館と不思議な執事達
深く眠った。何ない暗い中に落ちていくような感じがした、不思議と悪い感じはしなかった。
どのぐらい寝ていたのだろうか、目を覚ますといつもと違うふわっとする布団の中にいた。まだ外が暗いからと思いもう一度寝ようとした。
「お目覚めになられましたか?」
老夫の声がした。何故かその声に恐怖を感じなかったが別の恐怖は感じていた。
何故戸締りをしたはずなのに男が居るんだと言う恐怖。
「どこか具合でも悪いですか?」
「いえ、そういう訳では…」
答えると同時に勇気をだして振り返ると鳥の仮面を被ってきっちりとした黒いタキシードを着た男が立っており、深々と頭を下げた。
「お嬢様驚かせてしまいすみません。私は貴方の執事をさせて頂きます。ユニアと申します。」
ここはどこなのか、何故私はここにいるのかなど困惑しながらも聞くことにした。その話を困ることなくずっと聞いてくれていたユニアは落ち着いた声で
「お嬢様が夢から覚めるにはここで記憶の破片を見つけないといけません、それにはお辛い記憶などあるかもしれませんがどうか勇気を持って受け止めて上げてください。お願いします。」
そう言うと地図と綺麗な硝子の鍵を渡してきた。私は記憶が無いところがある。そこを思い出そうとすると頭が痛くなりいつもやめてしまった。その記憶がわかるなら私も知りたいと思い探すことを決めた。
「いつでも戻ってきて構いませんよ」
そう微笑むユニアを見て
「行ってきます」と微笑み返し部屋を出ていった。
1歩部屋の外に出るとよくホラーで出てくる古い洋館と言った方がいいだろうかそういった光景が広がっていた。
蜘蛛の巣や埃などはないが古ぼけた雰囲気がある。地図を見ながら先ずは硝子の鍵に書いてある灰の部屋を目指すことにした。
「こんにちは」とネズミの仮面をつけた小さな男の子がドアの前で話しかけてきた。こちらも挨拶を返すとネズミの仮面の子はいきなり抱きついてきた。
「やっときてくださったんですね、どれだけ待ちわびたことだか」と喜びの声を出していた。
私はわからず唖然としているとネズミの仮面の子は不思議そうに顔を見た。
「あれ?僕のこと忘れちゃったんですか?」
しだいに少し悲しそうな声に変わり仮面でよく見えないが泣いているようにも感じた。しかし、それはすぐに治まった。人が変わったように笑い始め、2、3歩私から離れお辞儀をしてきた。
「初めまして、僕は灰の部屋の案内人メノテと申します。お手伝いをさせて頂きますのでどうぞよろしくお願い致します。」
前に私はここに来たことがあるのかそれとも人違いなのかわからないまま戸惑った様子で私は「よろしく」とだけ伝えた。
「このお部屋の人はとても苦労されていて大変なんですよ。だから手伝ってあげて欲しいのです。きっとミア様の手伝いもしてくれますよ、困ったことがあったらこの部屋ならどこにでも僕はいますので声掛けてくださいね」
そう話をした瞬間にメノテという子はどこかに消えてしまった。驚くと言うより夢の中だからと割り切ってる自分もいるが中々目が覚めないなと思っている自分もいた。それからゆっくりと鍵を開けるとその鍵は粉々になって無くなってしまったがドアは簡単に開いた。