを考えて挑んだって仕方ない。

 やるからには絶対に上手くいくつもりでやるもんだ。


「良いアイデアだけど、カタナって高いんだよ」


 じつはレオンティーヌに言われるまでもなく新調しようとしたのだ。

 で、武器屋にいってしょんぼりしたわけさ。


 俺が使いやすい長さのカタナ、打刀っていうらしいんたけど、こいつ一振りで並のブロードソードが五振り買えちゃうんですわ。


 買えないわけではないけれど、財布がだいぶ軽くなってしまう。

 なのでちょっと保留中。


 もしこのダンジョンアタックでお宝とかゲットできたら、買っちゃっても良いかなと思ってる。




 サクーイの街から西に四日。

『バンリュウの寝所』と呼ばれるダンジョンがある。幡竜ってのはとぐろを巻いてるドラゴンのことらしい。


「オリエントドラゴンですよね。そんなに長いのは」

「そうそう。あいつら羽もないのに飛ぶんだよな。謎すぎる」


 ドラゴンと一口に言っても何種類もいる。俺たちがぱっと想像するやつは、オクシデントドラゴン。四つ足で羽があってぶっとい尻尾があるやつだ。


 オリエントドラゴンはものすごく長い身体を持っていて、四肢は飾り程度。イメージとしては超巨大な蛇に近いかもしれない。


 どっちもとんでもない強敵であることには違いはないんだけどね。


「いるんですかね? ドラゴン」

「いたら逃げるしかないけどな、今の俺たちの実力じゃ」


 レオンティーヌの問いに肩をすくめる。

 いないとは思うけどね。

 伝説にあるドラゴンは倒されたらしいし。


「仮にいたとしても、ヒーズルで倒したんじゃ騎士叙勲には繋がらないでしょうし」


 鼻息を荒くするレオンティーヌ。

 戦うどころか、倒す気まんまんだ。


 そう長くもない付き合いで判ったけど、この娘けっこう好戦的である。

 戦っても逃げても良いって局面だったら、間違いなく戦うタイプだ。


「まだ勝てないって言ってるそばから」

「いえいえ。心はいつでも戦闘準備完了です」


 そんな会話を繰り広げながら『バンリュウの寝所』へと侵入する。


 通路の幅は、二人が並んで戦ってもそんなに窮屈じゃない感じ。

 これまたいつものことながら、薄ぼんやりと明るい。

 入り口からちょっと進んだところでしっかりと目を慣らす。


「さっそくお出迎えですよ、アル」

「ゴブリンが四。どこの国のダンジョンでも最初に出てくるのはだいたいこいつらだな」


 ふっと笑う。

 親の顔より見た、なんて表現そのままだ。

 まあ俺捨て子だったから、親の顔知らないんだけどね。


「数が多いですからね。倒しても倒しても減らないですし」


 剣を抜こうとするレオンティーヌを、手を上げて制する。俺にやらせてくれ、と。


 身体は動くようになった。

 後は実戦の勘を取り戻したい。


 正面にゴブリン。

 距離は十間(約十八メートル)といったところ。

軽く息を吸う。

 ゆっくりと胸の隠し(ポケット)に手を滑り込ませる。


「疾!」


 裂帛の気合とともに投擲された手裏剣が四本。


 同数のゴブリンの眉間に、正確に突き刺さる。


 滑稽なほど軽い音を立て、ゴブリンどもが通路に倒れた。


「お見事」


 ニコッと笑ったレオンティーヌが剣を鞘に戻す。俺がしくじったときに備えていてくれたのだ。


「ふー、ちょっと緊張したぜ」

「かけ声変えたんですね?」


「シノビってのはかけ声として格好悪すぎると気づいたからな」

「疾の方が短いし、良いと思います」


 ヒーズルにきて知ったことだけど、シノビというのは職業のことなんだってさ。

 俺たちでいえば、剣士とか叫んで投げてるみたいなもの。

 さすがに格好悪すぎるでしょう。


 でも無言だとタイミングが取りにくいんで、違うかけ声にしたのである。


「それにしても四匹同時に倒すなんて、アル、腕あがってるんじゃないです? 前より」


 ざくざくとゴブリンの死体を裂いて魔石を取り出しながら、レオンティーヌが褒めてくれた。

 クズ魔石だけど、売れば一個で昼飯代くらいにはなるからね。


「ああ。同時に五つくらいなら狙えるようになった」

「間合いが詰まるまで、アルの飛び道具でけっこう削れそうですね」


 戦略の幅も広がるというものだ。




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アイエエ……
おお、掛け声が、シノビッ!じゃなくなってるw 良かったw
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