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いつか最強のふたりに! -お嬢さま剣士と中堅冒険者-  作者: 南野 雪花


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第24話 商人オリフィエル


 俺に比べたらレオンティーヌの戦いは優雅だ。

 一閃で一匹、二閃で二匹。

 鋭いステップからの斬撃でゴブリンの死体を量産していく。


 舞いのように華麗でありながらまったく容赦がない。殺すこと、勝つことだけを突き詰めた戦場の剣だ。


 それが美しく見えるのは、相手を殺すためだけに鍛えられた剣が美しいのと同じだろう。

 機能を極めれば、それは美となる。


 俺が四匹、レオンティーヌが七匹ほどを片付けたあたりで、ゴブリンの戦意が明らかに低下してきた。


 びびりだしたね。

 それが弱敵の弱敵たる所以だ。


「そろそろゴブリンどもが逃げ始めるぞ! 弓矢を使えるものは追撃用意!」


 声を張り上げる。

 荷台の上の女衆がはっとしたように弓に矢をつがえる。


 素人に毛が生えたような動きだけど、それども追撃をおこなわないよりはずっと良い。

 それを契機にしたように、わっとゴブリンが散り始める。


「深追いすんなよ! 後ろから小突き回す程度にしておけ!」


 これは男衆への指示だ。

 調子に乗って追いかけ回して必死の反撃をうけたら馬鹿らしいからね。そのあたりの見極めが大事。


「助かりました。あなたたちは命の恩人です」


 ゴブリンが逃げ散ると、ひとりの中年男が声をかけてきた。

 服装から見て商人かな。


「間に合って良かったよ。怪我してるひとはいないか? ポーションあるけど」


 大丈夫との答えに安心する。


 昼間の街道でゴブリンに襲われて死ぬというのは、まさに死んでも死にきれないってやつだ。

 夜は危険だから、単独行は危険だから、昼間に馬車で移動しているわけだからね。


「それにしても、真っ昼間に襲撃とは恐れ入るな」

「私どもも驚きました。突然馬車が動かなくなったと思ったらこれです。横転しなかっただけでも幸運ですが」


 オリフィエルと名乗った彼は、セムリナ皇国の商人で仕入れを終えて国に戻る途中だったという。

 彼を含めた男女八人の隊商というのはべつに珍しくないし、奥さんとか兄弟とか子供で構成されてるってのも良くある話だ。


 三十匹以上のゴブリンに襲われたが、荷物も奪われず怪我人も出なかったのは不幸中の幸いだろう。


 やっつけた二十匹分くらいのゴミ魔石なんて、八人でちょっと良いもの食べたら亡くなっちゃう程度の価値しかない。

 怪我人とか出たら大損害だよ。


「後輪に棒だよな。俺たちもたまげたんだ」


 俺の言葉にレオンティーヌがこくこくと頷く。


「おふたりが通らなかったらどうなっていたか」


 ふるふるとオリフィエルが頭を振る。

 ゴブリンなんて鬼族の中では最弱だし身体も小さいけど、普通に人間を食べるからね。


 あと、なぜか人間の女を犯そうとする。


 種族的にものすごく遠いから混血なんか不可能なのに。

 感覚的には人間が牛とかを犯すような感じかな? 美的感覚もまったく違う、混血もできない。意味不明すぎるよね。


 ともあれ、前線で戦っていた男衆四人がやられちゃったら、荷台にいた女衆の運命はひどいことになっていただろう。

 その意味でも、俺たちの登場はタイミングが良かった。


「それでその、もしよろしければなのですが、私どもと同道をお願いできませんでしょうか」

「もちろんかまわないよ。俺たちもセムリナに向かっていたんだ」


 俺は二つ返事で頷いた。

 もったいぶるような局面でもない。ただまあ護衛する以上、無料というわけにはいかないけどね。


「方向も一緒だし、食事と宿はオリフィエルさん持ちで、一日銀三で良い」


 戦士二人を銀貨六枚で雇える。護衛としては破格の安さだ。

 これはギルドを通していないからできる話。


「助けていただいた上にそんな価格では、私どもが鼎の軽重を問われます。金貨一枚をお支払いいたします」

「もらいすぎだよ。方向が一緒だって言っただろ、銀四」

「銀貨六枚。これ以上は譲れませんぞ」


 交渉しつつ、俺もオリフィエルも不意におかしくなって笑ってしまった。

 普通は逆だよね。俺たちが値段をつり上げるものだ。

 なんで商人側が値段をあげようとしているのかって話。


「あなたのような好漢に助けられたというのは、幸運の神の導きでしょう」


 右手を差し出してくる。

 契約成立のとき、商人たちは握手を交わすのだ。


「俺たちも行き先の情報を得られるからね。お互い様さ」


 ふっと笑い、俺は握り返した。




「それにしても気になりますよね。車を止めた悪知恵もですが、真昼の襲撃そのものも、ゴブリンにしては知恵が回りすぎです」


 馬車の右隣を歩きながらレオンティーヌが話しかけてくる。

 護衛だからね。女衆と一緒に荷台の上ってわけにはいかないのだ。


「モンスターなんて本来は夜行性だしな」


 俺は肩をすくめる。

 夜は人間の領域ではない。


 どうしても夜に旅をしないといけない場合は、しっかり護衛を雇ってガッチガチに周囲を固めて行動する。

 で、そんな状態だとゴブリンが襲ってくる余地はほとんどないんだ。


 あいつらの怖さは奇襲だもの。

 警戒してるところに襲いかかってきたって返り討ちになるだけ。


「普通は護衛なんかつけない昼間に大集団で襲っちゃえば勝率高くね? なんて逆転の発想をゴブリンの頭でできると思うか?」

「後ろがあるってことですよね」


 難しい顔でレオンティーヌが腕を組んだ。



 

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