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6.馬小屋と騎士団

 上級ポーションっぽいものが出来た。


「さて、人間に使いたいけど、さすがに僕だって遠慮くらいする」

「してください。おおいにしてください」

「ということで、怪我のお馬さんの所へ行こう」

「馬小屋ですね」


 三人でぞろぞろと馬小屋の隅に向かう。


「これはひどいわ」

「なんで、ポーション使ってあげないんだ……」


 ぐったりした馬が横たわっていた。

 目もつぶっているが起きてはいるようで、ときおり首を振ったりしている。

 馬番の男性が汗をタラタラ流して、頭をぺこぺこ下げていた。


「すみやせん。なにぶん、上級ポーションなんて買ってやる予算がなくて」

「いくらだっけ」

「金貨二十枚だったかと」

「なんだ、それくらいなら出せばいいのに」

「そんなっ! そんな予算ありはしません」

「ちゃんと請求した?」

「いえ、最初から予算に入れていません」

「請求しなきゃ、分かんないよ。何がいくら必要かって」

「そりゃそうですが。馬に上級ポーションなんて聞いたことがないでさぁ」

「そうなんだ、可哀想に」


 とにかく、可哀想なお馬さん。

 実験台というとこれもある意味可哀想だけれど、他にいないのでしかたあるまい。


「ほれ、お飲みなさいな」


 ナーシーが馬の口に哺乳ビンみたいにして赤い上級ポーションを飲ませる。


「ヒ、ヒーンッ」


 お馬さんは首を何度か振ると、目をパチリと開けて鼻息を吐いた。

 そして、ゆっくりと立ち上がったのだ。


「なんです、それぇ」

「これ、今作ってきた、上級ポーションっぽい中級ポーションだよ」

「赤いんだから、レッドシードの中級ポーションは分かりますよ」

「だよねぇ」


 赤といえば中級ポーションなのだ普通は。

 しかし精霊水の効果で底上げされて、かなりの回復効果があることが分かった。


「スメルデス、よかったな、スメルデス」


 馬の名前らしい。

 馬番が涙を滝のように流しながら、馬に頬ずりしていた。

 馬のほうも嫌がることもせずに、ヒヒーンと鼻を鳴らす。

 よかった、この様子なら元気になったようだ。


「いやぁ、よかったよかった」

「そうね」


「さて、んじゃ、次は人間に使ってみたい」

「だよねぇ」

「実験に参加してくれる人を探さないと。やっぱり近衛騎士団かな」

「精鋭の近衛をそういう風に使うのね。呆れるわ」

「あんまり知り合いいないんだよね」


 近衛騎士団は王宮の警備をしているので、よく後宮にも立っているのだ。

 たまにお菓子をあげたりして交流している。


 そんな話をしているところへ近衛騎士団が帰ってきた。

 本来は王宮の警備が仕事なんだけど、王立騎士団は町の警備や国境警備などの仕事があるので、臨時の仕事があると精鋭の近衛騎士団に回ってくることがあるのだ。


「大変だ。サーベルタイガーが出た。怪我人が出てる」

「えっ?」

「あ、お姫様、これはこれは。旅の人が近くの森の道でたびたび襲われるってんで、近衛騎士団が出動したんですよ」

「あ、うん。お疲れ様です」

「それで、サーベルタイガーが出たんですよ。何人も怪我をして」

「上級ポーションが足りないんです、どこかに在庫があればいいんですが」

「あ、今すぐ作ってきます」

「え、お姫様がですか? 上級ポーションですよ」

「いいから、いいから」


 急いで皆で後宮の自室に戻る。


「急いで作ろう」

「はいっ」


 僕が機材を準備している間に、エターナル草の準備をしてもらう。

 レッドシードは棚に置いてあるので、取り出して机に置く。


 暫定上級ポーションを作る前に、精霊水は大きな樽で汲んで置いたのだ。

 よかったよかった。


 ぐつぐつぐつ。


 急いで薬草を煮る。

 はぁはぁはぁ、頑張らないと。騎士団の人が死んでしまうかもしれない。


「ミレルちゃん、頑張って」

「うん……」


 どんどん作業を進めていく。

 一度に作れる量には限りがある。

 器具を探してきてもらって、三つほど並行作業をしていた。


「はあぁぁぁ」


 魔力を注ぐ。

 みんなが回復しますように。


「できた!」


 急いで騎士団の宿舎へと駆けつけた。


「ミレル様、どうしたんですか?」

「暫定上級ポーションです。ポーション、足りないんですよね?」

「はい、まあ、そうなんですが」

「すぐ案内して」

「え、あはい」


 宿舎の病室に寝かされていた。

 あわただしく医者のひとが包帯などで仮処置をしていた。それが終わったところのようだった。


「暫定上級ポーションです」

「赤いですけど、中級ポーションじゃないですか?」

「いや、暫定って言ったろ、ちょっと特殊なんだ」

「どれ、見せてみてください。確かに、上級ポーション並みの魔力を感じます」

「でしょ」

「では、使ってみますね」


 患者さんへナースさんに介助してもらいポーションを飲ませていく。


「うっ、な、治った!」

「こっちも、もう大丈夫だ」

「やった!」

「ミレル様、こ、これは?」

「えっと、なんていうか、その秘薬みたいなやつ、です」

「秘薬、ふむ」


 ということで全員回復させられた。

 しかし泉の件は秘密なのを思い出したのだ、それで僕は誤魔化して、口をつぐんだ。


「まあ、その王家の秘密みたいな感じ、なので」

「そうですか。秘密なのに、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「助かりました。ありがとうございます」


 まあ、みんなに感謝されたからいいとしましょ。



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