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【連載版】いつの間にか溺愛されてましたとは言うけれど。  作者: 江入 杏


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馬車は進む

 我ながらちょっとクサいことを言ってしまったなと少し恥ずかしくなった所で、誤魔化すように目の前のステータスウィンドウを再び眺める。

 所持金の項目に表示される所持金は二十万ギルラ。ギルラはこの国の通貨だ。別の国に行く時は外貨両替する必要が出てくるだろう。為替レートも分かればいいけれど、とりあえず今は置いておくとして。

「スキル、ってあのスキルよね」

 一体どんな能力なのか皆目見当もつかないそのスキルを眺める。

 ファンタジーでよくあるあのスキルで間違い無いだろう。魔法と縁もゆかりも、その概念すらないこの国でスキルやステータスが存在するのも不思議な話だ。

 自分という存在自体がイレギュラーだからだろうか? それとも、この国には魔法が無いだけで他の国にはある?

「スキル名的に、オンラインゲームを起動した時の拠点みたいな感じかしら」

 迂闊にスキルを口にしないのは、発動した時に何が起こるか分からないからだ。今は移動している馬車の中、用心しておくに越したことはない。

 詳細を知るためスキルに触れると、先程のようにウィンドウが追加で表示される。


『唱えることで、自分の家に入ることが出来る』


 思いの外簡潔な説明だった。少し不親切ではないだろうか。これがソシャゲだったら、間違いなくレビューにマイナス点として書き込まれているだろう。

 自分の家。ということは、実家の自室に戻れるということだろうか。でも、入ると記載されている。つまり今自分が居る場所と実家の自室を行ったり来たり出来る?

「どちらにせよ、今は試さないほうがよさそうだわ」

 戻る時の座標が今自分が居る場所に固定されるとしたら、移動する乗り物とは相性が悪そうだ。今試すにも予想した通りだった時のリスクを考えると得策では無い。

「スキルを試すなら落ち着いた場所に着いてから、か」

 乗り心地の良くない馬車の中、硬い背もたれに身を預けて窓の外を眺める。

 見知らぬ土地。見知らぬ景色。これが旅行であれば心躍ったことだろう。しかしリアーナがこれから向かうのは生涯過ごすことになるかもしれない場所だ。

 もしかしたら、自分がこれから嫁ぐ相手は物語で登場するカルロス・イギオンとは違うかもしれない。作中では冷酷だけれど優秀という設定だったし、現実でもそうなら嫁いでくる相手の身辺調査はちゃんとしているのではないだろうか。

 前世でも良い家柄の人は交際相手の身辺調査をすると聞いたことがあるし、相手は辺境伯なのだからその可能性も高い。

 噂が嘘だと分かった上でこちらと真摯に向き合ってくれるなら、原作のリアーナのようには難しいけれど夫婦として暮らしていけるかもしれない。偽装結婚なら期限までは仮面夫婦として過ごし、その後穏便に離縁してもいい。その時にいくらか手切れ金を貰えれば万々歳だ。

 最初はどうなることかと思ったけれど、希望が見えてきた。日本と違ってこの世界は治安が良くないし、保険は多い方が良い。

「スキルも有用性が高ければもっと選択肢が広がるのだけれど、説明通りなら期待しない方がいいかもしれないわね」

 家の中に入ると書いてあったが、どうやって? 何処から?

 考えたら気になってきてしまった。うっかりスキルを口にしそうなので、休憩出来る所に着くまで寝てしまおうと目を閉じる。

 が、乗り心地の悪い馬車と痛む下半身のせいで全く眠れる気がしなかった。もっとグレードの高い馬車なら違ったかもしれないが、明らかにリアーナが今乗っている馬車は最低ランク。長期間の移動には向いてない代物である。

 目的地である辺境伯領まであと十日。自分の身体はそこまで保つのだろうか。一抹の不安を抱えながらも、馬車は進む。

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