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1.バナナぁ、栽培ぃ、命令っ!

 僕は気がついたら王女様に転生していた。

 女の子だ……。

 また言葉も碌に話せなかったが、なんとなく小さい頃の当時の記憶もある。

 そして前世の記憶、地球での生活も思い出していた。

 ということで四歳の頃の話からしよう。


「ママ、パパ!」

「ほ〜ら、パパ、ミレルが喋ったわ」

「あ、ああ」

「パパぁ、ママぁ。バニャニャ、さいばい、めいれい!」

「おおぉ」


 ドヤッと周りのメイドさんたちが笑う。

 しかし僕は真剣だったのだ。


「バナーナ、栽培、命令!」

「まぁ」


 バナナは船で南国から夏にのみ輸送されてくる。

 王宮で独占されていて、家臣たちに配られる。王族にとってもごちそうだった。


「食いしん坊だな! あっはは」


 王様も笑ったのだが。

 この後、何日にも渡って「バナナ、栽培、命令」と言ったそうな。

 食いしん坊だ、という噂は直ぐに広まった。

 兄のミカエルも呆れるほどだった。


 しかし、次第にみんな、顔色を変えていく。


「温室! バナナ! 苗買う」


 僕が喋れるようになってきて、具体的なことをポツポツと言うようになったからだ。

 バナナは栽培品種で種がない。今までかなりの数を輸入してきたが、種のカスはあるものの、ちゃんとした種は一つも見つかっていなかったのだ。

 そのため栽培も諦めていたのだが……。


「苗を買うだと!?」

「バナナ、苗買う!」


 そしてダメ元で確認したところ、向こうも興味本位からか、苗を輸送してもらえたのだ。


「大きくなる、大きい、温室!」

「まぁ、なんてことでしょう」


 僕は先に大きくなることを言い当て、温室を要求していたのだ。

 温室は王宮庭園に一つ汎用のものがあるだけだった。

 南国の草花がいくつか昔からの惰性で栽培されている。

 何代も前からある伝統的な施設で、お金の掛かった浪費の象徴などと言われていた。

 それをさらに大きなものを作れと「めいれい!」と可愛くいう。


「本当に大きな温室を?」

「ああ、ミレルが欲しがっている」


 王様は可愛い我が娘、僕を溺愛していて、一部の大臣たちの猛烈な批判をかわし、建設命令を出した。

 そうして翌年、立派な大温室にバナナの苗を植えたところ、これが大当たり。


「まぁ、なんてこと」


 どうせすべて枯れるだろうと多めに送られてきた苗たちはグングンと僕を追い越して、一年草のバナナは見事に実を鈴なりにつけるという快挙を達成したのだ。


「すごいわ、ミレル、これがバナナですよ!」

「きゃっきゃっ、バナナ、バナナ!」


 輸入している量に比べたら十分の一もない栽培バナナ。

 しかし、輸入だけだったのが、栽培できるという事実は衝撃を持って受け入れられた。


「はい、今晩もバナナですよ」


 僕たちの食事にはバナナが頻繁に出るようになり、これには兄も目を丸くした。


 これが世にいう「ミレル姫四歳の奇跡、バナナ編」である。

 単に夏しか送られてこないバナナを一年中食べたかっただけだった。


「ラーナ、キノコ生えてる」

「あら、よく見つけましたね」


 馬糞の捨て場だった。

 わーこれ、マッシュルームだ。間違いない。

 ラーナは侯爵令嬢で僕の専属メイドだった。

 今年十五歳。おっぱいが大きくて柔らかくていい匂いがする。

 とっても優しくて僕のお気に入りの子だ。

 気に入ってるのを知られているため、筆頭専属メイドをしている。

 専属はあと四人いるけどメイドさんはラーナだけであとはメイド見習いの子たちだった。

 全員女の子で下級貴族の家の子だ。


「食べられりゅ?」

「はい、マッシュルームですね。食事にも使えますね」

「育ててりゅ?」

「うーん、キノコは、いつどこに生えるか分からなくて、栽培はされてませんね」

「ラーナ、キノコ、栽培、命令!」

「またまた、お姫様の命令っですか? バナナ以来ですね」

「キノコ、取る、ワイン倉庫」

「え、このキノコをワイン倉庫に入れるんですか? うーん、でもそんなことしたら怒られてしまいます」

「ラーナ、メリア金貨、あげる」

「まぁまぁ」


 メリア金貨とは僕が普段おもちゃにしている金貨だ。

 メリア妃はお母様で、結婚記念硬貨だった。

 僕は百枚単位で持っていて積み木みたいにして遊んでいる。

 しかし人気の割に発行枚数が少なく、王都ではかなり貴重な金貨だという。

 一枚持ってても自慢できるレベルである。

 ラーナは誘惑もあるだろうに、過去に一枚も盗んだことがない。

 その機会なんていくらでもある。彼女は誠実なのだ。


「メリア金貨! いいのですか?」

「うん。キノコ、秘密、ワイン倉庫、秘密」

「分かりました。お姫様のお言いつけの通り、地下のワイン倉庫でキノコ栽培ですね」

「うにゅ」


 そしてワイン倉庫に向かう。

 そこには壮年のワイン管理人、ボトラーがいた。


「こんなとこで、何を」

「キノコ、栽培、秘密」

「はっはっは、地下のワイン倉庫でキノコ栽培ですか、私が怒られてしまいますよ」

「メリア金貨、あげる」

「ほほぉ、あのメリア金貨ですか」

「これはお姫様の信頼の証です。他言無用ですよ」

「そうかい、そうかい、おっほほ」


 こうしてワイン倉庫の隅でマッシュルーム栽培が始まった。


「堆肥、藁、混ぜる、入れる」

「なるほど、まぁやってみましょう」


 そして、キノコの菌はあっという間に広がり、またたく間にキノコがたくさん出来たのだ。

 頼んで王室の食事にも使ってもらった。


「こんなところでキノコ栽培など!」


 王様には直ぐにバレて三人は怒られた。

 しかし罰は受けなかった。

 それどころか地下倉庫を片付け、一つをキノコ栽培用にしたのだ。


「キノコ栽培、する、儲かる」

「ぐぬぬ」


 僕の主張を王様が受け入れたのだ。

 こうして王都ではマッシュルームが王宮の地下で栽培され、一般向けに販売され大金が入ってくるようになった。

 全額、僕の資金とされた。

 これが「ミレル姫五歳の奇跡、キノコ編」である。

 個人資産はあっという間に兄を超えた。


「ミレルちゃーん、あーそーぼー」

「はーい」


 そしてこの子は公爵令嬢、僕の幼馴染の女の子なんだけど。


「ちゅっちゅっ」

「もう、ナーシー」

「ミレルちゃん、好き」


 ちょっとおませさんで、女の子が好きなのだった。

 二人はいつも王宮の裏庭で遊び回っていた。


とりあえず第一弾、34,000文字17話、毎日更新します。

もしよろしければ、カクヨム側が1話先行ですので、どうぞ。

よろしくお願いします。


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