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7.ワイバーンフルーツ

 暫定上級ポーション。

 森の精霊水だけでなく、王宮庭園にあったエターナル草とレッドシードの功績も大きい。

 どちらも、他に近場に生えている場所はないという。

 なぜかここの王宮庭園には国内のさまざまな草花が揃っているのだ。

 ただ現代では管理が雑過ぎただけで。

 文献などから紐解くと、昔はもっとしっかり管理されたちゃんとした庭園だったらしいのだ。


 そしてこの森。森も自然林みたいだけど、いくつかの植物が意図的に植えられているそうだ。

 人工林ではないんだけど、北部の涼しい気候などを好む植物が森の中にバラバラに植えてある。

 いつしか管理者もいなくなって、誰も知らないという状態だったらしい。


「森へ行きまっしょ」

「うん。ナーシー。今日はちょっと歩き回るからね」

「なにか探しものですか」

「うん、ちょっとね」


 ということで森の中を早歩きでローラー作戦のように探して歩く。


「結構歩いたね」

「うん、ごめんね、付き合わせて」

「いえいえ、いいんだよ。好きだもん、ちゅ」


 ナーシーがキスしてくれる。

 僕たちはお互い大好きだもんね。


 それから三十分ほど。


「あった!」

「あらこれ?」

「そう、ワイバーンフルーツ」

「ワイバーンフルーツだなんて、もっと高地の植物ですよね」

「そうだね。でもここにもあるって文献があったんだ」

「すごい、ミレルちゃん、ちゅっちゅ」

「えへへ」


 またキスしてくれる。

 赤い謎の果実だ。地球で言うとドラゴンフルーツが一番近いかもしれない。

 甘くて美味しいんだけど、実は魔力を保存する能力があって、上級ポーションの代替材料なのだ。

 これがあれば、精霊水で誤魔化して作らなくても、上級ポーションになる。


 いくつもなっているので、少し残して収穫してしまう。


「よし、戻ろう」


 頑張って歩いて戻ってきた。

 子供は元気といっても、少しだけ休憩してから再開する。

 また自室にメイドさんたちにも手伝ってもらってポーションを錬成する。


「こうぎゅって絞って汁を入れたらぐつぐつ煮て」


 火に掛けて様子を見る。


「それから、レインボーフラワーを入れる。そしたら魔力を注ぐでしょ」


 僕とそれから今日はナーシーが手伝ってくれた。

 メイド見習いの子たちは雑用だ。魔力を入れたりする作業は任せられない。

 まあでも、見て覚えて欲しいんだよね。

 筆頭メイドのラーナは時計を見つつメモ帳に作業記録をつけていた。


「まあいいかな」

「できたね、できた。ミレルちゃん、すごい」

「ミレル様。やりましたね」

「まぁまだ効果が分からないけどね」


 王宮の時間停止機能がある高級マジックボックスの所へ行く。


「ミレル様。なにか倉庫へ御用ですかな」

「あの、ワイバーンフルーツのポーションが出来たんで、保存しておいてほしいんだけど」

「なんと! わかりました。じいじが大切に保管させていただきます」

「んじゃ、頼んだよ」

「はい」

「あ、必要な時があったら、使っちゃっていいから」

「え、いいのですか? 分かりました。大切に使わせていただきます」

「うん、よろしく」


 ということで王宮の保管庫に上級ポーションが約十本、常備されることになった。

 暫定上級ポーションも追加で作ったものがあるので、入れておいてもらった。

 秘薬ということにしておく。


「王家の秘密だよ」

「そ、そうですか」


 という具合に、秘密だと言っておけばみんな、さすがにぐっと黙る。

 藪ヘビをつついて、実はカクカクシカジカの血を使った呪いの薬で、とかだったら怖いもんね。

 そんなことないけど。


 家族、ナーシーと食事会をしてワイバーンフルーツを出した。

 一応、これは報告しておかないと。


「これが、王宮の森で採れたワイバーンフルーツですよ、パパ」

「ワイバーンフルーツ、美味しい」

「甘いですね」

「ミレル、よくやった。俺もうれしい」

「うん、お兄ちゃんもよろこぶと思って」

「いい性格しているな。最近、こそこそ森へ行ってると思えば」

「えへへ」

「ナーシーちゃんもミレルをよろしくな」

「もちろんですわ。ミカエル様」


 お母様やお兄ちゃんにも好評で、うれしい限りだ。


「今まで、王宮の森探索、黙認していたが、正式に許可しよう」

「ありがとう、パパ」

「ああ、いいんだ。騎士団も最近、興味を示してな」

「あぁ、近衛騎士団でしょ」

「そうだが、何かあったのか?」

「ん、いや、ちょっと、あったというか、なかったというか。子供の秘密」

「秘密なら仕方ないな、あはは」


 そうなのだ。あれ以来、近衛騎士団に僕は注目されている。

 ポーションが安価に手に入るなら喉から手が出るほど欲しいのだ。騎士団は。

 そういう意味で僕はロックオンされているんだけど、のらりくらりとかわしている。

 騎士団も本気で僕を追い詰める気はないらしいので、助かってる。


 ワイバーンフルーツは森の中の何か所かにあることがあれから分かっている。

 すぐに採り尽くさない程度にはたくさん実がなるみたいで、よかった。


「それにしてもこのワイバーンフルーツ、美味しい」

「ですよね。こんな美味しいフルーツがあるなんて」

「さっぱりした上品な甘さだな。うまい」


 こう王様にまで言われてしまうとたまに採ってこようかな。



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