第4話 改革
年間7億円ほどを溝に捨てている競馬事業部、しかし丸山には一つの疑問があった。それは”なぜ新しい馬を買わないのか?”という点だった。現時点で所有している馬たちはすべて5歳を過ぎている老兵でここ最近1着2着、いわば連帯を果たしている馬は1頭もいない。
「一つお聞きしたいことがあるんですけど、なぜこの部署は若い馬を1頭も買わないんですか?」
すると橋本が「はぁ」とため息をしながらこっちへやってくるとあまりにも残念な事実を伝えた。
「うちの事業部は金がほとんどないでしょう、だから買おうにも買えないんです。」
はっきり言ってカチンと来た、「”カネがない”とはなんだ」と出そうになったが必死に飲み込んだ。しかし金の使い方にかかわらず現時点で金が無いのは事実である、早急になんとかしなければならない問題である。
丸山は先日渡された使用内訳にそっと目をやる。
馬関連 約1.5億
人件費 約2.6億
設備・不動産約2.1億
広報・渉外 約0.8億
合計 約7.0億円
....あまりにも金がかかりすぎている、しかし削ろうにも何処も削れない予算、つまりこれが”必要最低限”の金額だった。しかしこのままでは負のスパイラル、勝てもしないのに全国各地の中央の競馬場に飛びまくり金を溝に捨てていくだけ。
ちょっとまった、
”中央の競馬場?”
丸山はすぐにキーボードを打ち込み始める。委託料・飼い葉・出走登録・保険料その他諸々3260万円程かかる、けれども”地方競馬”ならそこから一気に1500万円ほど金が減り1420万円ほどになる。次に丸山はいま北海道の競走馬のセリ市の日程を確認する。ちょうど6月からジューンセールで2歳馬の取引が行われる。
「橋本さん、単刀直入に申し上げます。リアルエステート号を地方競馬に移籍させます。」
橋本は口をあんぐりさせ驚いた、だがそれは丸山の想定内だったので構わず話を続ける。
「いま中央競馬で1頭にかかっている金額は3260万円、そこから地方競馬に移籍させると1420万円で浮いた差額の1800万円ほどを競走馬の購入、そして貯蓄に回します。そうするればまずは首の皮一枚つながります。」
「それは名案でも、厳しいところがありまして。」
橋本は続ける
「競走馬を別のトレセンに移籍させるときなどは必ず会社の重役会議を通さないと行けないんです、そこには副社長の海道剛もいますし.....副社長のことですからきっと何らかの理由をつけて拒否するに決まってます、あの人は競馬事業部なんて消えて無くなれ派ですので。」
「あの人はここまで邪魔してくるのか....一体競馬事業部の何の恨みがあるんだよ」と丸山は誰にも聞こえないほどの声量で呟いた。次回の重役会議は1週間後、それまでに理論武装しなければならない。
丸山は大きくため息を付いて席についた。




