第17話 頭目からの課題
こざっぱりとした瀟洒な服装にきちんと整えられた口ひげ。茶色い髪に涼やかな目元。
こんなに紳士然とした野盗の頭目はいないよね。
「僕たちの仲間になりたいということだったけど、いいよって二つ返事はできないんだ」
ラファイエットと名乗った頭目の主張は、至極当然のものだろう。
べつに彼らは仲間募集の広告なんか出してない。
勝手に押しかけてきた俺たちを歓迎する理由なんてないからね。むしろ門前払いされなかっただけでも、歓迎の部類に入れて良いレベルだ。
「じつは僕たちは武闘派でね。トーリアンのシティコマンドを二度も破ってるんだよ」
「ああ。それを聞いたから道をともにしたいと思った。しかも一人の戦死者も出していないというではないか」
謙らず、武人みたいに堅苦しい言葉使いをする。
武辺に見えるようにしよう、というのがレオンティーヌのアイデアなのだ。俺の東方風の黒髪も効果的だろうし、と。
「仲間として迎えるには、やはり君たちの実力を見たい。北に一日のところにある遺跡にキマイラが住み着いてるんだ。どうだろう? こいつを討伐してみてくれないか?」
「試金石というわけか。望むところ」
堂々とした態度で俺は頷いた。
キマイラというのは、ドラゴンと獅子と山羊の頭をもった巨大なモンスターだ。火を吐き魔法を使い、そのうえ蝙蝠のような翼で空を飛び尻尾は毒蛇。
ありていにいって強敵だが、俺とレオンティーヌのコンビはマンティコアを倒した経験がある。
危険さ凶猛さではキマイラにおさおさ劣らない相手だ。
まして今回はクライヴもいるのだから、勝算はそう低いものではないだろう。
「しっかし、武闘派とは恐れ入るね。武闘派じゃない軍隊がいたら見てみたいもんだよ」
「世の中には、相手に剣を突きつけて「話し合おう」と言う人もいますからね」
「いるいる。もし攻めてきたら反撃するぞって言ったら、なんて好戦的な奴だって非難するのな」
「世間は矛盾と不条理に満ち満ちています」
遺跡とやらに向かう道すがら、クライヴとレオンティーヌが馬鹿話で盛り上がっている。
必要以上に緊張していないのはけっこうなことだ。
作戦はまだまだスタート地点にすら立ってないからね。
キマイラをやっつけて、なんか戦利品を持っていって、仲間に相応しいと認められて、それでようやく野盗の皮をかぶった軍隊の内部を探ることができる。
どこの国の軍隊か、なんの思惑があってこんなことをしているのかとかね。
あ、トーリアンのシティコマンドが戦うための情報収集ではいよ。すでにね。
もうそんなのんきなことを言ってられる状況じゃないからさ。
相手の思惑を確かめて王国軍に報告する。
これが第一目標だ。
キマイラに勝てないと、そもそもなんにも始まらないのである。
「おまえらー、ちゃんとキマイラ戦のことも考えてるんだろうな?」
「オイラが攪乱、お前らがダブルフォワード。それ以外のプランがあるのか? アルベリク先生」
「ねえっす」
一言もない。
スカウトが一人とライトファイターが二人。
そんなに凝った作戦は立てようがない。魔法使いや僧侶がいるなら、戦略の幅はぐっと広がる。弓術士がいれば、より立体的な戦闘が可能になるだろう。
けど、ない袖は振れないのである。
「なにぃ! ない胸は揺れないだと!! そりゃレオンティーヌしつれいすぎどろぶぐとこわ!?」
最後までセリフを言わせてもらえずに蹴られたクライヴが奇声をあげながら吹っ飛んでいった。
愚かな。雉も鳴かずば撃たれまいに。
「わたしはアーミングダブレットで押さえているだけです」
「それを俺に宣言してどうしろっていうんだよ」
まさか証拠を見せろなんて言うわけにはいかないし、確認するようなことでもない。
俺とレオンティーヌは相棒であって恋人ではないのだ。
どんな体型だろうと、戦闘に支障がないなら文句を言う筋ではないだろう。
わざわざ虎の尾を踏むクライヴが馬鹿なだけ。
「伸びてないでいくぞ。クライヴ」
「もうちょっといたわってくれてもいいのよ?」
わざわざ馬鹿なこといって自滅した馬鹿をどういたわれと?
さて、途中で一回の野宿を入れ、朝のうちに件の遺跡に到着した。
そして、中に入るまでもなく入り口前の広場に陣取っているキマイラを発見する。
「ま、こっちの接近に気がついて外に出てきたってことだろうね。寝床を荒らされたくないから」
「憎たらしいくらいの余裕ですね。さすがキマイラ」
クライヴとレオンティーヌが不敵に笑う。
強いモンスターになればなるほど、こそこそ隠れたりしない。
そういうのはゴブリンとかコボルトとか弱い魔物だ。物陰に隠れて奇襲を狙うのは、正面から戦って勝てないから。
でもオーガーとかはそうじゃない。堂々と胸を晒す。
「ま、キマイラクラスの探知能力から逃げられるはずもない。こっちも正面から行くしかないだろうな」
幸い、広場は戦えるだけのスペースがある。
行動が阻害されることはほとんどないだろう。
ただ天井がないからね。飛ばれると厄介だ。
まずはそこをなんとかするのが一番かな。
仲間たちとちらりと視線を交わし、とくに足音を殺すこともなく接近を開始する。
※著者からのお願いです
この作品を「面白かった」「気に入った」「続きが気になる」「もっと読みたい」と思った方は、
下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして評価していただいたり、
ブックマーク登録を、どうかお願いいたします。
あなた様の応援が著者の力になります!
なにとぞ! なにとぞ!!




