第2話 リアルエステイト
「リアルエステイト号。最終戦績は2週間前の芝2400Mで〝4歳以上1勝クラス〟で9着......かなり悲惨だな。そんでもって他の馬に関しては中央競馬にいられるギリギリのライン...結構まずいな。」
というかそもそも論で丸山は競馬なんて親父が「生物の教育」とか言って9歳くらいのときに有馬記念を見に行ったくらいだ、優勝した馬の名前すら覚えてない。そんな男が〝中央競馬〟だの〝地方競馬〟だの〝4歳以上1勝クラス〟などわかるはずがない。
「橋本さん、なにか競馬のことが分かる本とかありますか?」
橋本は「ちょいと待っててください」といって横の棚のファイルをペラペラとめくる。
「こいつです」と渡されたのは
「新人教育用ファイル」
いかにも手作り風なファイルの丸山はペラペラとめくる、さっそく中央と地方について解説があった。
「中央競馬は国が統括していて逆に地方競馬は各都道府県の市区町村が運営していると......賞金額は桁違いで地方競馬は中央の受け皿とも言われていると。」
「そのとおりです、まるでこの事業部みたいですね」部屋に入ってきた男はそう言いながら缶コーヒーをデスクに置き鼻歌を歌いながらPCを立ち上げた。
「斎藤、お前ほんっと失礼だな」
斎藤と言われる男は「うぃ」といってPCで何かしらを調べ始める、横にいた橋本が「あいつはちょいと口が悪いというかなんというか....まぁ競馬に関しては一級品ですから」とすかさず説明を加える。
「しかしメンバーは他にもいるはずでしょう、他のメンバーはどこにいるんですか?」
橋本は少し悲しそうに「うちの部署ははっきり言って会社から見捨てられているようなものなので業務中もどこに言ってもお咎めなしなんです、なのでこうやって業務中に色んなところに行く人が多いんです。ちなみにこの部署は8人体制で動いているんですけど、現時点では8人中4人がここにいません」
「というと?」
「4人中3人がゲーセンだの漫喫だの家だの色んなところでサボっています、まぁ一人を除いてですけどね」
「その一人とは、誰ですか?」と丸山は興味本位で聞いてみる。
「渡辺龍太です、実家が北海道で小さい頃から競馬に触れてきたらしく競馬に係る仕事がしたいらしく、でもちゃんと生計を立てられる所が良いということでうちに入社したらしいです。」
明らかに入るところを間違えた感じだな、俺もその「渡邊龍太」ってやつも。私は龍太の伝番号を聞き昼休み中に電話をかける。しかしいつまで立っても電話に出ない。とりあえず部屋に戻り扉を開けると見知らぬ男が一人いた。「失礼します、先日付で移動となりました丸山龍次郎です」と見知らぬ男に名刺を見せる。
「遠路はるばるご苦労さまです」と言葉をかけた男こそ渡邊龍太である、どうやら自棄食いしたせいで腹を壊しトイレに篭っていたようだ。
本当に大丈夫か、この部署は......




