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いつか最強のふたりに! -お嬢さま剣士と中堅冒険者-  作者: 南野 雪花


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第27話 意外な展開

「とにかく、代官さまの判断を仰ぐしかありませんね」


 ふうとレオンティーヌがため息をついた。


 ことは軍事に属すること。俺たち冒険者が判断するような域を簡単に跳び超えてしまっている。


 ホルクレルの街の代官に事情を説明し、対応はシティコマンドなり正規軍なりに任せるしかないだろう。


 レオンティーヌは事態が自分の手を離れてしまうのが悔しそうだけど、国家レベルの面倒ごとに首を突っ込んでいたら命がいくつあっても足りやしないさ。


「もしよろしければ、アルテナでも同じ話をしていただけないでしょうか」


 控えめな提案はオリフィエルから。

 セムリナ側の城塞都市である。当然の警戒だろう。


 モンスターは国を区別して襲ったりしないし、セムリナ商人だって数多くルーン国内を旅している。


「ゴブリンがトプルーネ大河を渡れるとは思いませんが、万が一ということもありますので」

「良いけど、顔を繋いでもらえるか?」


 異国人の俺たちが代官に会わせろと言ったところで門前払いされるだけだしね。

 当然ですと頷くオリフィエル。


 報告しておしまい。このときは全員がそう思っていた。

 しかし、事態は思ってもいない方向に動き始める。





 ホルクレルの冒険者ギルドで代官に奏上したい議があるって話をしたんだよ。

 街道でモンスターが旅人を襲う件についてってね。


 そしたら、すぐに血相を変えたシティコマンドが飛んできて、あれよあれよという間に、俺とレオンティーヌとオリフィエルの三人は、代官ジェデオンの客間に通されていた。


 そこで待つことしばし。

 壮年の男性二人が入ってくる。


「代官のジュデオンだ。よろしくな」

「アルテナ市の代官、エイクマンである」


 一方は銀髪美髯で背の高い男。他方はやや背が低い頭頂部の薄くなった男だ。


 二つの城塞都市のトップがそろい踏みとはね。

 俺たちが想像していたより状況が逼迫しているのか。


「アンジェリクの冒険者、アルベリクとレオンティーヌです」

「皇都デ・ブラュネの商人で、オリフィエルと申します」


 こちらも名乗るが、代官たちは形式的に顎を引いただけだった。

 まあ身分差があるから、こればかりは仕方ない。


「件のモンスター襲撃について、重大な情報を持っているとのことだったな」


 身振りで椅子を勧めつつ、ジュデオン代官が訪ねてくる。

 形式的な世間話も入れずに本題に入るのは、やはり焦りのあらわれか。


「まずは、こちらをご覧ください。ゴブリンから奪い取ったものです」


 そう言って俺は冊子をテーブルに置く。


「これは……!」

「なんと……」


 ジュデオン代官とエイクマン代官の目が見開かれる。


「モンスターの被害で、あるいは似たような事例がありますか?」


 水を向ければ、二人の代官は重々しく頷いた。


「車輪に棒を突っ込まれるというのが多いな。なぜモンスターにそんな智恵があるのか、これが答えというわけか……」

「文字が読めなくても絵なら判ります。何者かがこれを作り、モンスターの手の届くところに置いた、ということなのだと思います」


 何者か、という部分を俺とレオンティーヌはドイルだと予測している。

 だがそれを伝えるのはやめた方が良いだろうと判断した。


 ひとつには、他国を貶める意図があるのかと思われる可能性が高いこと。

 もうひとつは、あくまでも状況からの予測に過ぎないということだ。ちゃんと調べてみたら、まったく違う結論になるかもしれない。


「この『指南書』に載っている襲撃方法をとってくる確率が高いなら、守る側は対応可能かと」

「その通りだ。アルベリクとやら、よくぞ持ち帰ってくれた」


 そういって褒めてくれるのはエイクマン代官だ。


「褒美をつかわそう。なにか望みはあるか?」

「ヒーズルへの旅の途中でして。セムリナを通過する許可をいただければ、と」


 通行証とかもらえたら、いちいち関所で通行料を払わなくて済むかも、なんて邪なことを考えながらねだってみる。

 するとエイクマン代官は磊落(らいらく)に笑った。


「その程度は無論かまわぬが、せっかくなら船で向かったらどうだ? 陸路よりはるかに速いぞ」


 セムリナ皇国といえば世界に冠たる海運の国だもんね。

 でも、お高いんでしょう?


「オリフィエルとやら、デ・ブラュネからヒーズルのサークイにまでの船を手配してやるが良い。むろん費用は皇国政府に請求せよ」

「ははっ」


 一瞬呆然としたがすぐに低頭する。

 返事が踊るように弾んでるね。


 一気に皇国の中枢部にコネクションができるのだから当然だ。

 国境の城塞都市の代官なんて、外交をおこなう権限まで与えられるレベルだからね。爵位持ちの貴族に匹敵する発言力を持っている。


 そんな人物からの紹介状を携えての交渉だ。

 パイプを築けないとしたら、商人として無能すぎるというものだろう。


「アルベリクさん。しばらくよろしくお願いします

「こちらこそ」


 商人の流儀で差し出され右手を握り返す。


「旅の無事を祈っているぞ」


 エイクマン代官が言い、ジュデオン代官は無言で頷いた。

 用事はこれでおしまいである。


 あとは、逗留している宿に紹介状が届くのを待って出発するという運びになるだろう。

 物資の補充やらなんやらで、明後日くらいかな。



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