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いつか最強のふたりに! -お嬢さま剣士と中堅冒険者-  作者: 南野 雪花


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第16話 正面からいく

 

 城塞跡、なんて名前だから、メルヴェールってのは崩れ落ちた廃墟だと思っていたのだが、ちゃんと手を入れさえすれば普通に城として使えるらしい。


 廃墟ではなく、ただたんに廃棄された城塞。


 なんで廃棄されたかっていうと、街道が整備されてデスバレー要塞とトーリアンの補給路が確立したため、戦略的な価値がなくなったからなんだそうだ。


 昔はトーリアンからメルヴェールを経由してデスバレーに行っていたらしいけど、今となっては三日も遠回りする必要はない。

 で、意味がなくなったメルヴェールは放置された。


 わざわざ壊すのも金がかかるから、そのままうち捨てるかたちでね。


「ぜんぜんダメです。ちゃんと解体しないから、こうやって拠点にされてしまうんですよ」


 メルヴェールへと向かう道すがら、レオンティーヌがぷんすかと怒っている。

 まあ、気持ちは判るよ。


 都市からたった一日半の場所に敵が拠点を作ろうとしているとき、ぼけーっと見ている指揮官がいるわけがない。

 全力で阻止しようとするだろう。


 ところがトーリアンの場合は、最初から拠点にできる城塞跡が存在しちゃったのである。

 レオンティーヌでなくたって、ぜんぜんダメって評価になるさ。


「そういうなって、結果論ってやつさ」


 まあまあとクライヴがなだめる。

 俺より二つばかり年上だという彼は、自然となだめ役みたいな立ち位置になっていた。

 話術も巧みだしね。


 自然に朽ち果てると当時は思われていた。根城にするものがいたとしても、せいぜいがモンスターか盗賊団(・・・)が関の山。脅威とはなり得ないとたかをくくっていたんだろう。


 けど、ルーン王国への侵攻を企図する他国に、メルヴェール城塞跡の存在と戦略的な価値を知られてしまったのが運の尽きだった。


「たいていの軍事的な失敗って、そんな穴に気づかないの? 馬鹿じゃないの? ってところを突かれて始まるのさ」

「たしかに」


 クライヴの言葉にレオンティーヌがくすりと笑った。

 完璧を期して立てた作戦でも、第三者が見たら致命的な欠陥があったなんて、良くある話なんだそうだ。




「さて、どうやって潜り込むかな」


 メルヴェールが見える林のなかに陣取り、俺たちは最終的な打ち合わせをおこなっていた。


 普通に接近して普通に探るってプランは、メルヴェールを見た瞬間に破棄せざるを得なかった。

 もうね、あたりまえに軍事拠点ですよ。


 正規軍の軍装に身を包んだ「自称盗賊団」が歩哨に立っていて、しかもものすごく練度が高そうで、こっそり潜入なんてする余地がない。

 あきらかに訓練された動きじゃん。


 たかが野盗だろうって腹づもりで戦いを挑んだシティコマンドたちは、まさに負けるべくして負けたってところかな。


「まあ、プランBしかなかろうね」


 肩をすくめるクライヴ。

 できれはそっちはやりたくなかったんだよなぁ。

 こそこそ作戦のプランAとは危険度が段違いなんだもん。


「しかたねえか……」

「わたしは最初からそちらのプランを支持していましたし」


 垂れ息をつく俺と、むっふーと鼻息を荒くするレオンティーヌである。

 やる気満々ですね。


 そんなわけで、俺たち三人は堂々と正面からメルヴェール城塞に接近していく。

 歩調を乱すことなく、おびえた様子もなく。


「止まれ! なにものだ!」


 二十間(約三十六メートル)ちょっとの距離まで近づいたところで、城壁の上から誰何(すいか)の声を投げつけられる。


 いきなり矢を射かけたりはしない。

 予想通りだ。


「アンジェリクの街の冒険者、アルベリクと申す。貴公らの義侠に意気を感じて馳せ参じた。末席を汚すことをお許しいただきたい」

「同じく、レオンティーヌ」

「同じく、クライヴと申す愚物にて」


 俺の口上にレオンティーヌとクライヴが続く。

 プランB、すなわち「仲間にしてくれよ作戦」だ。


 ただの盗賊団だったらうら若き女性であるレオンティーヌが危険すぎるが、どう考えても相手は軍隊である。統制はしっかりしているだろうから無法は働かないと踏んだ。


「そのまま待たれい!」


 城壁にいた兵士が姿を消し、代わって歩哨中だったものたちが城門の前に立つ。


 すっげー練度。

 こうなったらこうするってのが、最初からマニュアル化されてるんだろう。


 そりゃあクライヴが単独での潜入を諦めるわけだわ。

 やがて正門横の通用口が開き、美髯をたくわえた瀟洒な中年男が姿を見せた。


「はいりたまえ。話を聞こう」


 姿形に相応しい、渋い良い声である。

 歌劇役者とかになったら、さぞファンがつくだろう。


 この人が頭目かな。そして周囲の自称盗賊たちが苦い顔をしているのは、トップが軽々しく前に出るなって意味だろうね。


「ご厚情、痛み入る」


 もちろん抱いた感想は顔にも態度にもださず、通用口の扉をくぐる。

 メルヴェール城塞の前庭はかなりの広さがあった。出撃する兵士たちが集合する場所でもあるんだろう。

 その中央部にテーブルと椅子が用意されていた。


「本当は僕の部屋で話をしたかったんだけど、部下たちに「アホですか」と怒られちゃってね」


 笑いながら着席を促してくれた。


 視認できる範囲に兵士は配置されていないけれど、こんな広々とした場所なら、わっと兵士が出てきたら簡単に包囲されておしまいだろう。

 なにもないよって演出だけど、油断できる状況とは正反対だな。


 


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― 新着の感想 ―
部下って言っちゃったー!
こんな練度の相手に既に国境の内側に潜り込まれてる時点で、だいぶ終わりなのでは? と言うか、正規軍の格好してる相手に負けて救援要請しないなんて、どうなってるの?
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