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陰陽師はナポリタンがお好き  作者: 山いい奈
5章 これまでのカフェ、これからのカフェ
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第2話 地元の名産品について

 その日の夕方、カフェのカウンタ席のいちばん奥に清明(せいめい)お祖父ちゃん、1席空けて八木(やぎ)さん、また1席空けて三津谷(みつや)さんと渡辺(わたなべ)さんという、ここに来てくれる頻度の高い陰陽師が揃っていた。


 八木さんはいつもの様にカレーライスを。今日はチキンである。三津谷さんと渡辺さんもいつものナポリタン。清明お祖父ちゃんもごはんを食べる3人を羨ましがって、少し早めの晩ごはんを食べていた。もちろんナポリタンである。


 こういうときは、羽菜(はな)は外食をさせてもらうことにしている。お家で清明お祖父ちゃんのごはんを用意する必要が無くなるからだ。清明お祖父ちゃんと晩酌はするが。それも毎日の楽しみなのだ。


 今日はどこに行こうか。天王寺にはおひとりさまにも優しいお店がたくさんある。最近の羽菜のお気に入りは、あべのアポロ地下2階のレストランエリアに入っているビストロ居酒屋「フレンチマン」さんである。カウンタのみのお店なので、おひとりさまでも入りやすい。


 シアンカラーを基調にした、シンプルでおしゃれな店内なのだが、コスパがとても良いのだ。リーズナブルなお値段で美味しい。人気で、ごはんどきには満席になるのである。お客入りによっては2時間制になる。


 あべのアポロはレストランやいろいろなジャンルの店舗が入っている商業施設である。隣接するあべのルシアスとは地下2階と地上2階で繋がっている。かつて、このふたつのビルを股に掛けていた「喜久屋書店」さんはかなりの面積を誇っていた。特にルシアス2階にあるコミック・ライトノベル売り場は圧巻だった。今は閉店してしまい、改装中。次に何が入るのか、物悲しい様な、楽しみの様な。


 ルシアス地下2階のレストラン街には、「スタンドふじ」さんという海鮮居酒屋がある。水産会社直営のお店で、「旬魚が安いだけ」と銘打っているだけあって、こちらもコスパ抜群だ。平日のごはんどきをずらしたとしても並ばなければならないことがある。それほどに人気のお店なのだ。羽菜もお友だちと並んで入ったことがある。確かにどれも新鮮で美味しかった。魚盛は1000円もしないのにかなりの盛りなのだ。


 久々にたこ焼きという手もある。「あべのたこやきやまちゃん」さんは、天王寺の地元たこ焼きとして有名で人気である。お出汁の効いたとろふわたこ焼きだ。いろいろなトッピングでいただくことができる。ソースにマヨネーズ味も捨てがたいが、ごま油塩味の人気も高い。羽菜も初めていただいたときは「めっちゃあり!」と目を丸くしたものだ。


 本店は焼き場の前に小さなカウンタがあるだけなので、腰を据えるには向かないが、すぐ近くにある2号店はカウンタ席やテーブル席があり、お酒片手に落ち着くことができる。たこ焼き以外の一品も豊富だ。居酒屋使いができるのだ。


 たこ焼きも8個以上を注文すると、トッピングをハーフ&ハーフにしてもらうことができる。ふたつの味が同時に楽しめるのは、特に女性には嬉しいのでは無いだろうか。女性はいろいろなものを少しずつ食べたい傾向がある。


 テイクアウトより少しばかりお値段が加算されるが、席代、サービス代と考えれば納得もできる。そうだ、清明お祖父ちゃんとの晩酌用に少しテイクアウトするのも良いかも知れない。お祖父ちゃんはたこ焼きも好きなのである。基本、大阪ご当地のものは好きだと言っている。


 大阪のご当地ものといえば、たこ焼きはもちろんお好み焼き、いか焼きもそうだし、風味豊かなお出汁で食べるおうどんも良い。なんば道頓堀にある「今井」さんは有名だし、宗右衛門町が本店と思われる「つるとんたん」さんは、少し贅沢な大阪おうどんだが人気店である。どちらもお出汁の評価が高い。


 今井さんはおうどんとは違う専用のお出汁を使った親子丼も人気だし、つるとんたんさんは創作おうどんの種類がかなり多いのだ。おうどん自体は小麦の風味が確かだが、きっと懐が深いのだと思う。和のおつゆだけで無く、洋の、例えばコンソメで煮込んでも美味しくいただけると思う。


 基本は粉もん文化なのだな、と思う。全てに小麦粉が使われている。だが他にも大阪の郷土料理はたくさんある。鯨と水菜のはりはり鍋、海鮮などの具材を混ぜ込んで錦糸卵などをトッピングするばら寿司、しめ鯖と白板昆布を重ねて箱で押したバッテラ寿司、茶碗蒸しにおうどんが入った小田巻蒸し、串かつ、どて焼き、などなど。


 これらは農林水産省がリストするものの中に入っているのだが、昆布だしをベースに骨つきのぶつ切り鶏肉やお野菜などで作ってポン酢でいただく水炊きも、大阪もんだと羽菜は思っている。羽菜の実家でも、このカフェに移ってきてからも、冬になれば何度かいただいた。清明お祖父ちゃんとふたりで囲むお鍋も美味しいものである。


 ちなみに大阪のお雑煮は白味噌に丸餅、春にいただく桜餅はピンクのもち米で餡を包む道明寺だ。


 以前からお料理が好きだった羽菜は、気付いたらいろいろと気になったものを調べていた。新しいことをいろいろと知れるのは楽しかった。生まれも育ちも大阪の羽菜だが、知らないことはきっとまだまだある。


 カフェは軽食ばかりだし、特殊な食材を使っているわけでは無いが、たまにはなにわ伝統野菜などを使った小鉢なんかも作ってみたいな、なんて夢も膨らむ。


 コストが上がるとまた竹林さんに苦言されるだろうから、ポケットマネーでも良い。1日に来る陰陽師はそう多くは無いので、充分に賄えるだろう。


 なにわ伝統野菜は稀少で手に入りにくいものも多いが、日本の青ねぎのルーツとも言われる難波ねぎや大阪しろ菜にうすいえんどうなら、旬の季節になればあべのベルタの関西スーパーにも並ぶ。


 大阪の特産品とされているものだったら、泉州水茄子や小松菜、泉州玉ねぎに八尾の枝豆と若ごぼうなど。春菊は全国1位の収穫量を誇るのだ。


 ああ、想像するだけでもわくわくする。大阪の旬のものを、陰陽師の皆さんにも楽しんでもらえたら嬉しいなと思うのだった。

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