第11話 魔剣の情報
「そんないい女が婚約者なこと誇れよ。セレスティアン」
「ぃぃぃいやぁぁぁっ! やめてぇっ! 再現しないでぇっ!」
レティシアのくそ演技に俺は悶絶した。
決闘騒ぎから数日、吟遊詩人どもが面白おかしく歌って歩いたせいで、俺はちょっとした有名人になってしまった。
仲間内からからかわれるわ、あの場に居合わせなかった冒険者たちがわざわざギルドまで聴きにくるわ。
暇か? おまえら。
そして再現してやるレティシアな。
仕事しろ仕事。
「ぼくもうおもてあるけないよ……」
「いいじゃねえか。貴族の坊ちゃんをやり込めたってきいたら、俺ら平民は胸がすく思いってもんだぜ」
適当なことをいって肩を叩いてくるのはサミュエル。
俺と同じ孤児院の出身で、同じ時期に冒険者になった、まあ有り体にいって親友である。
甘いマスクの色男で、レオンティーヌの護衛はこいつでも良かったんじゃないかと思うんだが、対象が女性ならまあ最初に候補から外れるよね。
まーあ女癖が悪いんだわ。
モテるんだけど、同じ恋人と一月も続いたためしがない。泣かした女は数知れずってやつさ。
「失礼な。泣かしてなんかいないぞ。みんな円満に別れてる」
「なんの自慢してるんだか」
こいつもなかなか変な男で、すごいモテるんだけど浮気はしないんだ。
次の恋をするときはちゃんと別れてから、という謎のポリシーを持っている。
君以外に好きな女ができたから別れようってストレートに言うらしいよ。
で、ひっぱたかられて別れるというのかいつものパターンだ。
「で、格好いいアルくんは、貴族のお嬢様と恋仲になる気はないのか?」
「ないよ。ティーヌは人間的にも尊敬できる素晴らしい女性だけど、そもそも身分が違いすぎる」
「覇気がないねえ」
「うっせ。で、なんのようだよ? わざわざレティシアのくされ芝居を見るために長居してるわけじゃないんだろ?」
サミュエルはけっこう忙しい男で、あんまりギルドに長居しない。
仕事を受けたらとっとと取りかかるし、完了報告もが終わったらすぐに帰るタイプなんだ。
たまたま顔を合わせたら一緒に飲みに行くくらいはあるけど、今日みたいに俺が顔を出すのを待ってたりしない。
「理由の半分だな。噂の『誇りの剣』の詳細をききがてら、主人公の登場を待ってたんだよ」
「帰れ帰れ」
しっしっと手を振る。
くそ恥ずかしいタイトルを口にするんじゃありません。
「俺が今帰っちゃうと、魔剣の情報が手に入らないぜ?」
「詳しく」
くるっくる手のひらを返しちゃうよ。
俺とレオンティーヌがマジックアイテムを求めているって情報をキャッチしていてくれたんだな。
「本当かどうかは判らねえけどな」
そう言い置いてサミュエルが説明してくれる。
交易都市アンジェリクから西に三日ほどいったところにある城塞都市トーリアン。その周辺を荒らし回っている野盗の集団がいるらしい。
そいつらがため込んでいるお宝の中にマジックアイテムがある。
「と、捕まって命からがら逃げてきた奴がいうんだな」
「うっそくせ」
胡乱げな声を出してしまった。
そもそも野盗がお宝をため込むなんてリアリティがない。そんなことするようなタマじゃないでしょ、あいつらは。
蓄財や資金管理をちゃんとできるような人たちは野盗になんて堕ちない。
金がなくなったら襲って奪う。腹が減ったら襲って奪う。女が欲しくなったら襲って奪う。その程度のメンタリティーしかないって。
「だからホントか嘘かわかんねえって」
「だな。でも情報は情報だ。さんきゅな」
「良いってことよ。こんな情報あったって、俺がトーリアンに行くことはねえからな。得も損もしねぇよ」
パタパタと手を振ってサミュエルが笑う。
まあ、そりゃそうだよな。
マジックアイテムというのは、嘘くさい情報を信じてまで探しに行くようなものじゃない。
たまたま見つけたら喜んで使うが、それを手に入れるのが目的な冒険者は滅多にいないのだ。
手に入れた財宝の中にマジックアイテムがあったらラッキー、くらいのものだろう。
でも俺とレオンティーヌの目標は、ドラゴンスレヤーの称号を得て、その功績で騎士叙勲されることだからね。
ドラゴンに通用する武器や、ドラゴン攻撃から身を守れる防具が必要になるんだ。
もちろん手段であって目的ではないけどね。
「そんなわけで、トーリアンに行ってみようと思うんだ」
「遠征ですね。楽しみです」
「え? 一緒にくる気なの?」
「どうしてアルはわたしが行かないと思ったのですか?」
ツーマンセルでしょうにと苦い顔をされちゃったよ。
そうなんだけどさ、片道三日っていったら帰ってくるまで十日は見ないといけない。
貴族のお嬢様がそんなに長い間、屋敷を留守にして良いものなのだろうか。
「むしろ、日帰りできるところだけ探察するつもりだったと思われていたってことですか? さすがに怒りますよ、アル」
「ごめんごめん」
両手を合わせて謝罪する。
レオンティーヌは、遊びや気まぐれで騎士叙勲を目指しているわけではない。俺自身がそう言ったのにな。
「でも家の方は本当に大丈夫なのか?」
「バシュラール侯爵家は武門ですもの。父も祖父も、遠征に出たら数年帰らないなんてことはざらですよ」
そうか、軍は国外まで遠征するか。
貴族もハードだなぁ。
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