表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか最強のふたりに! -お嬢さま剣士と中堅冒険者-  作者: 南野 雪花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/32

第26話 なんかもってた


 ぐっと弓を引き絞る。

 手裏剣を投げられないからね。途中で寄った宿場町で新調したんだ。


 裏打ちもなんもしてない強弓だけど、俺の腕だって達人からはほど遠いから、実用に耐えればそれでいい。


 ゴブリンは五十匹ほど。

 なかなかの大集団だ。


 十間(約十八十メートル)ほどの距離まで引きつけて放つ。


 やや弓なりの軌道を描いて飛んだ矢が、先頭のゴブリンの頭を射貫き、もんどり打って倒れる。


 おおー。

 けっこう当たるもんだね。

 こんど射的屋に遊びに行ってみようかな。


「放て!!」


 そして女衆に指示。

 統制もとれておらず、勢いもたいしたことないけど、向こうも接近してきてるから、一匹、二匹と倒れていく。


 そうこうしているうちに互いの距離が縮まり、接近戦の間合いになった。


「そんじゃ、いきますかね。ティーヌさんや」

「安んじてお任せあれ」


 俺は左側から、レオンティーヌは右側から、弧を描くように間合いを詰める。

 どちらを迎撃するが、一瞬だけゴブリンどもが迷った。


 そしてその一瞬が命取り!

 ぐっと加速した俺とレオンティーヌが同時に斬り込む!


 力任せに振るった剣がゴブリンの鎖骨を割り、胸のあたりまで切り裂いた。噴水みたいに血が吹き上がる。

 前だったらもっとスパって斬れてたんだけどね。


 いまのぶった切るってやり方だと、斬撃というより打撃だよね。

 いっそ武器を持ち替えようかしら。


 なんて余計なことを考えながら戦えちゃうのは、ゴブリンが弱いから。


「アル! 指示を出してるっぽいやつがいます!」


 とんと背中合わせになったレオンティーヌが叫んだ。

 彼女の視線の方を見ると、戦闘に参加せずにゲギャゲギャ叫んでるゴブリンがいる。


 たしかにあいつの指示で他のゴブリンが前進したり横に展開したりしてるようにも見えるね。


 でも、そんなことある?

 あいつらバカだよ? 作戦行動なんかとれるの?


「やっぱり教えた奴がいるってことか」

「生け捕りにできるか、やってみます」


「無理はするなよ。できれば、くらいで良いんだからな」

「諒解!」


 くんと加速するレオンティーヌ。

 ゴブリンどもの間を縫うように駆ける。


 もちろん走るだけでなく、一匹に対して一度だけ剣を振るう。致命傷になればよし、そうでなくても足を止めることはない。


「速い! まるで稲妻だ!」


 後方で打ち漏らしの処理をしていた男衆が感嘆の声を上げた。

 まさに神速だよな。


 初めて出会ったときも速かったけど、実戦経験を積んでいくうちにより動きが正確に、理にかなってきた。


「と、見とれてばかりもいられないな」


 俺も前進する。

 レオンティーヌみたいに高速でなく重量感をもって、堂々と。


「さあこい! モンキー野郎ども!! 束になってかかってきやがれ!!!」


 時折シャウトを入れるのは、もちろんゴブリンどもの注意を俺に引きつけるためだ。


 粗末な石斧を振りかざしてつっこんできたゴブリンの頭を。力任せに叩き潰す。右から接近する奴はがっつり蹴り飛ばしてやる。


 うーむ。

 レオンティーヌに比べると、今ひとつどころか七つか八つくらい華麗さに欠けるね。


 あとけっこう疲れる。

 俺もどっちかっていうと技で戦うタイプだからね。

 力任せってのは、どうにも性に合わない。


 本気で得物を変えた方が良いかもだな。




 五十匹以上いたゴブリンだけど、二十匹もやられると完全に及び腰になった。


 この臆病さが、ゴブリンを絶滅させることの難しさなんだよね。

 自分たちから襲いかかってきたくせにすぐ逃げるんだ。


「とう! 召し捕ったり!!」


 巧みに移動と斬撃を繰り返していたレオンティーヌが、ついに指揮官っぽいゴブリンをとっ捕まえた。

 捕まえたっていうか剣の腹で殴りつけて気絶させただけ。


 それを召し捕ったというかどうかはともかくとして、ゴブリンどもの戦意は一気に霧散した。

 哀れっぽい声を上げながら逃げ散っていく。


 ふむ……やはりあのゴブリンが指揮官なのか。

 ()を潰された途端に烏合の衆に成り下がってしまうのは、人間の軍隊でも良くある話だけど、ゴブリンの潰走っぷりを見てるとそれを連想しちゃうよね。


「アル。こいつ、こんなものを持っていました」


 小鬼の足首を鷲づかみにしてずるずると引きずってきたレオンティーヌが、ほいっと本のようなものを投げ渡してきた。


 いや、本というには薄いな。十ページくらいしかないから冊子とでもいうべきだろう。


「これは……」


 中身を見て絶句してしまう。


 図解だった。馬車の車輪に棒を突っ込んだら動かなくなるとか、昼間は護衛がいないとか、そういうのが絵で描かれている。

 これなら文字が読めなくても何をすれば良いか判る。

どうすれ襲撃が成功するのか判る。


「やばいだろ……これ……」


 こんなものが流布してしまったら、モンスターどもは効率的(・・・)に襲撃するようになってしまう。

 いや、もうすでにそういう状況になりつつある。


 ぶるっと身震いした。


 ゴブリンだけじゃない。コボルトやオークみたいな群れるタイプのモンスターが智恵(・・)を得たらどうなる?


「もうモンスター退治ではなくなりますね。戦争です」


 レオンティーヌの言葉が、ほうき星みたいに不吉な尾を引く。

 


※著者からのお願いです


この作品を「面白かった」「気に入った」「続きが気になる」「もっと読みたい」と思った方は、

下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして評価していただいたり、

ブックマーク登録を、どうかお願いいたします。


あなた様の応援が著者の力になります!

なにとぞ! なにとぞ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
これはまさか!? 知っているのか雷電。 聞いたことがある、猿でも……いや、ゴブリンでもわかる図解シリーズ!!
『図解:人族の襲い方』とか嫌すぎる!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ