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中堅冒険者とお姫さま剣士 ~悪縁奇縁で最強を目指せ!~  作者: 南野 雪花


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第12話 城塞都市トーリアン


 城塞都市トーリアンは、西方国境守備の要だ。

 ここからドイル王国との国境を守るデスバレー要塞に、補給物資や兵員を送るのである。


 もしデスバレーとトーリアンを抜かれたら、王国第二の都市であるアンジェリまでわずか三日の距離。

 ぶっちゃけ詰んだっていっても過言でないレベルだろう。


「だからデスバレーは絶対に陥落してはいけないし、トーリアンも絶対に奪われてはいけないと父が言っていました」

「ふーむ。俺は軍略なんか判らないけど、どこの都市だって奪われたらまずいんじゃないのか?」


 レオンティーヌの言葉に首をかしげる。

 国境の要塞が陥落するのはまずいってのは、俺にでも判るんだけどね。そこから先、どこを奪われたってまずいんじゃないかと思う。


「業腹な話ですが、捨ててもいい街というのはあるらしいです」

「まじか」


「都市防衛もそうみたいですね。どこを守りどこを捨てるのか、ちゃんと決めておかないと、みんなで討ち死することになるそうですよ」

「軍略家ってのは、おっかないねえ」


 街道を歩きながら、目的地であるトーリアンについて互いに知っていることを共有している。


 といっても俺は訪れたことがないからね。噂話程度のことしか判らない。

 レオンティーヌの方もバシュラール侯爵から教わったという軍略的な知識だけだ。


 結局は道々情報を集めるしかない。


 アンジェリクから二つ宿場町を経由してトーリアンに入る。

使うのは街道、泊まるのは旅籠。こんな部分で節約しても意味がないからね。近道して迷ったら笑い話だし、野宿なんかで体力は回復しない。


「明日にはトーリアンの領域に入りますけど、本当に野盗がマジックアイテムを隠し持っているのでしょうか」

「情報をくれた奴も半信半疑だったな」


 より正確には信が一、疑が九といったところだろう。


 なにかの間違いで野盗がマジックアイテムを手に入れたとしても、たぶんすぐに酒代になっちゃうと思うんだよね。


 ただ同時に、お尋ね者だからこそ武装には気を遣うって考えもある。

 軍の襲撃だけでなく、味方の裏切りにも気をつけないといけない立場だからね。野盗の頭目なんて。


 マジックアイテムを手に入れたら、自分を守るために使いそうだ。


「どっちの可能性もあるってことですか」

「そうなんだけど、あれば良いなって自分に言い聞かせている部分もある」


 片道三日の行程は「やっぱりなかったよ。はっはっはっ」って笑い飛ばすにはお金も時間もかかりすぎてるからね。


「せめて往復の旅費分くらいはため込んでいて欲しいなって」

「盗賊の上前はねる冒険者、ですね」


 くすくすとレオンティーヌが笑った。


 奪われたものを取り返すって依頼を受けた冒険者が、報酬はきっちりもらった上に、盗賊を倒したついでにそいつの財産まで奪っちゃうってのを揶揄した標語である。


 まあ、役得ってやつだからね。仕方ないね。





 街道で襲われることもなく、俺たちはトーリアンの街門をくぐった。


 日中しか旅をしていないから、そんなときに襲われるようだったらトーリアンの守備兵は機能してないって話しになっちゃうけどね。

 ともあれ、非常に立派な門と壁である。


 城塞都市なんて呼ばれるのも頷けるというものだ。

 あきらかに戦争を意識して道造りがされたんだろう。


「トーリアンの冒険者ギルドにいくんですよね? アル」

「仁義を通さないといけないし、もしかしたらなんか情報があるかもしれないからな」


 大きな街にはたいていギルドがある。もちろん冒険者ギルドだけじゃなくて、傭兵ギルドや商工会、合法的なものではまったくないが、盗賊ギルドなんかもあるだろう。


 結局、個人で注文をとるために御用聞きして歩くってのは難しいから、同業組合を作って仕事を受けやすくするんだよね。

 報酬の均一化もはかれるし、受け手も依頼主もどっちにも利益があるんだ。


 ただ、当たり前のように縄張り意識はある。


 俺たちみたいなアンジェリクの冒険者が、挨拶もなしにトーリアンで仕事していたら、そりゃあ面白くないだろう。

 なので、まずは仁義を通すのだ。


「アンジェリクの街のアルベリクとレオンティーヌと言います。しばし庭前をお借りしたくご挨拶に参りました」

「ご苦労さまです。自分の街だと思ってお過ごしください」


 俺の定型的な言葉に、ギルド職員が定型的に返す。

 あ、トーリアンの冒険者ギルドのカウンターに立っていたのは壮年の男性だった。片眼鏡(モノクル)が、いかにも切れ者って雰囲気を醸し出している。


「皆々様にも、よろしくお引き回しのほどを」


 ロビーに居合わせた冒険者たちにも一礼。

 すぐに、よろしくなとか、ゆっくりしていけとか、優しい言葉が返ってきた。

 レオンティーヌもぺこりと会釈する。


「ずいぶんと歓迎されていますね。アル」


 そして俺にだけやっと聞こえる声で話しかけてきた。


「先に話を通せばこんなもんだよ。事後承諾にしようとするから揉めるんだ」


 なんで勝手にやってるんだよって言われてから、じつは挨拶に行くつもりだったなんていっても相手は受け入れてくれない。


 どこだかの街の土産物をアンジェリクの業者がパクって売ったことがあるんだけど、あんときだって軍が仲裁に入るレベルで揉めたんだ。

 結局、真似た業者は縛り首さ。

 先に話を通していれば、そんなザマにはならなかったのにな。


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