レベル上げの条件
「…………う……」
しこたま飲んだ翌日、屍のような呻き声と共にリアーナは目覚めた。周辺に散らばる缶ビールからその惨状が察せられる。
ガンガンと痛む頭に飲み過ぎたことを知る。完全な二日酔いであった。
「す、スポドリ……味噌汁……」
ふらふらと吸い寄せられるように冷蔵庫の扉を開け、そしてそこに思い描いていたスポーツドリンクがあることに固まる。手に取り、キャップを開けて中身も確認する。その味は間違いなく前世で慣れ親しんでいた味で。
更に先日、梅干しが食べたいなあなんて考えていた。だが買い置きの中には梅干しは無かったのでいつか通販で買えたらいいなと考えていたが、それもあったのである。
つまりそれが何を意味するかと言えば。
「まさか、食べたいと思った物が冷蔵庫に追加されてる……?」
恐らくすぐにとはいかないようだが、次の日には食べたいと願った食べ物が追加されているのだ。
「ああっ、神様!」
その場に跪き、感謝の祈りを捧げる。無限湧きの食料、しかもそのリクエストに応えてくれるとなれば、もはやこれは神スキルの域に達しているのではないだろうか。
二日酔いのため食欲も湧かず、水と味噌汁で凌ぐつもりだったが予定変更だ。今朝はスポーツドリンクと梅茶漬けにした。梅干しの酸味と茶漬けの温かさが二日酔いに沁みる……。
いくらか頭痛もましになったので、何か変化は起きてないだろうかとステータスを確認する。
「あら、ホームのレベルが上がってる?」
いつの間にやらスキルのレベルが上がっている。そういえばステータスのUIが格段に良くなったことに感動していたため、スキルのレベル上げの条件を確認し忘れていた。そこでレベルが上がった理由を知る。
『ホームLv2条件:スキル三回使用
ホームLv3条件:スキル十回使用、一人の好感度を上げルートを解放する
ホームLv4条件:スキル五十回使用、好感度の高い者とスキルの能力を共有する
ホームLv5条件:スキル百回使用、好感度の高い者とスキルを使用した状態で一晩過ごす
ホームLv6条件:Lv5以上で条件解放』
「この調子ならすぐにレベル3まで上げられそうね。まさかシーナルートの解放がここで役立つなんて」
しかし、レベル4以上が問題である。スキルの使用回数は問題ないとして、好感度の高い者とスキルの共有、とはつまり自分のスキルを相手に教えるということだろうか。更にレベル5に上げる条件が好感度の高い者とスキルを使用した状態で一晩過ごす、ときた。
かなり特殊な条件だが、もしかしたらこれは。
「……これ、多分だけれど相手が異性であること前提で作られた条件よね」
そうならこの特殊な条件も納得出来る。ここまで生活基盤が整ったスキルで、レベルを上げる条件が好感度の高い者とスキルの共有、そしてスキルを使用した状態で一晩過ごす、なのだ。このスキルの持ち主に伴侶が出来て、一緒に暮らす可能性を視野に入れて作られている気がする。
「そうなるとレベル5で通販機能の解放も納得だわ。この部屋、一人暮らし用だもの」
確かに誰かと暮らすとなると足りない物が出てくる。寝具や食器類はこれでは足りない。
初期レベルであっても一人で暮らしていく分には何も問題ない、しかし誰かと暮らすとなると初期のレベルでは難しい。そのためのレベル上げ条件と通販機能の解放。なんともよく考えて作られている。
「まさかここまで人生一体型のスキルとはね。神様のサポート万全過ぎない?」
これはもしかしたらレベル5より先のレベルを上げる条件は持ち主の人生設計に合わせたものではないだろうか。部屋の増築とか、スキルの共有者が増えるとか。
「でも、私の場合ルートを解放した相手はシーナなのよね。完全にルールの穴をついた感じになってしまって申し訳ないわ」
神様もまさかリアーナがシーナのフラグを立てるとは思わなかっただろう。リアーナ自身もまさかスキルのレベルを上げる条件がここまでスキルの持ち主の人生に寄り添うものだと思わなかったので、お互い様ということで許してほしい。
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